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    karanoito

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    karanoito

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    ユリカロ 学パロ

    君が気づくまで

    「カロルー、帰ろうぜ」
     公立ブラスティア工業の校門前でさも当たり前のように、他校の生徒が堂々と放課後迎えにやってくる。
     しかもそれが、かの有名なユーリ・ローウェルだと言う事で、カロルは少し注目されるようになっていた。
    「ユーリ、早いね。ここからヴェ学ってそんな近くないのに、どうやって来てるのさ? ちゃんと授業受けてる?」
    「そんなのいくらだって近道出来るだろ。つまんね一事気にしてねぇで行くぞ」
     ユーリはカロルから鞄を引ったくると、自転車のカゴに詰め込み、サドルに跨がった。それを合図に、カロルも後ろに乗り上がって、肩に手を置いた。
     ゆっくりと自転車はこぎ出され、校門前からデコボコな二人組の姿が消えて行く。

     学校帰りにユーリがカロルを誘いに来て、一緒にタ飯の買い物をして帰る。二人共、親の存在が亡いと知って、何となく習慣付いてしまい今ではテンプレと化したが、ユーリは悪くないと思っていた。むしろ、好ましいくらいだ。
     一方、カロルの方は大分打ち解けて来たとは言え、時々不安そうにユーリを見上げる事があった。それが何を意味するのかはまだ分からない。
    「今日は何買ってく? 寒いから鍋なんかいいかもな、カニとか一杯入れてさ、味噌で味付けして……何かカニ食いたくなってきた。安売りねぇかな」
     今日も最寄りのスーパーに着いて、二人仲良く並んで陳列棚を眺める。ユーリはいつもこんな調子で、楽しそうにカロルに話しかける。ブラエ (※カロルの学校)でユーリと言えば、伝説とも言える不良の代名詞なのに、そんな恐い顔をしている処をカロルは見たことが無い。
    「なぁ、一人で鍋するのも味気無いし、オレん家で一緒に食わないか?」
    「え、あ……別にいいけど。お鍋はみんなで食べた方が美味しいもんね。ボクも好きだし」
    「じゃ、決まりだな」
     ますます機嫌が良くなったユーリは鍋の具を真剣に吟味し始める。なるべく安く克つ美味くする為に手間は惜しまない。貧乏学生故に、そういう処は抜かりなかった。
     やっぱり、皆が言うほどコワイ人には見えないや。
     一緒に鶏肉などの具を選びながら、ホッとしたようにカロルは息をつくと、一つのワゴンに目を止めた。
    「今日バレンタインだったんだっけ、チョコ売ってる」
     チョコレートと聞いて何!? と途端に目が輝き出すのも何か可笑しくて、見上げながら軽く失笑する。
    「ユーリ、そんなにがっつかなくても、今日学校でたくさん貰ったんでしょ」
    「何言ってんだ、甘いモンはいくつあったっていーだろ。カロル、チョコ欲しいか?」
    「別に貰えなかったからって、自分で買ってまで欲しくないよね、そりゃもらえたら嬉しかったけどさ」
    「じゃ、オレのチョコやるからコレ買って、オレにくれ」
    「……何で?」
     カロルの目がキョトンと円くなった。
     ユーリが甘いモノが大好きなのは知っているが、通学用のカバンに山ほどチョコが入っていたし、それで充分ではないのかと思う。
    「欲しいから。で、くれんのか?」
    「そんなに欲しいのあるんだ? どれ? ボクも買おうっと」
    「お前には後でオレのやるからいーだろ。どれにすっかな……」
     えー、何それ!? ユーリ横暴っ! 文句をBGMに聞き流しながら、ゆっくりとチョコを選んだ。
     夕食のあと、手渡されるチョコの味を楽しみに待とう。
     きっと、どのチョコよりも甘いに違いないだろう。

    2011.2
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