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    karanoito

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    POIPOI 207

    karanoito

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    始×新

    スキンシップにかこつけて

     下半身に残る濡れた感触に新は静かにため息を吐いた。こんなにスッキリしない夢精はなかった。確かめたくなくて布団の中から出られない。
     確かに夢には出て来たけど決してそういう意味じゃない。違うったら違うと頭を振って気を取り直す。
    「……よし」
    「新? 聞いてるか」
    「……兄さん、いつからそこに」
    「だから朝食が出来たと言ってるだろう、聞いてないな」
    「わ、分かった。すぐに着替えて行くから出てって」
     新の顔は赤くなったり青くなったりと大変だ。
     変な声を上げて何だ、と呆れ顔の始を部屋から追い出して、もう一日が終わったような疲れが押し寄せる。実際はこれから一日が始まるのに。ああ、もう最悪だ、ため息しか出ない。
     赤くなった顔見られてないよね……と鏡を覗き込んだ。
     その夜、気まずさから夕食を終えて早々、部屋に閉じこもった新を兄の始が心配しない筈もなく、さっきからノックの音が鳴り響いている。ベッドに潜り込んで無視していると、業を煮やした始が強行突破してきた。
    「新?」
    「……」
    「具合でも悪いのか?」
    「……」
    「悪くないなら顔ぐらい見せなさい、まだ休むには早いだろう」
    「やだ」
     新、と兄の声が静かに苛立っていく。それでもベッドの中にうずくまっていると布団を剥がされた。
    「どうしたんだ、その顔」
    「……」
    「本当に具合は悪くないのか?」
    「大丈夫だから、その」
    「本当だな?」
     うん、と頷く顔はりんごのように赤い。枕で顔を隠す新を心配そうに見つめた後、ふと視線を逸らして
    「てっきり俺で抜いてるのを知られて塞ぎ込んでるのかとばかり思ったが」
    「なっ、な、兄さん何言って……!?」
    「声が聞こえてな」
    「違っ、あれは夢に兄さんが出て来ただけでそんなつもりじゃないから!」
     あわてて新が跳ね起きる。
    「違うのか」
    「断じて、違いますっ!」
    「しかしその後抜いたんだろう?」
     そう言われれば否定は出来ないけど、それを認める訳には行かない。枕に目を落として言い淀む新に、いつの間にか始が近付いてベッドに乗り上げる。
    「よし、せっかくだから扱いてやろう」
    「笑えない冗談やめて」
    「半分本気だ」
    「本気より質悪いよ……それ、兄さんがやりたいだけだよね?」
     そうとも言うな、と笑みを含んだ始が新の体に覆い被さる。あっという間に体を横たえられて、耳元に笑い声が降ってくる。
    「可愛いなあ、新は」
    「に、兄さん……?」
    「ちょっとからかっただけで耳まで真っ赤にして」
    「…………心臓に悪い」
    「悪かった」
     クスクス、と乗り上げた始はちっとも悪びれないでおかしそうに笑っている。笑ってないで早く退いてくれないかな……
     新の視線に気付いて退くどころか、むしろ鼻まで近付けて。
    「本当にいいのか? 可愛い弟の頼みならいくらでも聞いてやるから遠慮なく言いなさい」
    「取りあえず上から退いてほしいです」
    「……お前がそういうなら仕方ない」
     悩み事ならいつでも聞くからな、と頭を撫でてもらってやっと解放された。長いため息が出て、もうこんな事が起こらないよう細心の注意を払おうと決意した。
    「……呪(まじな)いだからと案外馬鹿に出来ないな」
     次はこれを試すか、とパソコンの前で呟く始の姿があったとか無かったとか。

    2015.4
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