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    karanoito

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    karanoito

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    ユリカロ

    一緒に暮らそう

     凛々の明星を作って、何となくうやむやになっていた拠点。雪溶けの街、オルニオンが出来てそこを中心に活動していた。話し合うまでもない、と思っていたある日、
    「なぁ、オレらのギルドの拠点ってココでいいんだよな」
     依頼の無い昼下がりに、三人と一匹が居間に集まってお茶を飲んでいた時、ユーリがポツリと呟いた。
     拠点なんて何処でもいいと、一番気にしない人物からそんな言葉を聞くとは。
     そうね、と事も無げに答え、ジュディスがティーカップを優雅に口に運ぶ。ラピードは興味なさそうにソファの足元で欠伸をしている。
    「だよな」
    「どうしたの、ユーリが突然そんな事言い出すなんて熱でもあるんじゃ」
    「オルニオンって新しく出来た街だよな。実質、オレらが造ったと言ってもいい」
    「そうね。貴方の親友が造ったようなものだけど、間接的に私たちも関わってるわね」
    「ワフ……」
     向かい合わせに座るカロルは話に付いていけず、首を傾げて成り行きを見守っていた。そこへ、
    「“オレたちが造ったギルドの街”……やっと出来たな」
     ユーリが目を細めて微笑うと、やっと気が付いたようにカロルは大きく頷いた。砂漠の街で交わした会話。
     ダングレストやノードポリカではなく、新しい街に拠点を作る手もある。と言っていた。約束していた訳では無いが、覚えてて達成出来た事がうれしい。
    「いつの間にか出来てたね。新しい街」
    「それでだ、カロル。オレと一緒になってくれ、この街で一緒にずっと暮らそう」
    「? もう、一緒に暮らしてるでしょ?」
     帰る家の無いカロルにとっては、ギルドの拠点イコール家のようなものだ。実際、みんなココで寝泊まりして、仕事に出ている。
     いつになく真剣な眼差しでカロルの手を取り、手のひらに何か握らせる。
     銀色のシンプルな指輪。カロルの目が指輪に引き寄せられるが、反応はない。まだ子供なせいか指輪を贈られてもしっくり来ないのだろう。
     鈍感なカロルにユーリがヤキモキする傍ら、私たちは買い物にでも行こうかしら? とラピードと目配せして外へ出る。
     ジュディスがドアを閉めて少し経ってから、中から慌てたカロルの声が響いてきた。

    2012.4
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