Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    cantabile_mori

    @cantabile_mori

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 31

    cantabile_mori

    ☆quiet follow

    晴道3P進捗①(冒頭続き)

    「ありがとう。いただくとしよう」
     マイルームの小スペース、テーブルがある場所に晴明を座らせて湯呑みに茶を道満自ら茶を淹れていく。道満のその一挙手一投足を、晴明はじっと見ていた。具に、決して見逃さないといったように。道満としては少しやりづらかったがそこは呪術に長けた陰陽師、生前の晴明では知ることのない外つ国の薬を混ぜてはあるが完璧に茶の用意をした。もしも、いやおそらく何か混ぜているかと気づいたとしてもこの晴明は解呪どころか解析もできないだろう。
     これは絶対上手くいく。ンン、と思わず喉奥で嗤いが込み上げるのを抑える。薬入りの茶と菓子を口にした後のプランを入念に思い浮かべながら差し出すと、晴明が口元に湯呑みを寄せたのを一度ピタリと止めた。
    「どうされました?」
    「ああ、いや。サーヴァントとなって初めての飲食だから、どのような感覚を持つのか気になってね」
    「生きていた頃と何の変わりもありませぬ。腹が満たされた音も鳴ります。ただ栄養素は魔力とエーテルに分解されますので樋殿に行く必要はありませぬよ」
    「……ああ、今聖杯からも同じ知識が下りてきたよ。サーヴァントというのは便利でもあり不便でもあるのだねェ」
     そう言いながらずず、と茶を飲み、水飴の菓子をひとつ口に含んだのを見届けて、道満は微笑んで会話を続ける。
    「不便とは? 拙僧はサーヴァントとなってから不便と感じたことはありませぬが」
    「ここに二人、ヒトがいたとする。飢えている一人がもう一人に己の身体が排出もしくは排泄したものを与えると飢えることはないだろう。衛生観念を排除した場合の話だがね。だけどサーヴァントとなるとそれができない」
    「おや、晴明殿にはしっかりと聖杯から知識が下りていないご様子ですね。サーヴァントには一つ、マスターもしくはサーヴァント同士で行える方法があるのです。その名も魔力供給、と言いまして」
     言葉を区切った道満が立ち上がり晴明の頬へ手を伸ばす。あと少し、といったところで手を止めて、吐息が聞こえるほどに耳元で囁いた。
    「喰らうこともできるのです」

