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    cantabile_mori

    @cantabile_mori

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    cantabile_mori

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    葬台オメガバ(ワンバケ原稿) 息を荒げてヴァッシュは起き上がった。
     はっ、はっ、と大きく呼吸をして、周りを見て落ち着こうとする。自分がいるのはどこなのだろう。
    「ここ、は……宿?」
     どうやらそのようだった。ごく普通の宿。一人部屋だ──と思ったところで何かの香りに気づく。
    (これは煙草? それに飴と、銃弾の金属のにおい。そして男の人の汗っぽいにおい……)
     何故こんなにも詳細に香りがわかるのだろう。わからない、わからない。
     隣を見れば、自分が横たわっていたベッドとは違うもう一つのベッドがあった。ベッドサイドテーブルには血のついたピンセットや包帯、そして血に塗れた銃弾が一つあった。
     嗚呼、また僕は怪我をしたんだ。
     だんだんと何が起こったのか思い出していく。自分の身体を見下ろせば包帯だらけで誰かが手当てをしてくれたのだとわかる。上半身は裸で下半身は下着のみのようだった。
     考えるのに頭が回らない。きっと血が足りないのだろう。何か口に入れて体力を取り戻さなければ。
    (でも……なんか、お腹が空いたんじゃなくて、何かが、足りない……感じがする)
     満たされたい。
     足りない。
     もっと嗅ぎたい。
     そう思った瞬間、ヴァッシュが──自分のものではない人間、あの『アルファ』のにおいのついた服が椅子にかかっているのを見つけた。ヴァッシュは目を見開く。
    (うそ……もしかして僕……!)
     もう、だめだった。
     頭のどこかで冷静なところがあっても、自分が止められなかった。これまでずっと、百五十年もの間抑えてきたのに。
     ヴァッシュはどさりとベッドから崩れ落ちて、『それ』のある椅子のところまで這っていく。あともう少し、手が届く。
    (彼の──ジャケット! 届いた!)
     すぐさまそのジャケットで顔全体を覆うようにしてにおいを胸いっぱいに嗅ぐ。脳髄に甘い電流のようなものが走り、全身にもそれが広がる。びく、びく、と断続的にヴァッシュの身体が小さく震えて肌を露出している上半身が瞬く間に汗でびっしょりになり、体温が急激に上がる。はぁ、と一度ジャケットを顔から離すと、ヴァッシュの顔は真っ赤になっていた。もう一度ジャケットを鼻に当てて染みついたにおいをスゥーッと肺いっぱいに吸う。もう、止まらない。止められない。この卑しい行為を止められない。
    (あー……すごい、彼のにおい。アルファのにおい。すごい、もっと、もっと……)
     スゥ、スゥ、と何度も嗅いでいく毎に、においが濃くなっていくようだった。百五十年ぶりにアルファのにおいをこんなに堪能している背徳感に酔いしれる。実際に酒に酔っているような感覚が全身に広がっており、だんだんと頭がふわふわしてきたし身体が蕩けてきているようだった。だがそれを繰り返す度に物足りないという気持ちが胸に湧いてきて、もっとにおいが濃いものはないかとヴァッシュは依然としてジャケットのにおいを吸いながら周りをキョロキョロと見渡す。
    (どこ、どこ……あ、あんなところに彼のシャツがある。ズボンも……)
     ヴァッシュは再び床を這い、『彼』のにおいがする衣服を見つけて有頂天になる。そばまで来て嬉しそうな顔をしてから、ヴァッシュはまずはシャツからにおいを堪能することにした。
    (あぁあ──……たまんない……あたまがぼおっとする……)
     ジャケットよりも『彼』の汗と体臭が染み込んでいて先ほどよりも大きくヴァッシュの身体は震えた。においがこんなに自分をおかしくさせるだなんて知らなかった。いや、知っていたけれど知らないふりをしていた。この頭をぐちゃぐちゃにさせて身体を火照らせるにおいを吸わないように、吸っても身体が反応しないように封印していた。けれどその封印の錠前はどうやらいつの間にか外されてしまっていて、ヴァッシュはとにかく百五十年ぶりの──快楽に、身を浸らせていた。
