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    おかゆ

    ビリグレと最近は时光代理人

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    おかゆ

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    ルーキー研修をまもなく終えるビリグレ。
    たぶん付き合ってます。
    8章要素が多少ありますので未読の方ご注意ください。

    グレイ・リヴァースが憧れのヒーローになって三年。もうすぐ新しいルーキーが選抜され、第十三期研修チームは解散となる。
     長いようで短かった共同生活も、まもなく終わろうとしていた。

     
    「うーん、入り切るかなぁ……?」
     いくつもの段ボールと向き合いながら、僕は悩んでいた。数週間後に迫ったチームの解散と同時に、当然この部屋も引き払わなければならない。間際になって焦らないように少しずつ荷物をまとめているのだけれど、最後まで仕舞えない生活必需品や服を入れていないにも関わらず、すでに想定していた荷物の数を超えてしまいそうだ。ビリーくんと過ごす中で多少片付けはできるようになったとは言え、三年間という時間は、新たなお気に入りの本やフィギュア、ゲームが棚をいっぱいにするには十分な時間だったらしい。
     かといって実家の部屋だって決してスペースに余裕があるとは言えない。自分が物を溜め込みがちなのは分かっていたけれど、この状況には流石に呆れてしまう。
     ちらりとすぐ隣のビリーくんの方を見れば、相変わらずその居住空間はすっきりと整頓されている。三日後に引っ越せと言われたってできてしまいそうだ。
     思えば、彼は初めからそうだった。余計なものは持たないし、必要がないと判断したら潔く処分できる。いつだって身軽で、さっぱりとしていて。身ひとつだと不安になってあれもこれもと抱えてしまう僕とは正反対。
     そんな彼が使っている棚には、僕がプレゼントしたり二人で出かけた時に一緒に選んで買ったりしたものが整然と並べられていて。まるで自分が彼の一部分を独占しているようで、嬉しいような恥ずかしいようなくすぐったい気持ちになる。
     何もかも正反対に見える僕たちが今では互いになくてはならない存在になったのだから、人間関係というのは不思議だ。
     ビリーくんはPCとにらめっこをしながら、時々うーん、と考え事をしている。行き詰まった荷物整理に嫌気がさして、気分転換すれば片付けも進むかも、と自分に言い訳をした。
    「ビリーくん、何か悩みごと……? あ、お仕事のことだったら言わなくていいけど」
     今でも彼の「お仕事」には口を出さないようにしている。僕が気にかけたところで役には立たないし、過剰に心配すると却って心配されてしまう。なにより、以前のように危険を伴う可能性がある仕事は極力避けていると言ってくれた。それを信じているから怖くはない。
    「たいしたことじゃないヨ〜。新しい部屋のこと色々考えてただけ」
    「そっか……僕も片付けてるけど、中々大変で」
     自嘲気味に笑いながら、ちくりと刺す胸の痛みに気付かないふりをする。
     この生活が終わってしまうのは分かっていたこと。それでも、どうしようもない寂しさと「ヒーロー」として一人になる不安は、期限が近づくにつれてどんどん膨らんで、僕の心の隅々まで広がっていくようだ。
     今までは当たり前だった「ただいま」も「おかえり」も、自分の日常から失われてしまうなんて。正直耐えられる気がしないけれど、こればかりはどうしようもない。
     いい大人がこんなことで落ち込むなんて、あまりに情けなくてビリーくんには言えないけれど。 
    「ねぇねぇ、グレイはどれがいいと思う?」
     突然、ビリーくんがディスプレイをこちらに向ける。そこに映し出されているのはどうやらインテリアショップのウェブサイトだ。様々な色や大きさのローテーブルが、画面いっぱいに並んでいる。
    「えっと……リビングに置くの? ソファの色とかは——」
    「え、ソファはこれでよくない? あ、それとももっと大きいのにする? 確かに三年も使ったからちょっとくたびれてきてるしネ」
     やや食い気味にきたビリーくんの答えに疑問符が浮かぶ。これ、というのはもちろん、二人の部屋の真ん中に置かれたソファ。ヒーローになってすぐ、共同生活が始まったころに買った物だ。置き場所の関係で諦めようとした僕に、ビリーくんが「真ん中に置けばいい」と言ってくれた、大事な思い出と一緒に、当然僕が引き取るものだと思っていた、のだが。
