やさしい時間COffEE HOUSE CAT’S EYE
夕日も沈み、辺りにネオンが輝きだした頃、客のいない店を早めに閉めようと、店主の男は、外の看板を店内に仕舞った。
男がガラスの扉にかかる『営業中』の看板を吸盤ごと外ずし、扉の鍵を閉めると、店主の妻が部屋の明かりを落とした。
そのまま、妻は、カウンターにキャンドルを置きマッチで火をつける。
視力のほとんど無い男にも何となくそれはわかった。
「……どうした、美樹?」
そう問いかけると、続いてカチャンとカウンターに何かを乗せる音がした。
グラスの重なる音、氷の音、液体の揺れる音。
「……酒か?」
「たまにはいいでしょう?ファルコン」
優しく微笑みながら、妻は、愛しい男を見た。
1906