恋敵 行動課の仕事が激務だということは分かっていた。大型機の操縦訓練の日まで設けられているくらいだから、仕事が入っていない日は鍛錬の日とされている。ボクシング、プール、ランニング、ありとあらゆるトレーニングのための機械が行動課にはあり、俺たちはそれを少ない人数で回していた。そして今日の俺のメニューはティルトローターの操縦訓練だった。もちろんあの空を飛ぶ船を動かすわけではない。操縦桿を握りこそすれ空は飛ばない。全てドローンパイロットのように小さなコックピットに入って行われる。今日それをするのは俺の番で、昨日は須郷だった。須郷は元ドローンパイロットということもあり操縦が上手く、今は俺の倍先を行っている。そのためには距離を少しでも縮めねばならない。今日でそれが上手くいくかは謎だが、するしかないのは確かだった。
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