     いやその前に、先程の言葉には違和感がありはしないか。だって、あの口ぶりはまるで——。
    「じゃあコレはグレイの部屋に置くとして、リビングは二人でゆったり座れる大きさのにしよっか」
    「ちょ、ちょっと待ってビリーくん……! ぼ、僕の部屋って、その……え、新しい部屋ってビリーくんの、だよね?」
    「うん、ボクちんと、グレイの新居!」
     ビリーくんは笑顔ではっきりと言う。情けないことに僕は、言葉の意味を理解できずにぐるぐると思考を巡らせるので精一杯だ。
     ニコニコ顔のビリーくんに悪いと思いつつも、思い切って質問する。
    「えっと……新居、って……?」
     何の話をしてるの、とまでは言えずに口ごもる。僕も三年でそれなりに成長したはずだけど、肝心なところで臆病になる癖は中々直ってくれない。なぜかビリーくんの顔を見るのが怖くて、視線を下に落とした。
    「……グレイ。まさか、覚えてナイ?」
     いつもより低いトーンの声に思わず身体が強張る。どうしよう。また怒らせてしまっただろうか。
    「ご、ごめ——」
    「ヒドイよ、グレイ‼︎」
     突然、ビリーくんが声を上げる。PCを机に置いてそのまま突っ伏して、「うわーん!」と泣き真似をしている。
     彼のそんな様子には何度か出会ったことがある。本当に泣いてはいないのを知っていても、どうしたって居心地は悪い。
     しかしどうやら、本気で怒ってはいないみたいでほっとする。それでもひどいと言われてしまうことを僕が言ってしまったのは確かだ。そっと近づいてビリーくんの肩にそっと手を置く。
    「ビリーくん……?」
    「先週、研修期間が終わったら一緒に住もうって約束したのに……。部屋だっていくつか目星つけてるんだヨ⁉︎」
     え、と思わず声が漏れる。
     一緒に住む?
     僕と、ビリーくんが?
    「ビ、ビビビ、ビリーくんっ⁉︎ そんな、そんな夢みたいな話、僕っ……!」
    「一緒に住も? って言った時はあんなに嬉しそうだったくせに……。オイラのことを弄んで楽しんでたノ?」
     口にする言葉は不穏なくせに、いつの間にかビリーくんは困り顔ながらちょっと楽しげだ。一方で僕はいっぱいいっぱいで、顔に熱が集まっていくのを止められない。
     先週、先週と必死で考えてふと、数日前に二人でご飯を食べに行った時のことを思い出す。あの時は、研修が終わる寂しさを考えたくなくてついお酒を飲み過ぎてしまった。前後不覚になるほどではなかったものの、細かい会話の内容は正直言って覚えていない。
     そういえば、翌朝のビリーくんがやけにご機嫌だった。
    「ああああの、ビリーくん、もしかして僕酔っ払ってとんでもないことを……!」
    「グレイにとって、オイラは所詮その程度の相手なんだネ……」
    「ち、違っ……!」
     完全に遊ばれている。それが分かっても彼に口で敵うわけもなく、僕はただあたふたと両手を動かしてしまう。本当に情けない。
    「ちゃんとバディも連れてこられるようにペット可の所探して……」
    「ま、待ってビリーくん!」
     やっとのことで絞り出した大声でビリーくんの言葉を遮ると、待ってましたと言わんばかりにこちらを見つめるスカイブルーとばちりと視線がかち合った。
    「あの……ほ、本当に? い、一緒に住んでくれる、って……夢じゃないよね?」
     期待と不安でうるさい心臓を落ち着かせて恐る恐る尋ねてみる。にやりと笑う彼の口元から、特徴的な八重歯がチラリとのぞいた。
    「トーゼン。こんなこと冗談で言わないヨ」
     左胸は相変わらずばくばくと鳴っている。音が聞こえてしまうんじゃないかと思える沈黙を破るのは、いつだってビリーくんの方だ。
    「……改めて、グレイ。俺と一緒に住もう? 研修が終わっても、配属が別になっても……たとえヒーローじゃなくなっても、ずっと」
     ぶわ、と全身が粟立つ。嬉しくてたまらない時もこんな風に体は震えるものなのか。
    「……僕なんかで、いいの?」
    「グレイがいいの」
     間髪入れずに返された言葉にじわりと視界が滲む。離れがたいと思っていたのは自分だけじゃなかったのだ。
     何か言おうとしても、伝えたい台詞は喉で詰まって音にならない。「うん」と言う代わりに、何度も何度も、壊れたおもちゃみたいに深く頷く。
     必死で涙を堪えているのが恥ずかしくて俯いていると、そっとビリーくんが抱きしめてくれる。その温もりがまた涙を誘って、うう、と小さく唸って彼の肩口に顔を埋めた。
     