     ぐぱり。
     獣の如くおおきく口を開き晴明の喉を食い千切らんとしたその時、道満の視界は宙に回りいつの間にか仰向けに転がされていた。
    「な、なァ!?」
    「おまえが何かを企んでいることくらいは初めからわかっていましたよ。ええ、最優ですから。なので予めこのカルデアにいた晴明(わたし)と感覚を共有し解呪を済ませておきました。いやあ、おまえにしてはなかなかの精度の毒で少し時間がかかってしまいました。師として誉めてやらねば」
     湯呑みを手にしたあの一瞬で解呪し、しかもそれを『少し』だと言うのか。
    (拙僧は、拙僧はまた負けたのか……! いえ、まだ勝負は終わっておりませぬ、ここで全力の宝具展開をすればこの晴明は塵と化そう!)
     印を結びながら起きあがろうとすると、なぜか腹筋に力が入らず腕が重く持ち上げることがひどく難しい。ぐぬぬ、とやっとのことで上半身を起き上がらせることに成功するも今度は頭がぐらりと回った。これは熱か。それも、身体の中心──覚えのある疼くような甘い熱が渦巻いてきている。
    「どう誉めてやりましょうか。普通に誉めてもおまえはすぐ曲解してしまうだろうから。ああ、そうですね。生前秘めていた思いを告げるというのも良いでしょう」
    「きっ……聞きたくないと言えば嘘になりますが。拙僧に何か伝える言葉があったと? 晴明殿から? 考えられませぬなァ」
     本当に、考えられなかった。あの安倍晴明が一介の法師陰陽師に、いつか超えてみせると啖呵を切っても最後まで並び立つことすらできなかった道満に伝える言葉などあるわけがない。いったい何を言おうとしていたのか、気になってしまう気持ちと身体に渦巻く熱が絡まって、さらには晴明の整った顔が近づいてきて己の顔に熱が溜まってくる。きっと道満の頬はほのかに赤く染め上がっていることだろう。
    「おまえについぞ言えなかった私の思い、聞きたくありませんか?」
     低く、唸るような声。そんな声が彼に出せたのか。そんな声色は、彼の想い人に向けられるべきではないのか──などと一瞬思ったが道満は彼の夜の声を知っている。だがそれはカルデアに来てからの話で、まさか生前の姿の色濃いこの晴明から発せられるとは思いもよらなかった。だって、道満の恋仲であるレベル120の晴明は言っていたのだ、「このカルデアに呼ばれた時点で私は新生したと思ってください。なので道満、これからおまえに猛アタックをしかけます」と。
     ゴクリ、とどちらからともなく喉が鳴る。晴明も、道満も緊張しているのだ。その事実に道満は心臓が高鳴るのを頭の中のどこか遠いところで認識して、宝具を編もうとしていた手を徐々に下ろしていく。ゆっくりと美しくもどこか不安そうな晴明の顔が近づいてきて、そして──
    「はい、そこまでです!」
     と、もう一人の晴明──カルデアに既に呼ばれていた120レベルの安倍晴明が道満のマイルームの扉を破壊しながら登場した。
    「な、拙僧の部屋の扉が! おのれ晴明ィ!」
    「おやおや、いいところでしたのに」
     レベル1の晴明──『彼』はベッドに仰向けになっていた道満に覆い被さろうとしていた身体を起こして、扉の破壊によって生じた粉塵にケホケホと咳き込んだ。
    「そこの晴明(わたし)と感覚共有をしていたので嫌な予感がしたのですがやはり来てよかった。道満、大丈夫ですか。今から晴明(わたし)を成敗してやりますからね」
    「そんなことは拙僧一人でもできまする! それより拙僧の部屋の扉をなんとかしてくだされ!」
    「ははは、結界術を得意とする私にそれを言います? はい、どうぞ」
     と言って晴明は右手の人差し指を軽く振ると、瞬く前に扉が再構成されていき従来のカルデアの扉よりも強固なものに仕上げられていった。
    「ほう、見事なものだ」
     『彼』が思わずといった風に溢すと、先ほどまでレベル1の晴明の『彼』に攻撃的な視線を送っていたレベル120の晴明の纏っていた空気が幾分か和らぐが臨戦態勢は崩さない。
    「やはりカルデア召喚式とは面白いものだ。たった一つの結界だけでもその精度がわかるというもの。こちらの晴明(わたし)はよほど霊器を練り上げられていると見た。それに道満の気にも何柱か神性が混ざっているように感じられる──道満、おまえの絶えぬ研鑽はそれほどの高みにまで到達させたのですね」
    「な……晴明、どの?」
     道満は空いた口を閉めることができなかった。特異点の平安京では『あれは蘆屋道満ではない』と断じられたのだ、なのにこれほどまでに誉められるとは。一体この晴明はどうしたのかと己の恋仲である晴明の方へ顔を向けると、なんと彼もまた大きく頷いていた。
