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    かとうあんこ

    赤安だいすき

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    かとうあんこ

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    付き合ってないオメガバ赤安(α✖︎Ω)

    #オメガバ
    omega-3FattyAcid
    #赤安

    君が濡れた夜 アパートの一室で本を読んでいた赤井は、雨の音を感じてふと目を上げた。しめきったままのカーテンの隙間から窓を見ると、降り出したばかりだと言うのにそのほとんどが濡れていた。
    こんな雨の夜、彼はどうしているだろう。そう考えてしまうのは、赤井の癖の一つになっていた。
    彼というのは、同じ組織に潜入していた捜査官のことであり、かつては殺したいほど憎まれていたこともあった。因縁の組織が実質的に壊滅してからは、同じ陣営になり、共に戦う仲間になったが、赤井にとって彼は言葉では言い表せない特別な相手だった。
    そんな降谷零と初めて会った日のことは今でもはっきり覚えてる。黒い服に身を包んだ彼は、犯罪組織の一員とは思えないほど清らかで美しかった。
    当時ライと呼ばれていた赤井は、彼に興味がない風を装って目を足元に目を向けた。しかし、それは意味がなかった。目が彼を捉えてなくても、そこに極上のオメガがいることを本能が察知していた。赤井は抑制剤を飲んでおいたことにひどく安堵した。
    思い出というには生々しく、過去というにはあまりにも鮮明な記憶を振り返っていた赤井は玄関の呼び鈴が鳴ってハッと我に返った。
    人と会う約束はしていなかったはずだ。もう零時を過ぎているというのに突然訪ねてくるような友人は日本にはいない。気配を殺しながらドアスコープを覗くと、ドアの前に赤井の『運命』が立っていた。
    「降谷くん、どうしたんだ。君、ずぶ濡れじゃないか」
    「はは……少し離れた場所に車を停めたもんで、歩いている間に降られました。でも、こっちはちゃんとビニールに入れておいたから無事ですよ」
     そう言って降谷が赤井の前に置いたのは、ビニール(東都指定のゴミ袋)に包まれた赤井のライフルケースだった。
    「なんです、ゴミ袋がご不満なんですかっ?仕方ないでしょう、他にこれが入るビニール袋がうってなかったんだから」
    「いや、それはいいんだが……わざわざ届けに来てくれたのか?」
     赤井のライフルは一時的に日本警察で保管されていた。組織壊滅作戦の際は、米国大使館ルートで狙撃許可を得ていたものの、組織の残党を追うために日本警察と合同捜査本部を設立した以上、彼らからの許可なしというわけにはいかない。赤井のライフルは日本警察の審議を待つ間、彼らによって没収されていた。
    「そうですよ。庁舎で渡すのはちょっと……。これ、許可貰うの大変だったんですよ?感謝してくださいね」
     もし許可が下りなければ、一足先に米国に送還されるかもしれない状況だった。しかし、降谷は「僕が何とかしてみせます」と言って、上との交渉を買って出てくれた。使い慣れているというだけで、赤井はライフル本体に執着はなかった。こうして、降谷がわざわざ運んできてくれたことの方が一大事だった。
    「ありがとう。きっと君の役に立って見せるよ」
    「言いましたね?馬車馬のようにこき使ってやりますから!」
    「楽しみにしてるよ……ああ、今タオルを持ってくる。少し待っていてくれ」
    「あ、いや、別にこれぐらい……」
     問題ないという降谷を無視して赤井はバスルームにタオルを取りに行った。戸棚からタオルを手にとり振り返ると、洗面台の鏡に今まで見たことがないぐらい慌てた表情の自分が写っていた。自分のツガイの世話を焼きたがるアルファのようだ。
    決して手に入らない、手に入れてはいけない。赤井はそう自分に言い聞かせて、来たときよりもゆっくりとした足取りで玄関に戻った。
    「使ってくれ」
    「はあ……ではお言葉に甘えて……」
     降谷は赤井からタオルを受け取ると、濡れた髪をガシガシと拭き、ジャケットを脱いだ。下に着ていたワイシャツまでもが肌が透けるぐらいに濡れてしまっている。その瞬間、赤井は抑制剤で押さえつけた本能をザワリと撫でられたような気がした。
    「ふっ……なんて顔してるんですか」
    「え……」
    「物欲しそうな顔してますよ」
     図星だった。その透き通る髪に鼻を埋めて、シャツを剥き、褐色の肌にむしゃぶりつきたい。そんな風に明確に欲情してしまうということが、赤井にとって降谷が『運命の番』だという何よりの証拠だった。
    「僕が使ったタオル、好きにしていいですよ」
     降谷は蠱惑的に微笑む、自分の使ったタオルを赤井の前に差し出した。それを欲しいと思ってしまう自分の浅ましさに赤井は絶望しながらも降谷から目を離すことができなかった。
    「なんてね。この手の話題はあなたはお嫌いでしたね」
    「何のことだ……?」
    「だってあなた、組織にいた時ベータのフリしていたでしょう?かなり強い抑制剤でフェロモンを抑えて……オメガが嫌いなアルファが良くやる手口ですよね」
    「いや、俺は別に」
    「いいですよ、そう思われても仕方ない側面がオメガにはありますから。じゃあ、僕はここで。タオルは新しいものを買って返します」
     降谷が踵を返しても、赤井は彼を引き留めることができなかった。そうしてしまったら最後、無理やりにでも自分のものにしてしまいそうな気がして手を伸ばすことができなかった。
     その一方で、自分は一体何に抗っているのだろうとも思った。運命に?それとも第二の性に?おそらく両方だ。降谷をそんなものの犠牲にしたくなかった。
     降谷が玄関のドアを開ける。その瞬間、暗い空に閃光が走り、雷鳴がとどろいた。
    「ぎゃああっ」
    「降谷くん!大丈夫か!?」
    「は、はい……」
     そう言いながらも降谷の左手は、赤井が降谷の右手首を掴んでいる手を上からぎゅっと握っている。雷が苦手なのだろうか。青い瞳は恐々と外の様子を伺っている。赤井はそんな降谷を見たのは初めてだった。
    「あ、あの、別に雷が苦手というわけじゃないんですよ?ヒート前でちょっと大きな音に敏感になっているだけで……別に雷なんか」
     怖くない、という降谷の言葉に被せるように、再び大きな雷がなった。それを聞いた降谷の肩が跳ねるのを赤井はしかと見ていた。
    「ヒート前なのか?」
    「え、ええ……数日で休暇に入るので、その前にあなたにそれを届けようと」
    「無理を押して来てくれたんだな。ありがとう。……よかったら、雷が収まるまでうちにいてくれないか?」
    「だ、だから!僕は別に!」
    「俺が心配なんだ。頼むよ」
    「うっ……わ、わかりました」
     降谷は渋々といった様子で赤井の家に上がった。赤井は自分の部屋の中に降谷がいる光景になにかがすとんと胸に収まった心地がした。ずっと塞がらないと思っていた心の隙間にピッタリのピースがはまったような、どうして今までこうしなかったのか、つい数分前に悩んでいたことすらバカバカしく思えるほどの安堵感だ。
