さよならのあと(降谷Side) 潜ることになった。
新しい名前をもうひとつ。電話番号もメールアドレスも何もかも変えて。違う世界へ旅立たなくてはいけなくなった。
赤井には何も言わずに。たったひとりで。
素直になれず。一度も愛してると言えないまま。さよならが先に訪れた。
赤井と一緒に住んでいたアパート。自分が住んでいた痕跡をすべて消した。最後に残ったのは、赤井と一緒に使っていたプライベート用のノートパソコン。自分の使っていた跡をすべて消去したあと、ふと未練が溢れ出す。
降谷は静かにキーを叩き続け、朝陽が部屋を照らす前に、静かに家を出た。
あれから一年。
降谷は潜入先にいた。古びた倉庫。もうすぐ裏取引の相手が現れる。
あの日から季節は一巡りして、再び冬が訪れた。あの日のことを、降谷は一度も忘れたことがない。
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