    (ズボンも、においが濃い……ああ、すごい……)
     すん、と嗅いでみて一番においが濃い場所を見つける。それはズボンの股間部分だった。思わずごくりと唾を飲み込んで、顔を埋めるようにそこを嗅ぐ。
     その、濃すぎる精のにおいを一気に嗅いでしまって、ビクンとヴァッシュの身体が跳ねた。そして──じゅ、と身体の内側が濡れヴァッシュの下着に染みができてしまった。
    (あ……うそ、だろ……っ、でも、でも……もっとぉ……)
     ヴァッシュはこんな行いをする自分を浅ましいと思いながらも、今まで手にした『彼』の衣服をかき集める。ジャケット、シャツ、そしてズボン。腕一杯にそれらを集めてスゥ、スゥ、と何度も嗅いで、綺麗に一つ一つ衣服を自分の周りに並べていく。それはもう本能だった。
     この本能を表す言葉は一つ。巣作り、である。
     『アルファのにおいに包まれたい』と本能的にベッドなどオメガにとって居心地の良い場所に持ち込み、その衣服に包まってアルファを待つ行為のことだ。衣服の他にも私物などを集める場合もあり、それはオメガによって様々である。巣を作りパートナーであるアルファを待ち、そのときアルファに巣作りを褒められるとオメガが多幸感に満ち溢れ二人の絆が深まると言われている。逆に巣作りを否定されてしまうと心に一生残る傷を負ってしまうオメガもいるとされ、それほどオメガにとって巣作りは大切で大事な行為なのである。
    (もっと……彼のものがないと巣が素敵にならない……もっとにおいが濃い服が……近くにある)
     『彼』の少ない衣服で巣を作ったヴァッシュは、さらなる衣服を求めてとある場所へと行く。そこは──宿の一室に備え付けられている、シャワールームの前だった。
    (あった! 彼の、下着……! すごい、すごい濃いにおいがする!)
     まだ顔を近づけていないというのにヴァッシュの身体は兆しを見せ始める。すぐさまヴァッシュは作りかけ、それも掻き集めた衣服も数枚しかない不出来な巣の真ん中に入り、『彼』の一等、精のにおいがする下着を──黒い下着で真ん中が少し濡れている、きっと先ほど発情したオメガたちに出くわしたからだろう──これまた歓喜に溢れた嬉しそうな顔を近づけてスゥ、と鼻からにおいを吸い込んだ。
     じゅ、と──ヴァッシュの股間が濡れ出していたのがついに本格的に愛液が溢れ出し、床にまで濡れていって『彼』の衣服にまで染み込んでしまう。そして徐々に腰を動かし始め股間部分を床に擦り始めたのだ。
    (きもち、きもちい、ああっ、もっと包まれたい、彼の肌に触れたい、彼のにおいに包まれながら僕の中心を──)
     久しぶりの快楽でぼうっとしながら下着に顔を埋め、そんな淫猥なことを考えていると、声が聞こえた。聞こえてしまった。
    「何しとるんや。トンガリ」
     はっと振り向くと、そこには。
     『彼』──ウルフウッドが、シャワールームから出た姿、すなわち全裸にタオル一枚という格好で驚愕の眼差しをヴァッシュに向けていたのだ。
     急速にヴァッシュの脳内が冷えた感覚に陥る。
    「あっ……! あの、そのっ、これは……っ!」
    「……オメガの、におい……トンガリ、おどれ」
    「ちっ違う! 僕はオメガじゃない! 違うんだ!」
    「……ごっつ、いいにおい……しとるな……なあ、トンガリ、なんやこれ、なあ」
    「あっこれ、は……!」
     巣作りを見られた。
     ヴァッシュは、ベータだと自らをも偽り、オメガ性を封印してきた希少なオメガである。
     そのことが露見してしまった恐怖よりも本能的に作った巣を見られ、否定されるかもしれない、罵倒されるかもしれない、という種別の違った恐怖が勝っていた。ヴァッシュは目をぎゅっと瞑り覚悟を決める。
    「……」
     ウルフウッドは何も言わない。だが──その瞳には、アルファとしての欲望の炎が灯っていた。
    「ご、めん、なさ……ウルフウ……わッ⁉︎」
     突如としてウルフウッドが近づきヴァッシュに襲いかかるようにして覆い被さったのだ。
    「すんごい、なあ……あまい、におい……とんがり……ッ」