    「コーヒーの前にシャワーを浴びたほうがいいな」
    「えっ、いや、そこまで甘えるわけには」
    「バスルームにあるものは好きに使ってくれ。着替えは俺のを用意する」
    「いいですってば!」
    「ああ、雷のせいで風呂に入るのが怖いのか」
    「ちがいますっ!!入ればいいんでしょ、入れば!!」
     観念した降谷がバスルームに入っていく。その後ろ姿はいつも庁舎で見るよりも肩の位置が低いように見えた。
    「少しは気を許してくれていると思っていいのかな、降谷くん」
     そんな独り言を漏らしながら、赤井はコーヒーの準備を始めた。インスタントコーヒーの瓶を手に持ちながら、ふと降谷の言葉を思い出した。
    「あと数日でヒートと言っていたか……カフェインはまずいんじゃないか?」
     と言っても赤井の部屋にノンカフェインコーヒーなんて気が利いたものはない。かといって、客人に白湯を出すのも気が引けた。
    「そういえば、貰い物のハーブティーがあったな……」
     戸棚を探すとパッケージの封が閉じたままのハーブティーが見つかった。『SLEEP』と書かれているから安眠を促す効果があるのかもしれない。このあと車の運転をする人間にはふさわしくないような気もしたが、あの降谷がハーブティーの効果で眠気を催すとも思えない。赤井は花の絵が描かれたその箱からティーバッグを取り出すと、これまた貰ってから一度も使っていないマグカップの中にいれた。
    「お風呂ありがとうございました……」
    「ああ、体は温まったかな……ふ、降谷くん!?」
    「え、な、なんです!?」
    「君……縮んでないか?」
    「はあ?」
     降谷は不機嫌満面の顔で赤井を見上げた。
    「あなたの服が大きいだけですけど!?」
    「俺と君はそんな体格差があったのか?」
    「ええ、そのようです。僕も着替えた時に大変な屈辱を感じました。そして今もね!」
    「すまん……あー……ハーブティーを淹れておいたよ」
    「いただきます!!」
     赤井の発言は降谷の機嫌を損ねたものの、そのせいで降谷の中から遠慮という感情は消えたようだった。赤井はローテーブルにマグカップを置き、ソファに座っている降谷の隣に腰を下ろした。
     赤井のスウェットは袖が余ってしまっていて、マグカップを持つ降谷の手をすっぽりと覆っていた。
    「ジロジロ見るなよ……」
    「俺は君のことをまだまだ知らなかったんだと思ってな」
    「それはそうでしょう。知り合って年数は経ってますが、接触した回数は多くありませんから」
    「……もったいないことをしたな」
    「えっ」
     赤井のほうを振り返った降谷の目はいつになくあどけなく見えた。庇護欲をそそられたわけじゃない。公安を取り仕切る男に秘められた純真さが赤井の心臓を鷲掴みしていた。
    「もっと君の傍にいられたらよかった」
    「な、何を言って……」
     降谷の手の中で薄い黄緑色の水面が揺れた。
    「危ないぞ」
     赤井がマグカップを取り上げると、降谷は「すみません」と小さな声で言った。
    「あの……なんで今夜はそんな優しいことを言うんですか……?」
    「え?」
    「僕が……ヒート前だから優しくするの?それともメガだから?」
    「ちがう、俺は」
    「セックスがしたいなら、していいですよ。オメガのフェロモンに充てられただけ、あなたは悪くない」
     降谷の小さな唇は赤井に許しを与えながらも、その目は雷を聞いた時と同じように怯えていた。
    「そんなことを言うな、君は」
    「あなたの嫌いなオメガです。でも僕なら手間をかけずに抱けますよ」
     そういうと降谷は赤井の右手を取って自分の下着の中に引きずり込んだ。抵抗しようと思えばできる強引さだったが、ここで拒めば二度と降谷零に触れることはできないという確かな予感があった。
    「ほら、もう濡れてる……」
     導かれた先にあった降谷の秘部はシャワーを浴びた彼の体温で温められた粘液で濡れそぼっていた。確かにこの状態ならすぐに挿入できるだろう。抑制剤を飲んでいる赤井は降谷のフェロモンに充てられることはないが、お互いに大人で合意の上ならセックスしても問題はない。
    「降谷くん……君……俺のことが好きだったのか」
    「えっ!?ち、ちがっ、ヒート前だから濡れやすいだけで!」
    「ホオ……俺はアルファだからオメガの体のことはよくわからん。だが、君が好きでもない男に下着の中に手を入れさせたりしないことは知ってる」
    「ち、ちがうっ、あなたがしたいのかと思ったから……」
    「ご親切にどうも。抑制剤が効いていても君のことをこのまま犯したいと思うぐらいには欲情してるよ。しかし、それは君がヒート前だからでも、オメガだからでもない。君が特別なんだ」
    「えっ……」
     赤井は自分を見上げた降谷の顎を捕まえると、その唇に自分のを重ねた。
    「好きだ、愛してる」
    「うそ……だって……」
    「ベータだと言ったのは君に敵意を持たれたくなかったからだが、それが逆に君を傷付けていたんだな。すまない」
    「……そうですよ。だってぼく、運命のツガイに拒まれたから一生ひとりなんだって、思って……」
    「ごめん。一生かけて償わせてくれ」
    「……いいですよ」
     降谷から抱き着かれると仄かにフェロモンの匂いがした。赤井の指先は未だに降谷の下着の中。この状況に赤井の赤井が興奮しないわけがなかった。
    「降谷くん……」
    「あっ、赤井っ、指、そこ、やっ」
    「ゆっくりする……だからこの中に……」
     赤井が指をさらに沈めると、くちゅりと湿った音が聞こえた。彼もまた興奮してくれているのだと思うと、赤井はさらに前のめりになった。そのままソファに押し倒し……
    「だ、だめっ!!」
    「ふ、降谷くん……?」
    「は、初めてのエッチはヒートでって決めてるんです!!だから、あと三日待って……」
    「君……本気で言ってるのか?さっきは俺の手を招いてくれたじゃないか」
    「あ、あれは、一回でも赤井とエッチできたらいいなって……でもツガイになってくれるなら話は別です!」
    「……まじかよ」
    「大マジです!指抜いて。ああ、こんなに濡れちゃって……ごめんね?」
    「いや、それはむしろラッキーというか……」
    「ふふ……ほっとしたらなんだか眠くなってきちゃった……」
    「ええ!?」
     赤井の下で降谷はすでに瞼を閉じようとしてた。
    「赤井、僕に何か盛った……?そんなわけないか……すうう……」
    「嘘だろ……」
     赤井はここまでセックスの雰囲気になりながらも本当に眠ってしまった降谷にしばし見入ってしまった。そういう予測不可能なところも可愛いが……
    「あ」
     赤井はローテーブルの上にあるマグカップに目をやった。マグの中のハーブティーは半分以上減っていた。
    「まさかここまでとはな……」
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    かとうあんこ

