料理と温もり 魈はそれが冷めるのを待っていた。
「温かい内に食べる方が、この料理の真価は知れるだろう」
そうした魈を見て、鍾離は言った。
「か」
卓の上に置かれた湯気の立つ料理――腌篤鮮を見つめていた魈は慌てた様子で顔を上げると、隣に座る鍾離を見る。自分の魂胆が既知であること、またその魂胆が鍾離の意に添わぬのだということに震え上がるような心地がし、言葉はすんなりとは出てこなかった。
「畏まりました」
そうして言葉通り畏まりながら、魈はレンゲを手に持つと、深い椀の中にそれを挿し入れる。具ではなくまずはスープだけを掬い、そのレンゲを口元へと寄せた。そうして寄せると、そのスープの熱が直に伝わってくるようだった。
「頂戴します」
2025