     焦がれるほど待っていたアルファのにおいに包み込まれてヴァッシュは──百五十年もの間意志の力で封をしていたオメガのフェロモンを、ぶわりと解き放たざるを得なかった。
    「はっ……あ、ぁああぁ……うるふ、う…っど……ぁ……っ!」
    「──ッ‼︎」
     はぁ、はぁ、と声を荒げているウルフウッドの顔をおずおずと見てみると、ヴァッシュと同様に顔を真っ赤にさせていた。さっきヒートのオメガたちを前にしたときは何の反応もしていなかったというのに、ここまでウルフウッドを興奮させるのは秘めた百五十年のフェロモンの効果なのか、それとも。
     すん、すん、とウルフウッドも先ほどまでのヴァッシュと同じようにフェロモンをヴァッシュの首周りに鼻を近づけて嗅いだりして搾り出すような声で言った。
    「なあ、なあ……ワイの服、こないに濡れとるで……なあ、なにしてたん? なあ、とんがり……」
     ヴァッシュの目にも見えるように、愛液でぐっしょり濡れてしまった自らのシャツを持ち上げる。ヴァッシュは目を泳がせ唇を震わせて、心の内側からの恐怖心に抗いながら答えた。
    「巣を……つくって、いたんだ……」
    「巣を……つくって、いた……」
     ぼうっとした目で同じ言葉を言うウルフウッドは、とにかく目の前のオメガを喰らい尽くしたくて──そして脳を酒で満たされたようにずぶずぶに酔っている感覚の中で、にへらと笑んでこう囁いた。
    「たまらんなぁ……」
    「……!」
     ほめられた。
     ブワワ、と花が開くように笑みを浮かべて全身で嬉しさを表そうとし、ぎゅうっとウルフウッドを抱きしめた。
    「うれしい……ぼく、はじめて、だった……! はぁっ、うれしい……っ!」
    「とんがり……とんがりぃ……!」
     アルファとオメガのフェロモンが交わり、肌が触れ合い、あつくて濃厚な息遣いがどんどん近くなっていって──唇が合わさった。


    「あぁ……ッ♡ ああ〜〜──ッッ♡♡」
     きもちいい。きもちいい。きもちいい。
     ヴァッシュとウルフウッドが身体を重ねること数時間、晩の食物も飲み物さえも口にせずひたすら肌に触れ、喰らうようにキスをし、互いの性器を擦り合わせて──ヴァッシュの中心に挿し入れる。もうこの部屋は二人の絡み合うフェロモンでいっぱいになっていて、もし誰かが誤って入室してしまったとしたら充てられて擬似的なヒート状態になってしまうだろう、それほどまでに激しく濃密なセックスが繰り広げられていた。
     何度イッただろう。何度ナカに出されただろう。ウルフウッドは何回、自分は何回。もう、数えていられなかった。抑えつけられて、舐め上げられて、強く突き上げられて、何度も何度も。床もベッドも──あまりの衝動的なセックスの始まりだったため床から始まったが途中からベッドへともつれ込むように移動した──様々な液体でまみれていて、どちらがどちらのものかわからない。
    「はぁ、ぁ……うぅふ、うっどぉ……っ♡もっとぉ♡」
     どこにそんな体力があったのか、今度はヴァッシュがウルフウッドの上に跨り上下に身体を動かして抽送を始める。流石に目に毒でとても興奮した。
     なぜこんなにも激しすぎるセックスになってしまったのか。
     ヴァッシュは百五十年間、その固い意志でもって『オメガである自分』を封印してきていた。それは並大抵の努力ではできるものではなく、大墜落の折にヴァッシュが始めたことだった。よって此度の街ぐるみのオメガ掃討事件においてトリガーが引かれ、いつもなら緊急ヒート抑制剤を服用し再度の封印に至れたのだが、今のヴァッシュは怪我をした上に緊急ヒート抑制剤がどこにあるかわからない状態だったため、秘めていたはずのヒートが全開放されてしまったのだ。その怪我も今やヒートのおかげなのか傷が塞がっている。
    「とん、がり……っ、ふ、ぁ……くッ!」
     ウルフウッドは肉体を改造された人間である。改造の際に筋肉、神経、細胞に至るすべての身体の構成物が副作用として強制促進された代わりに強靭な肉体を手に入れた。そのためウルフウッドの身体はオメガのヒートによる誘惑は効かず、効いたとしてもほんの少し。アンプルを舐めるだけで自身を完璧に抑えられたのだが百五十年分のヒートには、耐えきれなかった。そして彼の心は旅を続けるうちに──ささやかな恋の波動に揺れ動いていた。恋慕と欲情、繋がってしまったそれらは爆発するようにアルファのフェロモンでオメガであるヴァッシュを屈服させ、増幅し、そして激しくなる一方なのである。
