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    たまごやき@推し活

    アンぐだ♀と童話作家アンデルセンのこと考える推し活アカウント

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    カルデアアンぐだ♀、付き合ってる時空

    2023.2

    ##FGO
    ##アンぐだ
    ##カルデア時空
    ##恋人

    コーヒーでデザートを釣る「今年もどうにか間に合って良かった!」

     バレンタインデー。カルデアのキッチンが押し潰されそうなほどの人で溢れる時期。けれど今日この時間は特別にわたしだけが占領している。
     今年はチョコレートケーキ。保管場所に困るほどの「日頃のお礼」を台の上に溢れさせ、デコレーションまでもう少し休憩。数時間ぶりに椅子に座るとさすがに疲れが滲んでくる。
     焼き立てのケーキはまだ湯気が見えそうなほど。ふわりと漂う甘い香りに、まだ味見はしていないけれど中々の出来ではないかと得意になる。

     何と言っても今やカルデアは大所帯。かの時計塔の降霊科も真っ青になるだろう数のサーヴァントへ渡す差入れはキッチンから溢れ出しそうなほど。
    できる限り平等に、丁寧にと細心の注意を払った贈り物は練習の成果もあって均等に作ることができたと思う。後は飾り付けしてラッピングして配りに行けばバレンタインのミッションコンプリート。
     マスターから皆への感謝のプレゼント。料理の得意なサーヴァントがたくさんいるから、皆舌が肥えている。自分の腕前で勝負ができるかというと……。ここは気持ちで勝負だよね! と自分を奮い立たせずにはいられない。

    「やはりな、そろそろ頃合いだと思っていた」
    「アンデルセン……?」
     立入禁止、と貼り紙をしたドアを気にせずに潜り抜けながらアンデルセンはキッチンに充満した香りに「甘ったるいな」と文句を言った。
    「今はわたしの貸切だよ」
    「そんなことは知っている。俺は夜食を取りに来ただけだ。それとも何か? 見られて都合の悪いことでもあるのか」
    「そんなことは……」

     ない、とは言えない。
     デコレーションやラッピング。平等に整えるのは飾りの数やリボンの色で喧嘩が起きるといけないからだ。違いがあると取り合いに発展してしまっては……去年大変だったので、今年はかなり気を遣っている。
     そんな中でひとつだけ、特別に用意したものがある。
     皆のものよりほんの少しだけ大きな型に入ったケーキ。デコレーションに時間をかけて、リボンも箱もみんなとは色違い。……少しだけ、特別扱い。
     バレンタインデーの一番最後に贈ろうと思っていたもの。
     まだ完成していないのに、こんな時に限って贈る相手が目の前にやってきてしまう。箱を開けたら飛び出すはずの自信作を完成する前から見られるのは複雑な気持ちだ。
    「……は、いかにも間が悪いという顔だな」
    「だって、完成前に来ちゃうんだもん」
     もちろんこうして話ができる事自体はとても嬉しいのだけど。
    「なに、そう長く邪魔をする気はない。用を済ませたらすぐ戻る、後は好きに作業しろ」
    「そう? いつものカップ麺ならまだあの棚に――」
     彼の徹夜のお供が眠る棚の方を指差し、台の上から目を離した、その一瞬。
     彼がケーキに手を伸ばした思った時にはもう、瞬く間にひとつケーキが奪われていた。
    彼は目敏い。
    齧られたのは一番大きなケーキ。

    「まだ完成してないのに!」
    「こういうのは焼きたてが一番だろう」
    「冷やした方が美味しいのに」
     冷やす時間を取るためにこうして前の日からキッチンを占領しているのだ。
    「なんだと? それなら冷やした方は明日にでも」
    「……お一人様一点限りです」
    今勝手につまみ食いをしたのに明日もケーキを貰えると信じて疑わない彼の自信に、過去に恋愛経験はないという情報が疑わしく思えてくる。
    だってわたしは彼に本気でねだられたら揺らいでしまう。
    「今のはほんの味見だ、メインディッシュもデザートもこれからだろう」
    ほら、こんなふうに――。
    「どうせ俺は最後だろう? まぁそれは正解だ。他の予定が滞っては話にならん、俺は苦情も受け付けていないしな。コーヒーでも淹れて待っている」
    コーヒーでも。
    一緒にお茶でもいかがですか? と今更かな穏やかな誘いで終わるわけもない。耳元で囁かれてしまってはとても次の日も忙しいからなんて断れないのすら見通されている。
    「何せマスターを一日中占領しては外野がうるさくて仕方ない!」
    彼はやれ仕方ないとため息をひとつ。
    「譲ってやるからマスターの配達業務は手早く終わらせてこい」
    そう囁いて満足したのか、彼は勝手に齧りかけの大きなケーキをトレイに乗せて締切がどうのと部屋に戻っていってしまうのだ。

    バレンタインはすぐそこ、まだまだ準備はたくさん残っているのにとても手につかない。
    ――こんなのもう、ケーキどころではないんですけど。
    少しだけ手を止めながら彼がマグカップに注いでくれるコーヒーのことを考えるのだった。
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