心配性分
クオイの森で仲間たちから熱い制裁を加えられた後、心置きなくユーリはカロルの心配が出来た。
事情があったとは言え、置いて行くことは後ろめたく、とても気掛かりだった。
怒られてみんなに追い付かれた今となっては我慢する必要も無く、思う存分世話が焼ける。
熱っぽくは無いか、もう体は大丈夫かとカロルに構い出したユーリに仲間たちは呆れて、早々とキャンプの準備を始めてしまった。
「寒くないか? ぶり返したら大変だからコレ羽織っとけよ」
「もう平気だってば。大丈夫だから! いい加減離れてよ!」
しつこく構い過ぎてカロルにそっぽを向かれるまでユーリの心配は続いた。
目が覚めるまで側に付いててやれなかった。置いていかないでと言われたのに破ってしまった。
それに対して罪悪感を持つのは解るが、何時になくベタベタとしつこくていい加減ウンザリしてしまう。
「お前が倒れたのはオレのせいだから、心配したっていいだろ」
「気にしてくれるのはうれしいけどもう治ったからユーリ心配し過ぎだよ」
「……一人で無茶させて、倒れられたら心配にもなるだろ」
いつもの傲岸不敵さは何処へやら、本気でしょげているらしくユーリは寂しそうな瞳でカロルを見つめてくる。頭の上にしょんぼりと垂れた耳が見えた気がして、慰めるように頭を撫でた。
「……ユーリ、子供みたいなカオしてるよ?」
「うっせ……お前にだけだよ」
甘えるように、手を伸ばして小さい体をすっぽりと抱き締めた。子供ならではの温かい体温は張り詰めた心をゆっくりと溶かし、安心させる。
「大丈夫だよ、みんな居るから。一人じゃないもん」
だから思い詰めなくていいんだよ。
そうだな、とユーリは茶色い髪に頬を埋めて改めて温もりを確かめる。
いつまでやってんのよ! とリタの苛立ち混じりの声が飛び、ジュディスが炊き出しの器を持って、 にこやかとは言い難い笑みと共に背後に立った。
「早く食べて休みましょう? 明日も早いのだから」
ユーリが腕を放すとあっさりと温かい感触は側から離れてしまった。
でももう心苦しさは感じない。日が昇れば、帝都はもうすぐだ。
2011.4