    「……よかった」
     ふと、耳元で小さくビリーくんが呟く。その声は心なしか震えている。抱きしめる力を少し強めて、さらに言葉を重ねる。
    「実は、ちょっと緊張してた……。あの時グレイは嬉しそうだったけど、素面になったら遠慮して、断られちゃったらどうしようって」
    「……っ、そんなこと、あるわけない」
     反論しながら顔を上げると、そこには眉尻を下げて心底嬉しそうに微笑むビリーくんの顔。けれど目元にはかすかなためらいも浮かんでいて、ああ、本当に不安だったんだと分かってしまう。
    「ぼ、僕は……もうすぐこの生活が終わると思うと、すごく寂しくて。でも、ビリーくんだってせっかくまたお父さんと暮らせるし、邪魔しちゃ悪いって思って……」
     必死で我慢してた、なんてことはあまりにも格好悪くて言葉にできないけれど。口に出さなくても聡い彼にはきっと伝わってしまうだろう。
     この際どうにでもなれ、と若干ヤケになって心の中にあった澱みを吐き出していく。
    「……でも、きっと無理だった。た、ただいまって言ったらビリーくんにおかえりって言ってほしいし、ビリーくんが言ったら僕が一番に言いたいんだ」
    「うん」
    「おはようだって、おやすみだって。応えてくれるのはビリーくんがいい。全部、全部……っ!」
     一息に言ってはっとする。こんなのはただの独占欲、子供じみたわがままだ。いくらビリーくんが泣きそうなくらいの提案をしてくれたからって、こんな醜い感情までぶちまけてしまうなんて。六つも年上なのに、彼の前ではいつだってこうだ。
     沈黙が怖くて、再び顔をビリーくんの肩に埋める。すると、背中にあった手をすっと頭に添えて、優しく撫でてくれた。
     何度も、何度も。怖がることなんてないよ、というかのように。
     その心地よさに、張り詰めていた気持ちがゆっくり弛緩する。彼が僕に触れる時、さりげなく手袋を外すようになったのはいつごろだっただろう。
    「グレイ、ありがとね」
    「……うぅ、情けない……」
    「どこが? 俺だけじゃなくてお父さんのことも気遣ってくれて……グレイは本当に優しいネ」
     違う。結局、僕に勇気が無かっただけだ。離れたくないと、一緒にいたいと縋りついて、受け入れてもらえる自信が無かった。
     そうやってまた、ビリーくんが踏み越えてきてくれるのを待っている。「自分がどうするかは自分で決める」なんて決心しても、彼のことが大切になればなるほど二の足を踏んでしまうことが増えていく。
    「グレイ」
     ぎゅ、と僕を抱きしめなおしてビリーくんが言う。
    「俺だっておんなじ。グレイがおかえり、って言ってくれる場所が、とっくに俺の帰るところなんだよ」
     優しくて熱のこもった言葉に、引きかけていた涙が再び溢れ出す。
     ああ、だめだ。僕が泣くと彼を困らせてしまう。そう思うのに、涙は堰を切ったように止まってくれない。
    「ビ、ビリー……くんっ……」
     嗚咽が漏れて声が詰まる。
     いつものように「泣かないで」と言う声は穏やかで、いつまでも浸っていたいと思えるほど温かい。
    「ほら、グレイ。お願いだから泣き止んで? 一緒にテーブル選んでくれないかな」
    「っ……うん」
    「あと、大きめのソファとサイドボードと……ベッドはどうしよっか? 俺は一緒でも全然構わないんだけど」
    「……ビリーくんがいいなら、一緒がいい」
    「本当に⁉︎ やった〜☆」
     きっと、僕を泣き止ませようとしているのだろう。わざと戯けた調子のビリーくんに、だんだん心がほぐれていくのが分かる。
    「あ、バディのベッドも用意しなきゃ! パイセンには敬意を表して素敵なのを選ばないないとネ」
    「ふふっ……」
     ビリーくんがひとつひとつ紡ぐ言葉に、あやふやだった未来の輪郭が少しずつはっきりしてくる。彼の言葉には、いつだって僕に前を向かせてくれる魔法がかかっているみたいだ。
    「……大丈夫?」
    「うん、ごめんね……いつまでたっても情け無いままで……」
    「だから、そんなことないってば。……楽しみだね、グレイ」
    「……うん。ありがとう、ビリーくん……大好きだよ」
    「‼︎ ……俺も。大好きだヨ、グレイ」
     ようやく涙が止まった顔を上げて視線を合わせる。僕を見つめる眼差しは愛おしげで慈しみに溢れていて、自分もきっとこんな眼で彼を見ているんだと思うと少し照れくさい。
     