     よって、二人の初めてのセックスは──強すぎるアルファと強すぎるオメガによる発情した肉食獣の交尾のようになっていた。
    「あっあっあっ、あっ♡ ああぅ、あっ♡」
    「はぁ、はぁっ、とんがりぃ……上に乗るの、うまいなぁ……ッ」
    「あ……ッッ♡♡ うれ、し……あんっ♡ また、イキ、そぉ……っ♡」
    「ワイ、もっ……はぁ、はぁッ……ぁ、ああッ……‼︎」
    「ああッ……っ♡♡」
     びゅる、とヴァッシュの蜜芯から透明な液体が溢れ出た。ヴァッシュの吐き出すモノには精子が含まれていないのか、アルファの射精を促す甘い蜜のみが吐き出される。そのにおいにフェロモンがより濃厚になりアルファもまた腰をガクガクとさせて吐精するのだ。
    「トンッガリ、くッ──……‼︎」
    「ああぁ、ぁ…あ……ッ♡ ナカに、また……きたぁ……♡」
     どぷ、どぷ、とウルフウッドの大分薄まったがまだまだ濃い白濁液がヴァッシュの最奥に注ぎ込まれる。互いにはぁ、はぁ、と大きく息をしヴァッシュがウルフウッドの方へ倒れ込むので抱きしめてやる。するとヴァッシュがまた口を開けてキスをしたそうにしたため彼の首後ろを掴んで強引に噛み付くようなキスをした。
    「んぅ……ん、ふぅ…んッ! んぁ……♡」
     びくびく、とヴァッシュの肢体が深いキスで震え出す。キスだけでイキそうになっているのだ、これは。これまでにもヴァッシュはこのセックスが始まってからキスだけで絶頂したことが数回ある。きっとそうなのだろう、もっと気持ちよくどろどろになってしまえと思ってウルフウッドはじゅう、と彼の口内の唾液を吸い、軟口蓋をやさしく舌で舐め上げた。
    「ンッ…ッんんンンン──ッッ♡♡」
     口を塞がれたまま、中心で繋がったままヴァッシュはイッた。ヴァッシュの狭いナカが蠕動運動しウルフウッドの性器にむしゃぶりつくので、ウルフウッドのそれはまたむくむくと勃起をし始める。もとより溢れ出るフェロモンと甘い蜜のにおいですぐに屹立してしまうのだが。
    (きも、ち……い♡ もっと、もっとぉ……♡)
     ウルフウッドが体勢を入れ替えようとヴァッシュの身体を持ち上げて、ぐしゃぐしゃになってしまっているベッドに横たえさせる。そして大きくヴァッシュの両脚を開いて、どっぷりとウルフウッドから注がれた精液がヴァッシュの秘蕾から溢れ出るのをじっと視姦した。
    「や、ぁ……見ない、で……♡ もっとぉ、ほしぃ……♡」
    「おどれ自分が矛盾してること言うてるのわかっとるんか」
    「しらなぁい……うぅふ…う、っど……♡はやく、もっと、ぼくを」
     めちゃくちゃにして。
     そうヴァッシュの目が求めている。
    「……あかん、ワイももっと……おどれをめちゃくちゃにしたくて……はぁっ、堪らんわ」
     赤く高揚した顔をニヤリとさせ、熱い吐息を吐いてからウルフウッドはヴァッシュの両脚を掴んだまま腰を彼の中心へと近づける。ヴァッシュもウルフウッドの勃起しっぱなしの男根がむわりと近づいてくる気配を感じて「はぁ、はぁっ……!」と期待の声をあげて自ら両脚をさらに開く。そして、もう拓かれすぎてぷくりと周りが膨れ上がっているヴァッシュの秘蕾にまた怒張をずぶぶ、と突き入れられて甲高い声をヴァッシュは上げた。
    「あっぁああ──っっ♡♡♡」
     ヴァッシュの性器からもまたもや透明な蜜がしとどに溢れてフェロモンを垂れ流す。それは完全に本能的なもので、目の前のアルファたるウルフウッドにさらに奥へと精を吐き出して欲しいという欲求の現れだった。
     封印が解かれた発情は止まることを知らない。ウルフウッドはついに強すぎるヴァッシュのフェロモンに充てられすぎて鼻血を鼻から垂らし、ヴァッシュの腹に血を落とした。その血すらも肌から熱さを感じて「あんっ!」とヴァッシュは喘いだ。なんて淫乱なオメガなのだろうか。ずちゅ、じゅちゅん、とナカを抽送し蹂躙していけばその度にヴァッシュの身体は動きに合わせるように腰をくねらせ、もっともっとと深いセックスを求めていく。強きアルファであるウルフウッドを誘うような
