七五 パン屋さん! パン屋の朝は早いとよく聞くけれど、この不真面目な店主はまるで会社員のように朝の9時からしか働かない。それまで生地は寝かせたまんまだ。
毎朝常識的な時刻に起き、まず何をするかというと洗濯機のスイッチを入れて朝ごはんの準備をする。店先に並べるフルーツパイよりもずっと大きくて色とりどりの果物を乗せた特製だ。それが満足いく出来になれば二階に上がる。
大きく窓を開けたままの部屋には風が心地良く舞っている。カーテンはそよそよとそよぐ。朝日の中に広がる景色は水平線まできらきらと輝く海だ。穏やかな内海は今朝も目が覚めるほど真っ青で美しい。そして窓際のベッドに眠る人も、またため息が漏れるほど美しい。
髪も肌も白い人が白いベッドの中でしどけなく眠っている。やけに長い手脚を投げ出すようにして熟睡の様相だ。ゆっくりと上下する胸や腹はほどよく引き締まってアスリートのようだけれども、滑らかで疵ひとつない肌の上に点々と、血の色が散っている。ぽかんと開かれたくちびるのほうがまだ淡い色をしているくらいだ。
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