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    たまごやき@推し活

    アンぐだ♀と童話作家アンデルセンのこと考える推し活アカウント

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    現パロアンぐだ♀

    2020.5

    ##FGO
    ##アンぐだ
    ##現パロ
    ##同棲
    ##転生

    猫二匹同棲ものがたり「猫か犬かと言われれば断然猫派だが……こんなところにくるほど興味はないと言っただろう」
     いたるところに猫、猫、猫。いわゆる猫カフェというやつだ。
    「仕方ないでしょ。うちはペット飼えないから猫カフェだけが頼りなの」
     彼女の膝の上にはトラ猫が陣取っている。撫でられているそいつはごろごろ喉を鳴らしてふてぶてしい態度だ。いや、その猫だけではない。数匹の猫が彼女の周りに集まっているのだ。
    「猫には随分人気じゃないか」
    「……アンデルセンがいるから人間には別にモテなくてもいいもん」
     人間もたくさん引っかけてくるくせによく言う。まぁ小皿の中のササミを周りの猫たちに与えながら不満そうにしているところを見ると、引っかけている男達など眼中にないのだろう。多少の哀れみすら感じる。猫よりも興味を持たれていないだろうその男達と自分の間に大した差はない。

    「レポートお疲れ様、わたし〜」
     彼女は膝を陣取った猫を慣れた手つきで抱き寄せながら椅子の背もたれにだらしなく身体を預ける。疲労困憊の彼女のリクエストで仕方なくここに来たが、果たして癒しとやらは得られるのか。
    「可愛いね〜、ウチの子になる?」
     さっき飼えないと言ったばかりだろうが、まったく。満足げな猫の表情というのは何であんなにもこちらを挑発的しているように見えるんだ。猫が返事をするように都合よく鳴き声をあげる。
    「ん〜? ウチの子になるの?」
     機嫌良く猫に頬を寄せてだらしのない顔をする。こいつ、ここに来るといつもこうなのか。……男の店員が間抜け面を晒してこちらを、いや彼女を見ている。猫に会いに来ているのだから、猫だけに持て囃されていれば良いものを。
     ササミを平らげたらしい猫が獲物を狙う目で彼女を見ている。あぁ、なんだって人生は悪い予感ばかり当たるようにできている。

    「んっ!」
    猫の舌はザラついているらしいと聞く。皮膚の柔らかい部分を、ああそうだ特に唇を舐められでもしたらそれなりにダメージがあるだろうな。いや、そんなことよりも。

    (このドロボウ猫がっ……!コイツ絶対雄猫だろう!)

     猫は気まぐれ、満足したのか気分じゃなくなったのか、それきりあっさり膝を降りて離れていってしまう。それでも他の猫達が寄ってきて順番だと言わんばかりに彼女の膝を占領する。
     たかが猫だ。大したことではないのだ。されど猫は彼女が引っかけている男共よりランクが高い。

    「……ちゅーされちゃった」
    「たかが猫に舐められたくらいで一々丁寧な報告は不要だ。大体お前は猫相手だからと言って油断しすぎなんだ、これがバーサーカーなら命を落としたも同然だぞ」
     目の前で起これば視界に入れざるを得ないだろうが。なんだってそんな不愉快なものを実況までされなければならない?
    「……猫の食べたササミがついている」
     彼女の口元を袖で拭う。自分の恋人が汚された気がするのだ、精神的に。この際本当に口元にササミが付いているかどうかなんて関係あるものか。
    「ーー可愛いなぁ、ホントに」
    「……はぁ。お前の猫好きにもほとほと呆れたものだな。懐かせてもどうせ飼えはしないのだからほどほどにしておけよ」
    「分かってるよ」
     そもそも俺が猫と張り合う必要などないのだ。恋人とペットでは方向性が違うのだから。月とすっぽんくらい違う。
     だが仮に、あくまでも仮に、俺達が将来一緒に暮らすことになっても猫だけは飼ってなるものか。

     猫カフェを出てからも映画のワンシーンのようにドロボウ猫の姿が浮かぶ。あんなことがあったのに彼女は妙に機嫌が良くて、それも気に食わない。もう二度と行ってたまるか。次は絶対断る。

     夕方の人通りが少ない並木道を彼女の手首を絡めとりながら早足で進む。この曲がり角を曲がると人気はさらに少なくなる、二人きり。
     ーーどちらかといえば猫派だなんて、本日をもって撤回してやる。だからさっきの猫のことなんて綺麗さっぱり忘れてしまえ。

     人気のない通りで彼女に口付ける。目に見えない猫の痕跡を執拗に消しながら、まるでマーキングのそれは猫と大差ない。
     彼女のお気に入りと大差なく並ぶのなら、別に構いはしないか。そんな風に脳内で答えが弾き出されたあたりどうも正気ではないらしい。ーーそんなこと今更だろうが。

     それが初夏の若葉が青々とした日のどうでもいい話だ。二人と一匹の同居生活が始まるのは、それから半年も経たない寒い冬のことだった。
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