    その姿はあまりに淫らすぎて今まで見てきたオメガよりもずっと、魅力的で──美しかった。
    「うっあぁッ♡ あぁんっ♡ んぁ、アッ♡♡ あぁ〜ッッ♡♡」
    「くっ……ふ、ふぅ、……はぁっ」
     体温はすっかり上がりきっていて、部屋の湿度は水の中にいるようだ。この二人のアルファとオメガの性交は初めてとは言えないほど息がぴったりであり、身体の相性も抜群だった。
     それは、つまり。
    「運命の……番いなんとちゃうか、ワイら……」
    「……あ、ぁあ……はぁ──へ?」
     どくん、とウルフウッドの心臓が鳴る。眼下のヴァッシュは枕に縋り付いて与えられる快楽に咽び泣いている。顔を真っ赤にさせて、鼻水も垂らして、涙も流して全身でアルファを受け入れる悦びに浸っている。こんな姿、今まで旅してきた中で見たことがない。
     ならば──噛んでしまえばいい。一生自分のものにしてしまえばいい。毎日毎日こんな貪欲に貪り合うようなセックスをしたい。噛み跡を晒してもうこのオメガは自分のものだと自慢して歩きたい。いいや、ずっとどこかに隠して自分だけのものとして監禁まがいなこともしたい。
     ずるりっ、と己の未だ硬くなっている性器を引き抜いて──ヴァッシュは「ひゃぁんッ」と可愛らしく喘いだ──ヴァッシュの身体を回転させて頸を晒す。
    「はぁ、はぁっ……とん…がり……」
     ああ、綺麗な頸だ。自分のためにあつらわれたような美しく赤く染め上がった頸だった。噛もう。だがこのオメガがいつもしている銀色のアクセサリーが噛むのを邪魔している。邪魔ならば、取っ払ってしまえばいい。
    「うるふ…ウッド? な……に……あ、だめ」
     オメガであることを隠していたヴァッシュがここにきて拒絶の反応を見せた。何度もイキすぎて力の入らない腕を上げて頸を守ろうとして、もじもじと身体全体を動かしウルフウッドの上からの体重から逃げようとする。
    「だめ、だめ……ほんとうに、だめぇ」
    「ええやろ……トンガリ……なあ、これからずぅっと、毎日おどれのことめちゃくちゃにしたるから、なあ、ええやろ?」
     その甘言に蕩されたい。その声色にずっと浸されていたい。その大きな身体に抱かれていたい。けれど、けれど。
     ヴァッシュはそれでも、涙を浮かべながら首を横に振った。
    「だめっ……だめなんだよ、う…うぅ……! らめぇ……っ!」
    「ええやろ、なあ……おどれの身体はええってさっきからずっと言うとるで」
    「ちがう、ちがう……いや、そうじゃないんだ……ぼくは、ぼくは……っ! でも……!」

    <中略>

     やわらかい唇が、合わさる。
     アルファとしての本能だけなんかじゃない。これはヴァッシュが好きだという恋心と本能が混ざって発露した感情なのだ。定められた運命の番いなんかじゃなくてもいい。ただ、好きだから。好きだから抱きたいのだ。
     ヴァッシュはウルフウッドの告白に、彼の首に腕を回して口づけを深くして応えた。
    「ん、んぅ……ふ、ぁ……」
    「ヴァッシュ」
    「……いっぱい、だいて、ほしい」
     ぶわり、とフェロモンを全開にして目の前のアルファを発情させる。自分を抱いてほしいと。
     ウルフウッドはヴァッシュの瞳の中に、恋慕の色と形を見た。


    「うう、うぅっふ、うっど♡ きもちぃ♡ もっとぉ……!」
     ぱちゅん、ぱちゅん、とヴァッシュはウルフウッドの上に──所謂騎乗位という体勢をとって、ひっきりなしに腰を動かしていた。艶かしく乱れまくって、ウルフウッドのアルファのフェロモンを全身で浴びて中心を彼のものに擦りつけている。
    「あ……っ♡ ここ、ここ♡ ここすきぃ♡ ここもっと♡」
    「トンガリ……ッ煽るのも大概にせえ!」
    「ひゃぁああぁあ♡」
     ウルフウッドがヴァッシュの細い腰を掴み、そこがいいと言われた場所──何度も擦られてふっくらと膨らんでしまった前立腺目掛けて己の屹立した雄の切先で突き上げた。
    「アッ♡ あぁああぁぁあッッ♡♡」
     ウルフウッドの激しい揺さぶりにも負けずに、貪欲に快楽を求めようとヴァッシュはもっと強く腰を上下に振った。
