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    五悠のメルヘン話

    餌を求めて森をさまよっていた子虎のユージ、優しいハンターのお兄さんに保護され美味しい肉🍖まで貰ったけれど、どうにも食い気がおさまらない。深夜に耐えきれず眠るハンターの喉元にキバを突き立てたが、瞬間キバが縮んで体が人間になってしまう。恩をあだで返すからだよとハンターは恐怖に固まるユージに笑いかけた。彼の正体は悪徳魔術師だった。 

    ユージは術師の下働きとしてこき使われた。慣れない二本足でもたもた走っては転ぶので、バランスが取れるようにと耳と尾を戻して貰ったが、その姿では獣にも人にも狩られるねと笑われ逃げる事も出来ない。

    悪徳だけあって術師は毎日豪勢な食事をしていて、それを何故かユージにも与えた。テーブルマナーも料理も覚えさせられて、毎日大きな風呂に入っては歌を教えられ、それを二人で歌った。
    床で丸まり眠る習慣は虎のままでいたが、稀に術師がやってきてユージを抱えて眠るので、ユージは考えて、自分も術師のベッドを訪ねてやることにした。それ以来それは習慣になった。
    やがてユージは人になった気になってきて、術師の事も離れがたいくらい好きになった。
    でも森が恋しくなることもあって、ついにある夜そっと森へ戻った。懐かしい森の空気を吸うと涙が出てきて、このまま人になるのか森へ逃げるかユージは迷った。たとえ虎に戻れなくても、森へ帰りたいという気持ちはずっとユージの中にあったので、何時間もユージは悩み続けた。心の隅で術師が連れ戻しに来てくれないかとも思っていた。そのうちユージの体は虎に戻った。術師は朝になっても来なかった。


    小さな子虎は扉の前に立ちカリカリと扉を引っ掻いた。彼の爪はなかなか立派な爪なので、実際はガリガリと木が削れていった。
    扉が開いて、術師は驚いた様子でユージを見たが、戻してあげた恩をまたアダで返したね?と笑ってユージを抱き上げた。この扉はわざわざ異国から取り寄せた高ーいものなんだ、どうしてくれるのと術師が言うと、ユージは困ったように耳を垂れさせて、謝罪の代わりか術師の頬をぺろりと舐めた。ダメだよ、と術師は指をひと弾きして再びユージを人にしてしまった。寒い!と自身の毛皮を失ったユージは叫んだ。そして術師の腕の中に飛び込んでしばらく震えていたが、やがてぴたりと止まって、小さく、やっぱりここにいたいと術師に言った。目を細めた術師はどうして?森へ帰ったくせに、とわざと冷たく聞くと、ユージはまた耳を垂れさせて、それでもここがいいと泣き出してしまった。術師はユージを強く抱きしめて、いいよと言った。二人はまた一緒に暮らし始めた。



    その後、二人はよく森へ出かけるようになった。ユージに逃げられやしないか不安で森を避けていたと、術師は恥ずかしそうに教えてくれた。それを聞いてユージは嬉しくなって、術師がますます好きになった。それを伝えると、術師は目を丸くしてユージを見つめた。ユージは慌てて、なにかおかしな言葉を使ったか聞こうとしたが、術師の唇に自分のそれを塞がれてしまい出来なかった。そして今のはなにと、代わりに別の質問をした。術師はさあ、なんだろうねと微笑んで、もう一度顔を近付けてきた。ユージは迷ったが、それを受け入れてみた。そして嬉しそうな術師の様子が嬉しくて、ますます術師が好きになったので、好き、と言うと、術師はユージを抱きしめた。
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