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    karanoito

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    karanoito

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    ユリカロ

    これだけは何があっても譲れません(笑)

    「……カロル」
    「言い訳なんか聞きたくないからね」
     野営のテントの中でカロルは頬を膨らませている。
     眉をつり上げて、まだまだ怒りは収まる様子は無い。カロルがこれだけ怒るのは無理も無いことで、ユーリも反省している。
     倒れたカロルや仲間を放って、単独で帝都に行こうとしたのは悪かったと思っている。だから黙って罰も受けた。
    「だから……許してくれ、頼む」
    「ユーリ、しつこい! イヤなものはイヤだってばっ」
     神妙な面持ちでユーリが左手を伸ばすと、捕まらないように左に体をずらす。右手を伸ばすと、右に逃げられる。
    「もう絶対置いていかない。約束する。頼むから……寝る前にお休みのキスをさせてくれ!」
     同じテントに居たレイヴンが噴き出した。一曰くらいやらなくてもいいでしょ!? とカロルは鞄で、迫るユーリをガードしている。
    「……おたくら、毎日そんな事してたの?」
     仲の良い兄弟みたいだとは思っていたが、何て緊張感の無い。先程まで思い詰めてた苦悩の青年は何処へ行ったのやら。
    「何だよ、おっさん。カロルはやらねーぞ」
    「ユーリ、変な事言わないでよ! レイヴン、助けて〜」
     捕獲されたカロルがユーリの腕の中でもがいている。後ろから抱きかかえて、頬に口付ける。
     よし。カロルの番、とユーリはにっこりと笑って向き直った。
    「今日はヤダ。ボク、まだ怒ってるんだからね」
    「ふーん、じゃ、一丁オレから労ってやりますか。とばして行くから覚悟しろよ?」
    「ちょっ……やだ、止めてよ! レイヴン居るのに!」
    「青年。我がまま言うのもいい加減にしなさいよ」
     このまま行くと押し倒しかねないユーリを、カロルから引き剥がす。
     二人がどれだけ親密でも越えてはいけない壁と言うものがあるのだ。
    「カロル……そんなに怒ってんのか?」
    「怒ってたけど、それとは話違わない……? たかがおやすみのキスで大げさ過ぎるよ」
     全く持ってその通りだ、今日のユーリはどこかおかしい。
     思い詰め過ぎて、頭がバグってしまったのか。
    「大げさじゃねぇ、これは由々しき問題だ。おやすみのキスで寝て、起きたらおはようのキスは自然の摂理だろうが!?」
    「ちょっと青年、しっかりして!」
    「ユーリ……そうだね、ボク間違ってた。挨拶って大事だよね……!」
    「あれぇ? そこ感動しちゃうの? しかも微妙にポイントずれちゃってるし!」
     カロルが感銘を受けて涙する。分かってくれたか……! と両手を広げるユーリに、カロルは躊躇なく飛び込んだ。
     有りもしない花びらが二人の間を舞うのが見える。
     呆れ顔のレイヴンの前で、ちゅっと可愛らしいおやすみのキスを貰うと、ユーリは満足して寝てしまった。カロルも何事も無かったように、隣に添い寝する。
     このノリについて行けず、一人呆然と取り残される。
     カロルは病み上がりだし、ユーリは言わずもがな。寝不足も祟って、案外みんな疲れてるのかもしれない。
    「……寝よっと」
     このノリが明日も続いたら、早々に女性陣に助けを求めよう。そんな明日は正直、御免被りたいが。
     深く突っ込まないのが吉、とレイヴンは毛布を被り、眠りに着いた。

    2012.1
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