    「そないにっ……セックス、したかったんか! こないにエッチな動き方して、ワイやないアルファにでもこうやって腰振りたいと思ってたんとちゃうか!」
    「ちがぁう♡ いじわるっ言わないでぇ♡ あぁんっ♡」
     ヴァッシュとウルフウッドが繋がっている中心部からは白濁色の液体と透明の甘い蜜が混ざり合っていて、パンパンという肌が重なる音と共にばちゅんばちゅんという液体が湧き出て弾けるような音も聞こえてくる。これを淫らと言わずして何というのだろうか。それほどまでに二人は深い交合を、アルファとオメガによる快楽を互いに求めるセックスをしていた。
     二人のフェロモンが混ざり合って、ゾクゾク、と互いの中心が熱くなり一度絶頂する。
    「あぁッ! あぁ〜〜──……♡♡」
    「くっ……ふぅ……、あかんっもってかれる……っ」
    「…………うぅう、うっどぉ……♡ また、もういっかぁい……♡」
    「ほんま、どエッチやなぁ……! そないなおどれ、もっと見せぇや!」
     自身の上に乗ってあんあん喘いでいたヴァッシュをウルフウッドが引っくり返して体勢を入れ替えガバリと脚を開き、ぼっかりと空いたヴァッシュの蜜溢れる中心にバキバキに硬い怒張をどちゅりと挿し入れた。
    「ひゃッ♡♡ あぁ〜〜ああぁあっっ♡♡」
     とぴゅ、と可愛らしくヴァッシュが彼の性器から蜜を吐き出したかと思えば次の瞬間、泉のように潮を立て続けに出し始めた。
    「アぁああぁあ〜〜ッッ♡♡♡」
    「すっご……もうベッド濡れてないとこないくらいびっしょびしょやで」
    「あ……ふぁ♡ まだ、でるぅ……♡」
     ぴゅる、ぴゅるり、と量が少なくなってもなおヴァッシュの潮吹きは止まらなかった。ガクガクと身体を震わせて潮を吹く姿は艶かしすぎる。まあ、そんなヴァッシュを見たかったので眼福なのだが。
     ヴァッシュの大量の潮吹きによってオメガのフェロモンも増大し、ウルフウッドは「ハァ、ハァ!」と息を荒くする。もうウルフウッドの中心も甘い蜜の潮によってびっしょり濡れてしまっている。そのままばっちゅん、ばっちゅんと抽送を始めると粘着質な水音が部屋に響いた。
    「あんっ♡ あんっ♡ うる、ふ…う、っどぉ♡ きもちぃっ♡♡」
    「きもちええなぁッ! あかんっまた射精る……っ」
    「きてぇ♡ あんっもっとぉ♡ きてぇっ……♡」
     ヴァッシュからもたらされた甘い蜜を纏い、ウルフウッドの熱のこもった陰茎が何度も狭い隘路を行き来する。ウルフウッドはヴァッシュに覆い被さるようにして、ヴァッシュはウルフウッドに抱きついて腕も脚も絡みつくようにして、所謂だいしゅきホールドという体位で二人はセックスを続ける。正直言ってこのセックスは強すぎる快感で頭がどうにかなりそうだった。それほどまでに激しく、気持ちのいいものなのだ。
     ウルフウッドはヴァッシュに抱きつかれ肌がピッタリくっついている感覚が嬉しくて、そして気持ちよすぎて汗をだらだらと額から流しながら言った。
    「イク……あかんッもうイクッ! また射精すで、トンガリッ!」
    「あぁっ♡ あぁあッ♡ きてぇ……ぁ、あぁあああッッ♡♡♡」
     ヴァッシュの最奥に巨大なアルファの陰茎の先端を擦りつけるようにしてウルフウッドは勢いよく吐精した。あまりの気持ちよさに頭から爪先まで電流が走ったような感じがして、ウルフウッドもヴァッシュも共にぶるぶると震えた。
    「あっ……あっ……♡ きもひぃ……ぁ……♡ うぅう、うっどの、いっぱい……♡♡」
    「はぁ……はぁっ! トンガリ……まだまだ足りん。もっと気持ちよくなろな……」
     そう言ってウルフウッドは今度はヴァッシュの両脚を掴み、自身の肩に担ぎ上げるようにしてぴたりと彼の両脚を閉じ、そのまま陰茎の抜き挿しを行う。
    「あっ⁉︎ なっにこれぇ……♡ きもち、きもちぃっ、きもちぃよぉっっ♡」
    「おどれん中、きゅーって締め付けてくるで。どんだけ気持ちええねん……っ」
     と、獰猛に笑いながら言うウルフウッドも過ぎた快感にもう絶頂しそうになっていた。両脚が閉じたことにより隘路がより狭くなってちゅうちゅうと敏感な怒張に吸いついてくるのだ。まるでもっともっとと強請られているように。
