おかゆ☆quiet followDOODLE夜中に目覚めるグレイのビリグレ 焦点の合わない視界に、ぼんやりとした灯りと横顔が映る。これが夢なのか現実なのか判断がつかないまま、そこにいるであろう彼の名を呼ぶ。「ビリーくん……」 ほとんどささやきのような声なのに、周りの静寂のせいかいやに響いた。当然彼も聞き留めて、そっとこちらに顔を向ける。「……グレイ? 起きてるの?」 寝言かどうか判断しかねているのだろう。その声は先ほどの自分の呼びかけに負けず劣らずさやかなもの。しかしどんなに小さくても、愛しい人に名を呼ばれれば心臓はとくんと脈打つらしい。「ビリーくんこそ……どうかしたの? お仕事?」 眠りにつく時には隣にいたはずのビリーは今、ベッド横のデスクでノートPCを開いている。目覚めた時にもあると勝手に思っていた温もりが無いことが寂しいことなのだと、またひとつ彼に教わった。「ん、ちょっとネ。急ぎで確認しなきゃいけないことができて……。ごめん、起こしちゃったよね」 暗闇に慣れてきた眼がビリーの表情を捉える。ゴーグル越しでない大きな瞳がこちらを見つめている。暗いから当然といえば当然だ。 まだモニターの灯りは少し眩しくて、ブランケットを目元まで引き上げる。「ううん、なんとなく目が覚めただけだから…………お仕事、大変なの?」 以前より数も減らしているし危険な仕事は受けなくなったと知っていても、不安が無くなるわけではない。予想外のトラブルに巻き込まれる可能性はあるし、なにより睡眠時間を減らして体調を崩したらと思うと胸がぎゅっと痛む。 そんなグレイの心中を察したのか、ビリーはちょっと困ったように笑ってPCをスリープにする。ライトの残像で白く映る視界の中で、彼が椅子から腰を上げた。立ち上がる時に椅子が立てたぎしりという音が、自分の心とシンクロしているみたいに耳に残った。 ブランケットをそっと持ち上げて迎え入れる。ビリーは慣れた動きで隣に滑り込んで、柔らかくグレイを抱きしめた。「心配しなくても大丈夫。スピードが肝心ってだけで危ない案件じゃないし。多分長引くこともないから」 やっぱり全て見透かされていて、そんなに自分は分かりやすいのかと恥ずかしくなる。「寝起きのグレイは無防備だよネ」と彼がよく言うのはこういう意味でもあるのだろうか。 こつん、と額と額を合わせて、二人の距離がゼロに近くなる。ベッドから出ていたビリーの体は思ったより冷えていて、触れ合っているところから熱を分けてあげられればいい、とまだはっきりしない頭で考えた。「ビリーくん」「うん?」「……僕は、ビリーくんのお仕事は手伝えないけど……できることがあればなんでも言ってね」 チームメイトとして、恋人として。彼の力になることならなんだって厭いはしない。彼が望んでくれることが、そのまま自分の望みになる。 目の前の瞳がすっと細められ弧を描く。印象的な彼の瞳が喜びの表情を見せるこの瞬間がなによりも好きだ。何度見たって飽きることはなくて、もっと見たいと貪欲になってしまう。「ありがとう、グレイ」 触れるだけのキスに首筋がくすぐったくなる。ビリーがくれる温もりは真綿の網のようにグレイを捕えて離さない。「……もうとっくに、色んなものをもらってるよ」 慈しむように紡がれる言葉が本物だと、今ははっきりと分かる。互いに求めあう水と器のように、一緒にいられることがただただ愛おしい。 あたたかな幸福感に包まれたまま、合図もなく二人は眼を閉じた。Tap to full screen .Repost is prohibited Let's send reactions! freqpopularsnackothersPayment processing Replies from the creator Follow creator you care about!☆quiet follow おかゆDOODLEパトロール終わりのビリグレ 五月某日。