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    鼻をかすめる程度のすけべがある伏五

    #伏五
    volt5

    恋は盲目 たんたんと、揺する腰に合わせて担いだ長い脚が揺れる。
     そろそろだ、と伏黒が思った時に、五条は言った。
    「恵。僕の目玉、食べてよ」

     五条が恵に『ヤり部屋』だと教えたマンションだ。やりたくなったらここに呼ぶんだと言い、男はお前が初めてなんだよ、やばいよねと、五条はわらって恵の肉をなかに受け入れた。半年前のことだった。
     数回セックスしたあとから、五条は自分の目玉を食べてほしいと喘ぐようになった。
     伏黒は気が狂ったのかと思い返事をせず五条を揺さぶっていたら、五条は食べ方わからないの?と言ってまぶたを押し抉るしぐさをしたので、慌てて止め、暴発もした。

    「いらないです」
    「食べてっていつも言ってるのに、めぐみは、ぁっ、言うこときかないね、」
     黙らせようと五条の中心を伏黒は掴む。勢いよく擦れば五条は震え、それきり意味のない母音で泣いた。
    「食べてよぉめぐみぃ、なんで食べてくれないのぉ」
     伏黒が最後、出しきったあと五条の胸に倒れると、思い出したように五条は食べてとまた言った。

     五条が二人で入りたいと言い綺麗にしてとも言った風呂のあと、替えたシーツが回るドラム式の洗濯機を伏黒は膝を抱えて眺めていた。
    「またそこにいる」
     五条は緩くだぼついたスウェットの下だけはいて、伏黒のいる洗面所を覗いた。
    「恵、洗濯機好きなんだね」
    「そうですね。好きです」
     伏黒はこの部屋のどこにも居場所はないと思っている。五条のからだのうえ以外、この部屋を拒絶したかった。それでも、使いかけの化粧水や香水が埃をかぶり隅に転がっている、洗濯機の前だけは好きだった。
     とはいえ洗濯機を見るのはほんとうに好きだった。家にある洗濯機は縦型なのでこうして泡にまみれ水が回り、時折黒のシーツが淀んで見えるのは伏黒の好奇心を擽っているのは確かだった。

    「あんた、アレ、やめませんか」
    「アレ?どれ?」
    「目玉食えって言うやつ。萎えます」
     気持ち悪いです。そう付け足すと五条はふふふと笑い、カレシにひどいこと言われたぁ、と続けた。
    「恋は盲目って、知ってる?」
    「それは、まぁ。はい」
     五条は恵の隣に腰をおろした。洗濯機はそろそろ脱水に入るランプが電灯している。
     シャンプー、ボディソープ。洗顔。浴室に置かれているそれの量は多かった。伏黒はどれも気にせず、その時手元に近いものを使っている。時折やけに甘い臭いのものもあったので、五条に言うでもなく捨てたこともあったし、五条もそれを気にしなかった。
     いま隣に座る五条は、恵の好まないにおいがした。

    「ぼく、恵に恋したいんだよね。だから目玉いらないなって思うんだよ、恵が必死に突いてきてるときに。食べて欲しいくなっちゃうの、僕の目玉」
     五条の目玉は特別だ。それは恵も昔から知っている。昔、と言うと五条はいつも「ついこないだでしょ」と呆れた。ひとをばかにするみたいに。
    「五条さん、盲目になりたいからって目玉食えって言うんですか。バカですね」
     伏黒は心底、五条を馬鹿だと思った。自分に恋がしたくて目玉がいらないという、五条をほんとうに馬鹿だと思ったのだ。
    「さっきから僕のカレシは冷たいねぇ」
     そうわらって伏黒の頬を片方、五条は摘まんだ。悪いくちはここかぁ?と言う顔は、しあわせを煮詰めたような、薄っぺらい顔をしていた。
    「恵に恋できるなら目玉なんていらないよ」
    「うそでふね」
    「嘘だね」
     ピー、と連続して洗濯機は鳴り、止まった。頬から五条の手をどかし伏黒はシーツを取り出す。かがんだ腰にまとまりつくのは五条の脚だった。めんどくせぇな。
    「どうしても食べたくない?」
    「いらねぇっつってるでしょ」
    「いつになったら食うんだよ」
    「食うのは確定なんですか?」
    「当たり前でしょ」
     ねぇねぇ。いつ?いつになったら食べてくれるの?ねぇ、ねぇってば。

    「うるせぇ」
     イライラしても鍛え上げられ、担げば重く、かっこいいと思うふくらはぎは伏黒の腰を離さなかった。やりとりの間で無意味に広げたりまるめたりしたシーツをはやく干したい。そう思い伏黒はくちにした。
    「あんたが死んだら食いますよ」
    「言ったね?やったぁ。ちゃんと食えよ」
    「はいはい、食べますよ。食べるんで脚ほどけよ」
     めぐみが食べてくれるってさ、と妙なリズムをつけて五条は歌うように言った。腰をあげ、洗面所から出ていく五条を、伏黒はシーツを持ってベランダへと向かう。
    「食べることなんて無いって思ってるでしょ」
    「食べますよ。あるわけないと思ってますが」
    「ふふ、めぐみ。すきだよ」
    「そういうのいいんでシーツのそっち、持って広げてください」
     夜は深く、まだ明けない。ベランダは空調の効き過ぎた寝室に比べてじんわりと重く湿度の重さがあった。そんな夏の夜だった。


     だから、いま目の前にある目玉について、そんなやりとりをしたなと思い出しただけだ。あの人は死んでいない。だから食べる必要は無い。血まみれの自分と同じように転がったそれと目を合わせながら、思い出しただけだ。
     ひどい耳鳴りの遠くで壊れる音がした。虚式がすべてを壊す音だ。
     伏黒はそれを聞きながら、あの人と恋をしてもいいかもな、と思い、そして意識を手離した。
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