     ウルフウッドはこの狭くて愛しくて気持ちいいナカをたっぷり堪能するように、ゆっくりゆっくりとずる〜っと腰を引いてからずぱんっ! と最奥を激しく突くのを繰り返していく。
    「あぁあぁああ〜〜っ♡♡ あッ⁉︎ それっらめぇ……♡ すきぃ♡♡」
    「嫌なんか? 気持ちよくってもっとしてほしいってか? どっちなん、やっ!」
     どちゅんっ! と一際強く、前立腺も潰していくように突けば、眼下のヴァッシュはまたイッて甘い潮吹きをした。
    「ひゃあぁああああぁッッ♡♡♡ らめぇえぇっ♡♡♡」
     びくん、びくん、と大きく身体を跳ねさせて全身で『気持ちいい』を表現するヴァッシュの淫猥さに、ウルフウッドはごくりと唾を呑み込んだ。
     こんなにも、こんなにも。
    「……どんだけ、エロいねん」
    「はーっ♡ はーっ♡ すっごい……きもち、い……ねぇ、こんどはもういっかい、僕がうごいてもいい? ね、いいでしょ?」
     するとウルフウッドは自らぶわっとアルファの強いフェロモンをヴァッシュに浴びせて、有無を言わさず起きあがろうとしたヴァッシュの身体をベッドに押し倒した。
    「ひっ……ぁ……ッ♡」
     直にアルファのフェロモンを浴びてヴァッシュは微弱に震えながらベッドからウルフウッドを見上げた。己を喰らうアルファにもっと喰べてほしくて、今もナカの最奥がきゅんきゅんとさせながら腰をくねらせた。
    「もっとや、もっとワイに喰わせろ、トンガリ……っ!」
    「あ……♡ いっぱい……たべてぇ♡ ぼくを……めちゃくちゃにしてぇ♡♡」
    「言われんでももっとめちゃくちゃにするさかいに、覚悟するんやで……っ!」
    「あはぁ♡ うれしい……♡」
     普段のヴァッシュとは大違いだ。こんなに艶かしく男を、アルファを誘うオメガだったなんて知らなかった。こんなヴァッシュを知るのは自分だけでいい。自分だけがいい。そう思ったところで、彼の運命の番いが自分ではないことを思い出して──ウルフウッドはカチンときてヴァッシュの脚を折りたたみ、種付けプレスでヴァッシュを激しく犯し始めた。
     どちゅどちゅ、ばちゅばちゅ、何度も何度も手酷く己の陰茎でナカを陵辱していく。
    「ああッ⁉︎ あ、あッッ♡♡ うっぅあぁああッッ♡♡ ひっぎゃぁ♡ おッああんッッ♡♡♡」
    「こないにッ……酷く抱いても、おどれはっ……満足なんかッ!」
    「あうぅッ♡ すき♡ すきぃ♡ こういうのもッだいすきぃッ♡♡」
    「なんでやッ! ワイら運命の番いやあらへんのやぞ!」
     はぁ、はぁ、と息を大きく荒げて抽送を止めるウルフウッド。ヴァッシュもまた荒く息をしていて、ヘタリとベッドの上に弛緩していた。ものすごく激しい犯し方だったからだ。
     ヴァッシュは快楽に目を瞑っていたのを開いて、自然と涙が出ながらウルフウッドにか細い声で言った。
    「うるふ、うっどが……いいよぉ……」
    「トンガリ……?」
     目を見張ってウルフウッドはヴァッシュを見下ろす。本当に、そう言ってくれているのだろうか。本心なのだろうか。
     だって、君が言ったんだから。自由になっていいって。
     ヴァッシュはうん、うん、と何度も頷き、ウルフウッドに腕を伸ばし首に手をまわす。
    「ぼく、うるふうっどが番いだったら、よかったよぉ……っ‼︎」
    「ほんま……か」
    「そうだってばぁ! それじゃなきゃセックスなんてしないよ!」
     でもなぁ、とウルフウッドは訝しげに腰をゆるゆる動かし始めてこんな意地悪なことを言った。
    「自分から上乗って腰振ったり、潮吹きごっつしたり、ひゃんひゃん喘いでアルファをその気にさせて気持ちええもんだけもらおうとしてたんとちゃうか? セックス好きなだけなんとちゃうか? なあ、トンガリ」
    「ばかぁッ‼︎」
     ヴァッシュは勢いのまま自らの唇をウルフウッドの唇に押し当て、舌をじゅうっと絡ませてから言い放った。
    「僕、昔強姦されそうになってから、ずっと怖くて怖くて堪らなかったんだよ! それなのにウルフウッドだったら……ウルフウッドになら、抱かれてもいいって……勝手に、身体も疼いちゃって」
     あの日だってウルフウッドのにおいだったから巣作りしちゃったんだ、とヴァッシュは恥じらいながら告白をした。