    「そうでしょう、そうでしょう。晴明(わたし)にも分かりますか、この子の努力が。とてもえらくてすごくて健気なのですよ、私に並び立たんと何だってやる覚悟を持っている。見ていて危なっかしいところがありますが、その眼はいずれも真っ直ぐで美しいのです」
    「ええ、一目見て分かりましたとも。それに陰と陽、清濁併せ持つ道満の在り方は陰陽師として理想的です。男と女、どちらも持ち合わせているその身体もまた魅力ですしね」
     晴明が、安倍晴明が、蘆屋道満を手放しで褒めている。夢幻の類ではないのか、何かの呪詛にかかっているのかと己の頬をつねる道満であったが、爪が当たってとても痛いことがわかっただけであった。おかしい、晴明が、晴明たちがおかしい。そう道満が混乱している中、晴明たちは今まで言えずにいた道満への思いを告げられたことで満足そうにしていた。ここカルデアでは守るべき平安京はない。平安の守護者ではない安倍晴明は個人に思いを傾けられないという縛りを解かれ、言葉にせず煙に巻く自分の在り方を座で見つめ直した結果が、これだった。
     それにもう一つ、道満にとって一大事な事態があった。
    「晴明殿、今なんと……?」
     道満は耳を疑った。何度も身体を重ねているこちらの晴明ではいざ知らず、つい先ほど顕現したばかりの生前の知識しかないはずの晴明から発せられた言葉が信じられなかった。だって、この身が男としての性だけでなく女の性を持ち得ていることを生前はひた隠しにしてきていたのだから、この晴明が知っているはずがないのだ。
     レベル1の晴明は振り返って、にこりと笑った。
    「知っていましたよ。おまえは隠し通すのが上手かったですが、一度だけ月のものの気が抑えきれていない時があったのですよ。私の神狐としての血が濃く出る日に重なって、鼻に芳しい香りが届いてしまいましてね」
    「な、な、なァ……ッ!!」
     なんて、ことだ。道満はよろよろとベッドの上で頽れる。己の弱点を既に知られていたとは。絶対に墓まで持っていくと決めていた自身の秘密を、生前から把握されていたなど沽券に関わる。それに、こちらのレベル120の晴明との初夜で彼はそんな素振りを見せなかったのだ。初めて目にしたかのように、嬉しそうに笑って、愛でてくれたというのに。嘘だったのかとレベル120の晴明に鋭い視線を向けたが、晴明は「それについては後ほど」と言って少しだけ微笑んだ。
     レベル1の晴明がその様子を静観しつつ、口を開いた。
    「生前から呪詛を己の裡に沈め自らの力にする術を用いていたようですが、異星の神なる者が作り上げたエゴをも取り込んだのは流石と言わざるを得ません。まあ、やり過ぎとも言えますのでその度にガス抜きをすればいいのです」
    「その通り。ガス抜き、必要ですよね、道満?」
    「え、ガス抜き……とは?」
     じり、とにじり寄ってくる晴明たち。どちらもニコニコとそれはもう楽しそうな顔をしていて、思わず道満はベッドの上で後退さる。
    「言わずともわかるでしょう?」
     レベル1の晴明が道満の白い頬をつうと撫でる。
    「おまえの頭ならば既に答えに行きついているはず」
     レベル120の晴明が道満の唇にゆっくりと触れる。
     まさか、まさか。
     晴明を二人、相手取らなければならないのか。
     道満の米神に汗が一筋垂れて、焦燥が胸を占めていく。けれども──それと同時に、淡い期待感も湧き上がってきて。
     晴明たちがベッドに上がり、道満の左右の耳に向けて吐息たっぷりに、それもういい声でこう一言呟いた。
    「「道満」」
     ぞわぞわと呪詛返しされた甘い痺れが一斉に身体中に駆け巡り、晴明たちの名を呼ぶという『呪』が全身へ浸透していく。
    「あ、あ……っ」
     きゅ、と太腿を合わせて、甘い稲妻のような痺れ──つまりは快感に浸るさまを見て、晴明たちはごくりと喉を鳴らした。それほどまでに道満の姿は痴態と言っても過言ではなく、頬を染めて目を閉じ睫毛を震わせているのにあてられてしまう。
     道満が恐る恐る目を開けると、左には再臨を進めた晴明が、右には召喚したての晴明が熱のこもる色を乗せた目でこちらを見ているのがわかった。己に欲情しているのだ、二人の晴明は。生前の気が色濃い晴明までもが欲情しているのに頭がぐらりときそうだった。事実、もうぐらりときてしまっている。
     レベル1の晴明が艶やかに囁いた。