    DOODLE一度別れた赤安がバディを組んで幽霊退治(?)をする話、第三話。
    「その日のことはよく覚えてます。パパと姉貴とわたしの三人でママの誕生日プレゼントを買うために出掛けていたんです。姉貴は小学生、私は保育園に通っている頃で、パパが贔屓にしているアンティークショップに……え?名前?なんだったかなあ。随分前に倒産しちゃったから、もうありませんよ。……いえ、ママはドールハウスには全然興味なくて。アンティークショップのガラスの戸棚に飾られていたワイングラスをプレゼントすることにしたんです。それをお店のひとがラッピングしている間に、オーナーさんが『お嬢様たちにこちらはいかがですか?』と言って見せてくれたのが、そのドールハウスでした。本物の西洋のお屋敷を小さくしたみたいですごく素敵だったから、私も姉貴もすぐに気に入りました。ふたりでパパにおねだりして、買ってもらえることになったんですけど……パパがお会計している間、奥さんが、あ、オーナーの奥さんです、がこんなことを言ってたんです。『このドールハウスに人形は絶対に入れないで』って。私たちは不思議に思いましたが、奥さんがあまりに真剣な表情だったから「うん」と答えました。でも家に帰ってドールハウスを広げて、別に梱包してもらった家具を並べているうちに……人形を入れて遊びたくなったんです。ほら、子どもってダメって言われるとやりたくなるところあるじゃないですか。それに……人形がないほうが変な感じがしたんです。とても精巧にできていたから……ううん、そうじゃないな……人がいる気配がするのに誰もいない……そんな感じでした。でも、うちにあるのは着せ替え人形ばかりで、そのドールハウスのサイズにちょうどいい人形がなかったんです。そしたら姉貴が「紙のお人形を作ってドールハウスに入れよう」と言ったんです。「紙の人形なら約束を破ったことにはならないだろうから」って。私はすぐに部屋にあった画用紙に黒いマジックで女の子の絵を描いてソファに座らせました。その隣に姉貴が書いた猫の絵を置いたところで夕飯の時間になって、私たちはドールハウスをそのままにして部屋を出たんです。……あはは、大丈夫よ、真さん。子どもの頃の話だから。それに、もし何かあっても真さんが守ってくれるでしょう?……はい。そうなんです。夕飯を終えてドールハウスがある部屋に戻ってきたら、紙の人形が切られていたんです。バラバラに……。「やっぱり人形を入れたのがいけなかったのかし
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    かとうあんこ

