「で、何があったんだ?」
祭りを終えて寮に戻り、汗を流してさっぱりしたところを刑部に捕まった。
「んー、聞いても多分信じないと思うぜ」
星の中を列車で走った美しさは伝えたいが、話が突飛すぎる。さすがに言い淀むと、インド体験、と口にしてきた。
あれも三上の夢に入るという不思議な体験だった。そうすると、受け入れる土台は出来ているのかもしれない。
「なぁ刑部、お前逆上がりっていつできた?」
だったら少し懐かしい思い出を、聞いてもらうとしよう。
「…ってことがあってさ」
時間にするとあっという間だった、それでも懐かしくて大切な思い出に触れて、センチメンタルな気分になったのかもしれない。隣に座る刑部の肩に、額を乗せる。そっと髪を撫でてくる感触に、笑みがこぼれた。
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