ゴムの日「ちゃうねん、ちゃう……別に、そういう意味ちゃうっちゅーか」
そういう意味でなければなんだというのだ。
恥じ入って腕で顔を隠しながら「ちゃうねん」を繰り返す男のベッドに片足を乗り上げたヴァッシュはチンイラしていた。
ちんちんがいらいらしている。そう、ちんちんがいらいらしているのだ。早くこの可愛い恋人のふわふわアナルにぶち込みたい。固く閉ざされていた蕾を丁寧に丁寧にほころばせ、今やどこに出しても恥ずかしいぷっくりとした縦割れアナルに成長したウルフウッドのお尻の穴。私が育てました、と宣伝して回りたいほど愛しいそこに欲望の塊を埋めることが許されるのなら何でもできると思った。
「これってお誘いだと思ったんだけど。……違った?」
ウルフウッドの買い物袋の底に隠すように追いやられていたパッケージを翠色の指でつまみ上げる。同時に眉を下げて捨てられた仔犬のような顔をしてやれば、ウルフウッドは腕の隙間をますます狭めて唸るばかり。そんなことをしてもスキンの箱は消えやしないのに。
「も……おま、目ぇ見たらわかるんちゃうんか! 察しろや!」
「じゃあちゃんと見せて」
ぐいと腕をどかせてしまうと羞恥で耳まで真っ赤になった顔が現れた。逃がさないように頬を両手で包み込めば、てのひらより熱い肌の温度がじわりと伝わる。それでも往生際の悪い黒い瞳はうろうろと右へ左へとさまよっていた。
「……ぼくとえっちしたいって顔してる。昨日のじゃ満足できなかった?」
「ちゃ、ちゃうし……店で二千ダブドル以上買ったら割引きしてくれるて言うから。煙草と飴ちゃんだけやと足りんかったから何か他に買うもんないかて思っただけで」
「うん、だから昨日最後のゴム使っちゃったから買ってきてくれたんでしょ?」
ぽかぽかの頬を撫でながら、いつも使ってるメーカー覚えてくれてるの嬉しいな、と微笑んでみせるとぎくりと肩が揺れた。
「ちゃうし! 今日ゴムの日やからたまたま安売りされとっただけやし!」
打てば響くタイプのウルフウッドはすぐさまギャンと吠えてみせるけれど、ゴムの日にぼくのことを考えながらこれを買ったんだなあと思うと使わずにずっと取っておきたい気分にさえなる。
しかしニマニマとパッケージを眺めていると気付いてしまった。これはもしかして本当にずっと取っておけるかもしれない。そのためには真っ赤に熟れた据え膳状態のウルフウッドをなんとか言いくるめなければならないのだが、さてどうしたものか。
ヴァッシュは近くの店にXLサイズの取り扱いがあることを祈りながらLサイズと書かれた箱を指先でくるくると遊ばせた。