    DONE一度別れた赤安がバディを組んで幽霊退治(?)をする第二話
    烏丸怪談②友人の話「え?僕には怪談はないのかって?う~ん、そうだなあ……僕の友人の話でもよければ。はは、そういうことが多いね。まあ、どちらでもいいじゃないか。これは友人が保育園に通っていた頃の話だ。彼はいつもお迎えが一番最後でね。母親の仕事が忙しかったんだ。彼は保育園では周りの子どもたちとうまくいってなかったから、園児が少なくない遅い時間のほうが遊びやすかった。だから、母親の迎えが遅くても気にならなかった。嬉々として居残っている彼を見て羨ましかったのか、園児のひとりが意地悪を言ったんだ。『あいつはいらない子だからお迎えが遅いんだ』って。気丈な友人もこれにはショックを受けた。いつもは独り占めできて嬉しい積み木も全然楽しくない。今すぐに母親に抱っこしてほしかった……。そんなことを考えてると、友人の前に見知らぬ男の子が現れた。『キミ、いらない子なの?』友人は当然ムッとして無視をした。ちょっとだけ泣いてたかもしれない。その寂しさを見抜いたように男の子は『じゃあ、一緒に遊ぼうよ』と言った。友人は少し悩んでから『ウン』と言った。それから二時間、彼は行方不明になった。保育園の先生はもちろん彼を探したし、お迎えに来た母親も一緒に探した。家に帰ったんじゃないか、散歩で行った公園にいるんじゃないか。いろんな場所を探したが、見つからない。いよいよ警察に連絡しようとなった時、子ども用トイレから友人が現れた。『やっと帰ってこれた』と言いながらね。二時間だけの神隠しだ。……どう?名探偵の君には物足りなかったかな」
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