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    翠蘭(創作の方)

    @05141997_shion
    一次創作/企画/TRPG自陣&探索者のぽいぴく
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    翠蘭(創作の方)

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    華軍企画内企画、「彼岸(悲願)の向日葵」の自宅の話

    #華軍
    warrior
    #自宅
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    幸せな夢を断つ話 一 あれほど鮮やかだった世界が、ほんの少し柔らかい色へと変わりつつある。それでも太陽は容赦無く地上を照らしていた。そんな光を反射した、華やかな黄色い花弁が見える。
    「一見普通のひまわり畑ですね、綺麗」
     小さな少女が呟いた言葉に、隣にいた人物は苦言を呈する。
    「校内に、向日葵ひまわりが咲く場所は、皆無だ。それに、この花の時期は、もう終わっている」
     数輪だけなら、花壇で咲いているなら、誰かが種を埋めたのではないかと思うこともできただろう。しかし、二人の視界に映る場所一面に、向日葵は咲いていた。第二グラウンドとテニスコート、そして室内プールが設備されている建物の近く、本来であれは更地である場所に、五メートルはあるであろう大輪の花がたくさん在る。
    「高さといい、これは、異常だ。出現場所は、……あぁ、うん。ここで間違いない」
     神の出現場所通知を改めて文-Fumi-で確認し、確信を得る。
    「この、遅咲きの向日葵畑そのものが、神の仕業、か。花だからと、侮っては、いけないよ。夏宵かよ
    「わかってますよ! ひつじちゃん!」
     夏宵と呼ばれた少女は、小さな手のひらに力を込めた。
    「うん」
     そんな夏宵を見て、その様子がなんだか可愛らしくて、未は頭を撫でる。
    「気を付けて進もう」
    「はい!」
     そして二人は、向日葵畑に足を踏み入れた。

     五社学園。本土から離れた島に存在するその高校では、生徒達が学業に励むと同時に、『しん』と呼ばれる異形を狩っている。神に殺されれば自分達の命もないに等しい。まさに命懸けの学園生活だ。
    「この向日葵を、片付けるには、本体を探さないと」
     二年の夜咲よるさきひつじは、向日葵の葉を掻き分けながら、躊躇ちゅうちょ無く進んでいく。
    (こんなに、規模が大きいとは。探すにも骨が折れる)
     恐らく本体も向日葵の形をしているのだろう。木を隠すなら森の中とはよく言ったものだ。通常の神よりも、探しにくいと感じる。
    「ひ、未ちゃん、待ってください……!」
     数歩遅れて着いてくるのは月待つきまち夏宵かよ、今年入学したばかりの一年生だが、飛び級制度を利用して入学した、十二歳の少女である。
    「あぁ、すまない。少し速かったね」
    「い、いいえ! 歩幅はしかたありませんから!」
    「あ、そうか。手を繋いでいこうか」
     未は、そっと手を握った。小さな、子供の手。
    「え、えへへ……」
    「? どうした?」
    「手を繋いで歩くの、お姉ちゃんとしかしたことがなくて。ちょっと恥ずかしいなって」
    「……そう、か」
     お姉ちゃん、という言葉に、未は少し目を伏せる。夏宵と未の接点は、夏宵の姉にあるからだ。彼女は──。
    「!」
    「ど、どうしたんです、か……」
     未が立ち止まった理由がわかったのだろう、夏宵が目を見張る。
     目の前に、数人の生徒が倒れ伏していた。
    「神の攻撃 どこから」
    「迂闊に動いたら危険だ。夏宵、離れないで」
     手を繋いだまま、未は倒れている生徒に近づいた。息はある、が、起きる気配は無い。身体中には周囲の向日葵から伸びた蔦が巻きついている。注意深く生徒を観察すると、その手の甲に、なにかが張り付いているのが見える。
    (……種?)
     向日葵の種だ。
    「これは」
     一体なんだと触れようとした瞬間、繋いでいた手に、今までは無かった重みを感じる。
    「夏宵」
     膝から崩れ落ちた少女の、深い緑の目は閉じられていた。目の前の生徒と同様に、周囲の蔦が絡みつこうと動いている。
     そして、繋いでいない方の手の甲に、向日葵の種が埋まっていた。
    (どうして、攻撃なんてなかった、のに)
     一体いつから、と自分の手の甲を見る。変化はない。
    (夏宵を、運ばないと)
     小さな体を抱き抱え、数メートル先に移動する。巨大な向日葵に上から覗きこまれている感覚に、苛立ちを募らせる。
     夏宵を横たえる。息はしているものの、このままでは先程の生徒達のように、蔦に絡みつかれるだろう。
    (……この向日葵畑そのものが、討伐対象である神の領域、ならば)
     嫌な予感がした。
     自分の手の甲を触っても、なにも感じない。それでも、恐らく。
    (ここに足を踏み入れた時点で、僕たちは)
     神の術中に嵌まっているのだと。
     気づいたときには、もう遅かった。
     手の甲に、ギョロリと大きな目がついた種を認識した。目の前の風景がゆらゆらと揺れ、向日葵が浮いている。
     そのなかで、鮮やかな赤いリボンが見えた気がした。
    「月待、先輩……?」
     混乱した頭でその名を呼んだ途端、不意に視界が暗転する。
     未はそのまま意識を手放した。
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