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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    POIPOI 192

    指輪をつけるかつけないかの話。
    ちょっとしたお遊び。
    800文字チャレンジ69日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    プラチナリング(いつもとは違うキス) 左腕を失ってから、指輪をつけようと思うことはなくなった。狡噛は密かに準備をしていたらしい。だがそれはともに監視官時代だった頃の話で、彼も変わったし、俺も変わってしまった。今さら指輪ひとつでどうにかなる関係じゃないのも分かっている。けれどとある潜入捜査で、証券会社勤めのカップルを演じるときに、ホロでともに指輪をつけた時はくすぐったかった。仕事が終わってホロを消しても、狡噛の左手には、薬指にはまだプラチナリングがあって、それは俺が彼を独り占めしているようで気分が良かった。狡噛に支給されたプラチナリングは明日には返却しなくてはならないから、それまでのものなのだけれども。
     
    「なぁ、ホロがあるとグラスの持つのは不自由か?」
     とある店に入って酒を嗜んでいる時、狡噛がぼんやりと映し出されるジャズの映画を見て言った。俺にまた左手薬指に指輪をつけろということだろうか? だったら少しかわいらしく思ってしまう。だから、俺はどうしてかいたずらしたくなってしまった。
    「不自由じゃないが、手袋をする方が楽かな。ずっとそうしてるし。お前は外さないのか?」
     じっと見つめながら言うと、狡噛は少し顔を赤らめて、俺から視線をそらした。
    「外したら失くしちまうからな。花城にどやされるのは勘弁願いたくてね」
     嘘言え。既婚者の気分になって喜んでいるくせに。でも俺はそうは言わない。
    「左手に指輪をしてる男と、手袋で義手を隠している男がここでキスをしたらどう見えると思う? やっぱり不倫かな」
     さらにからかうと、狡噛は咳き込んでグラスを落としそうになった。ちょっとひどいことを言ったか? でもこういうロールプレイはなかなか楽しいじゃないか。
    「俺が誘う役? それともお前が誘惑する役?」
    「どっちでも。お前が望むならどちらでも」
     俺たちは顔を近づかせて、グラスでもう一度乾杯する。俺たちを見る人は誰もいない。聞き耳を立てているバーテンダー以外は。さぁ、キスをしよう。友人でもなく恋人でもなく、今は不埒な関係として、いつもとは違うキスをしよう。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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