    「どうして差し上げましょうか」
    「そうですね。道満は胸をいじってあげるのが好きですので、どちらも愛でてあげれば良いでしょう。それに口吸いも好きですから、いかがですか、初めての口吸い」
    「おや、いくら自分自身であろうとも晴明(わたし)ですよ? 先輩の晴明(わたし)としては良いのですか?」
    「恋仲を愛でる自分を客観的に見れるという悦が見られるのはなかなか良いものだと思いましてね。ではお手本をまず見せましょうか。さあ道満、こちらへ」
     何を、と道満が言う前に顔を左に寄せられ、瞬く間に口を吸われる。ちゅ、ちゅう、と下唇を啄まれ次第に喰むように口づけされて熱い舌を差し入れられた。薬によって痺れた道満の舌をべろりと舐め上げて、歯の裏まで舌先で撫でられてびくりと反応してしまった腰に手を回されて抱きとめられる。ぎゅ、と晴明の胸元に手を縋るようにしているのも、段々と口吸いに夢中になっているのも、先ほど召喚されたばかりの晴明に見られている。頭が茹だるように熱い。もうおかしくなる、といったところで唇を離されて、二人の間に糸が張るのをぼうっとした意識の中で見ていると、レベル1の晴明が身を乗り出してきた。
    「道満、私からの口づけにも夢中になってくれますか?」
    「む、夢中になどなっておりませぬ。すこし気を許しただけで……」
    「では私にも許しを。うつくしいおまえ」
     そう言って顔を近づけてくるレベル1の晴明がいじらしくて、愛おしくなり。道満は自分から唇を合わせた。こちらの晴明の唇は柔らかくて、しかしすこしかさついていたので舌で触れて湿らせていく。こちらが主導権を握っているのだと示したくて積極的に晴明の舌に絡めてじゅうと唾液を吸い上げた。軟口蓋まで舌先でくすぐってやれば、レベル1の晴明は「ふふ」と鼻息で笑ったので、もっとその余裕をなくしてやろうと彼の首に手を回し口づけを深くしてやる。そうすると、レベル1の晴明の舌技が猛威を振るい出した。獣が喰らうように口を吸い、息継ぎを与えぬ口づけで道満を追い詰める。既に道満の舌は晴明の口の中から追いやられ、ただ吸われ、舐め上げられるばかりになってしまった。
    「……はぁ、っ」
    「ふふ、ファーストキスでしたね、道満」
    「もう『晴明殿』とはファーストキスなるものは済ませておりますゆえ」
    「私とは初めてだろう? つれないことを言わないでほしいですねェ」
     レベル1の晴明はそれはもう嬉しそうにくつくつと笑って、先ほどまで喰んでいた道満の唇を指の腹で撫でた。初めての接吻がよほど嬉しいらしい。さらにもう一度と顔を近づけて唇を喰もうとしてくるが、今度はレベル120の晴明が道満の顎を手でこちらに向けさせて口を吸ってきた。あむ、と下唇を喰んでから小鳥が花の蜜を啄むように、ちゅ、ちゅ、とバードキスをしてくるのでくすぐったくなり身を捩っていたら、するすると着物が肌蹴られていく感覚を覚えた。レベル1の晴明が不埒な手で脱がしていこうとしているのだ。
    「ああ、もう、そんな。いけません、いけませぬぞ、晴明殿」
    「よいではないか、と続けた方がいいかな?」
     そう楽しげに言いながらもレベル1の晴明は道満の上半身を露わにさせて、その美しき肉食獣と呼んでも相応しい肉体美を視線で愛でた。熱い視姦によって道満は己の中心が屹立していくのを感じる。見られることで興奮するのは快楽主義のなせるわざなのだが、自らが煎じた薬が呪詛返しによって媚薬的作用へと傾いて道満の全身を駆け巡っているので、反応してしまうのも無理はなかった。
    晴明たちは思う。筋肉のつく上腕に歯形をつければ良い装飾となるだろう、眩いくらいの肌色を照らす頸に鬱血痕を残せば所有欲を満たされるだろう、そしてはちきれんばかりの豊満な乳房に口づけ吸い上げれば極上の気分を味わうことができるだろう。ああ、きっとそうだ、そうに違いない。晴明たちの瞳に雄たる欲の色が強まり、それを見てしまった道満は腰がずんと重くなる感覚がした。


    つづく!
    前回の晴道3P冒頭にスタンプや応援をしてくださり本当にありがとうございました!!
    めちゃんこ励みになります🥳
    いちゃらぶ晴道3Pになるように頑張ります〜!
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💴🇪🇱🇴❤❤❤💴💕💕💴💕💕💕💴💴💴💴💖💖☺☺☺💗💗💗💴💴🙏☺👏💞💞💞💞💞💞💖💴💘☺🙏💕💕💗❤💴🙏☺😭🙏👏🌋💴💒☺👍💖💕
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works