お題:「無防備」「腹筋」5/29 腹をまるだしにして眠っていた柴犬のことを思いだした。無防備すぎやしないか、そう言ったら、安心している証拠だと言われた。自分の近くにいる存在を信頼しきってまあるい腹をみせてすやすやと眠る犬はとんでもなく無防備で、動物としてそれでいいのだろうかと思ったが、その信頼を裏切りたくないと、何故か自然とそう思った。安心して眠れる場所が在るのはいい、心から信頼できる存在が在ることも。今、この家には二人しかいない。こいつは腹をだしてすっかりと眠ってしまえるくらい俺のことを信頼してくれているのか。いや、でも、こいつの他人を信頼するハードルはずいぶんと低そうだ。誰にでも腹をだしてみせるのか、誰のそばでもこんなふうに無防備な顔をして眠るのか。そんなことを悶々と考えながらリビングのソファで眠るルークをながめていたアーロンはずいぶんと険しい顔をしていたらしく、しばらくして目を覚ましたルークがまだ半分とじたままの目をこすりながら傍らにいるアーロンに気付くと、ぎょ、として、よく状況が掴めずにぎこちなく笑った。
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