     なんて、いじらしいのだろう。
     ウルフウッドは腰から頭のてっぺんまでゾクゾクゾクッとなり、ヴァッシュを枕に縫い付けるようにキスをして再び熱くて巨大なアルファの象徴である陰茎を抽送させた。
    「んッ⁉︎ んんっんぅう♡ んっ……はぁ、あぁああッッ♡♡♡」
    「……あほトンガリ、ワイがどんだけ……っ、おどれが番いやったらと……!」
    「はぁ……♡ ぼくも、だよ……♡」
     と言ってヴァッシュはにこ、と笑みを浮かべて、どこにそんな力があったのかウルフウッドと自分の体勢を入れ替えて彼の上に乗っかった。
    「のあっトンガリ⁉︎」
    「ぼくのきもち知ってほしくて……だから、いっぱい、動くね……♡」
     ウルフウッドの硬くて大きな怒張のカリ首を動かないように固定して、ゆっくりと自分の体重を下ろしていく。何度もナカイキしふわふわのとろとろになったヴァッシュの甘い秘蕾はすんなりとそれを受け入れて、すぐに上下に身体を動かし快感と自分の気持ちを伝えようと騎乗位で攻めはじめた。
    「おっあ……あかんっ、あかんてトンガリッもうイッてまう……!」
    「はやくはやく……っ♡ たくさんきもちよくなって、たくさんぼくのナカでイッてほしいの♡ ぼくのきもち、伝わってほしいからぁ……あんっ♡♡」
    「トン、ガリィ……ッ‼︎」
    「あっひゃあ⁉︎ あんんっ♡♡」
     突然ウルフウッドがヴァッシュの腰を掴み、ウルフウッドもまた突き上げるように腰を動かし始めたのだ。それは射精をするための動きで、嬉しくなってヴァッシュは激しく自身の身体も上下に動かした。
    「ひゃっ♡ ああぁっ♡ きて♡ きてぇ〜〜っっ♡♡」
    「ふ、くぅう……ッ!」
     どぴゅるるる、とヴァッシュの何度もナカに出したその場所に、こちらも何度も射精したのにも関わらず濃厚なアルファの精液を吐き出した。その熱すぎる感覚に、ヴァッシュは感じ入ってびくん、びくんと身体を震わせる。
    「あ……♡ あ……っ♡ すご……うるふうっど、まだこんなに出せるんだね……♡」
    「……ハァッ……これが、ワイのお返しや」
     そうしてウルフウッドはヴァッシュの震える身体をぎゅうぅ、と抱きしめた。
    「ウルフウッド……っ」
    「ぜったい、離さへん。ワイとおどれが番いやなくとも、おどれの兄ちゃんがどんだけ邪魔しようとも、ワイはおどれを抱きしめて離さんからな」
    「……っ!」
     それは愛の告白にも似ていて。
     ヴァッシュはもう一度、その返礼としてやさしくキスを落とした。
    「……ありがとう、ありがとう、ウルフウッド……っ!」
     ウルフウッドの顔にひとつ、ふたつ、涙の雫が落ちる。だがそれは歓喜の涙であることはウルフウッドもわかっていた。なので嬉しくて、気持ちが通じ合ったことに感謝したくて、ヴァッシュの身体を掻き抱くように抱きとめた。
     そして──またヴァッシュがずちゅ、と腰を動かし始めた。
    「な、まだやるんか! そら嬉しいんやけど!」
    「だってぇ……ぼく、百五十年もヒートも抑えてセックスもしてなかったから、今すごくセックスしたくて堪らないんだ……っ! 運命の、番いになりたいって思った人と……!」
     むわりとオメガのフェロモンが強くなる。幾度となくイッても足りないのだろう。もしかしたらこれから毎日こうなるのかもしれない。いや、それでもいい。ウルフウッドはそう思った。自分も強いアルファで絶倫で、困ることなんてありはしない。強いて言えば周りの部屋への迷惑だろうか。自分たちのセックスは人よりも激しいだろうから。
     ウルフウッドは仕方なさそうに頭を掻いてから再度ヴァッシュの腰をがっしりと掴んだ。
    「ほな、満足するまで付き合わさせてもらおか?」
    「うん……うんっ♡」
     ヴァッシュとウルフウッド、運命の番いではないオメガとアルファは幸せそうに互いの指を絡ませながらキスをする。
     二人の部屋からは、今日も朝までフェロモンが垂れ流しになっていたという。

    <後略>




    第一ラウンドすけべと第二ラウンドすけべの詰め合わせでした!
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