最近のニューミリオンは、季節外れの好天が続いている。それに伴って今日もこの時期の平均気温よりも大幅な最高気温を記録している。 「あっつ……」「本当にね……ビリーくん、お疲れさま……」「グレイもネ」 そんな日でももちろんヒーローの仕事は待ってくれない。本日午後のパトロールは、グリーンイーストの海岸地区。日差しを遮るものは無い。潮風と自分の汗でベタつく。一方で、ビーチには楽しそうにはしゃぐ住民や観光客。パートナーがグレイだということ以外、コンディションは最悪だ。 まあ、マジックを披露した時に、バケーション気分で財布の紐が緩くなった見物客から飲み物の差し入れをもらったのは悪くなかったけれど、パトロールを終えてエリオスタワーに帰還する頃には、摂った水分もすっかり汗になってしまった。「はぁ……早く部屋に戻ってシャワーを浴びたいヨ」 汗でしっとりしてしまったシャツの襟をつまんで風を入れる。全館空調で適温に保たれているから身体が冷えすぎることはないだろうが、このままでいるのは耐えられるはずもない。「そうだね。あ、シャワー、ビリーくんが先でいいからね」 タイミング良く降 1732 おかゆDOODLE夜中に目覚めるグレイのビリグレ 焦点の合わない視界に、ぼんやりとした灯りと横顔が映る。これが夢なのか現実なのか判断がつかないまま、そこにいるであろう彼の名を呼ぶ。「ビリーくん……」 ほとんどささやきのような声なのに、周りの静寂のせいかいやに響いた。当然彼も聞き留めて、そっとこちらに顔を向ける。「……グレイ? 起きてるの?」 寝言かどうか判断しかねているのだろう。その声は先ほどの自分の呼びかけに負けず劣らずさやかなもの。しかしどんなに小さくても、愛しい人に名を呼ばれれば心臓はとくんと脈打つらしい。「ビリーくんこそ……どうかしたの? お仕事?」 眠りにつく時には隣にいたはずのビリーは今、ベッド横のデスクでノートPCを開いている。目覚めた時にもあると勝手に思っていた温もりが無いことが寂しいことなのだと、またひとつ彼に教わった。「ん、ちょっとネ。急ぎで確認しなきゃいけないことができて……。ごめん、起こしちゃったよね」 暗闇に慣れてきた眼がビリーの表情を捉える。ゴーグル越しでない大きな瞳がこちらを見つめている。暗いから当然といえば当然だ。 まだモニターの灯りは少し眩しくて、ブランケットを目元まで引き上げる。 1439 おかゆDONEルーキー研修をまもなく終えるビリグレ。たぶん付き合ってます。8章要素が多少ありますので未読の方ご注意ください。グレイ・リヴァースが憧れのヒーローになって三年。もうすぐ新しいルーキーが選抜され、第十三期研修チームは解散となる。 長いようで短かった共同生活も、まもなく終わろうとしていた。 「うーん、入り切るかなぁ……?」 いくつもの段ボールと向き合いながら、僕は悩んでいた。数週間後に迫ったチームの解散と同時に、当然この部屋も引き払わなければならない。間際になって焦らないように少しずつ荷物をまとめているのだけれど、最後まで仕舞えない生活必需品や服を入れていないにも関わらず、すでに想定していた荷物の数を超えてしまいそうだ。ビリーくんと過ごす中で多少片付けはできるようになったとは言え、三年間という時間は、新たなお気に入りの本やフィギュア、ゲームが棚をいっぱいにするには十分な時間だったらしい。 かといって実家の部屋だって決してスペースに余裕があるとは言えない。自分が物を溜め込みがちなのは分かっていたけれど、この状況には流石に呆れてしまう。 ちらりとすぐ隣のビリーくんの方を見れば、相変わらずその居住空間はすっきりと整頓されている。三日後に引っ越せと言われたってできてしまいそうだ。 思えば、彼 5355 おかゆDOODLE8章翌朝の気持ちを代弁してもらいました。ごりごりにネタバレです。ビリグレ幸せになってくれてありがとう。 1531