銀貨三十枚「ねえ、三十枚の銀貨って現在の価値だとだいたい百万円くらいらしいよ」
すっかり住み慣れた寮の自室に伏黒が帰宅すると、そこには散々見飽きはしたが風景には馴染まない男が伏黒のベットの上で太々しく胡座をかいていた。伏黒がベットが汚れるのを嫌い入浴前に布団に入ることを避けるタイプであることを知っているくせして、男は遠慮なく持参したのであろうビスケットを貪っている。伏黒は痛む頭を抱えながら、ひとまず脇に抱えていた花束を備え付けの勉強机へと置いた。
「五条さん、どいてください。誰が掃除すると思ってるんですか」
「恵でしょ。んー、どこうにも僕ほかに座るところないし」
「座布団あるでしょ。緑が客人用なのでそれ使ってください」
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