たった三文字の一悶着 ほぼ書庫と化した自室に用意されたささやかなソファとテーブル。安いコーヒーと菓子を広げれば手軽な休息セットのできあがり。どこからともなくやってきた彼女はついさっきまで喧しく囀っていたが今は夢の中。こうも無防備に眠るものなのか。今俺の膝を陣取っている猫の方がよほど警戒心が強いだろう。
単純に無防備さは『相手による』のだろうと思うが、それはそれで腹が立つ。いくら俺がこいつの趣味嗜好性癖に刺さらないのだとしても、目の前で眠って安全かどうかくらいは考えてほしいものだ。
「すー……」
「……間抜け面」
まぁ、考えた上でこうなのだろう。安全圏内、オールグリーン。実際、日常的に目の前でこうも無防備に眠りこける彼女の髪の毛、爪の一本たりとも触れたことがない。撫でをせがんでくる猫に応えてやりながら、ため息をつく。猫であればこんな風に触れるのは造作もない。ごろごろと喉を鳴らして機嫌が良さそうな様を見ながら、懐かれているのは分かっていても人と動物ではこうも違うかと思う。
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