     ——ああ、でも、幸せだ。これ以上ないくらい。

     ゆっくりとビリーくんの顔が近づいてくる気配に、そっと眼を閉じた。
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    おかゆ

    DOODLEパトロール終わりのビリグレ 五月某日。最近のニューミリオンは、季節外れの好天が続いている。それに伴って今日もこの時期の平均気温よりも大幅な最高気温を記録している。
     
    「あっつ……」
    「本当にね……ビリーくん、お疲れさま……」
    「グレイもネ」
     そんな日でももちろんヒーローの仕事は待ってくれない。本日午後のパトロールは、グリーンイーストの海岸地区。日差しを遮るものは無い。潮風と自分の汗でベタつく。一方で、ビーチには楽しそうにはしゃぐ住民や観光客。パートナーがグレイだということ以外、コンディションは最悪だ。
     まあ、マジックを披露した時に、バケーション気分で財布の紐が緩くなった見物客から飲み物の差し入れをもらったのは悪くなかったけれど、パトロールを終えてエリオスタワーに帰還する頃には、摂った水分もすっかり汗になってしまった。
    「はぁ……早く部屋に戻ってシャワーを浴びたいヨ」
     汗でしっとりしてしまったシャツの襟をつまんで風を入れる。全館空調で適温に保たれているから身体が冷えすぎることはないだろうが、このままでいるのは耐えられるはずもない。
    「そうだね。あ、シャワー、ビリーくんが先でいいからね」
     タイミング良く降 1732

    おかゆ

    DOODLE夜中に目覚めるグレイのビリグレ 焦点の合わない視界に、ぼんやりとした灯りと横顔が映る。これが夢なのか現実なのか判断がつかないまま、そこにいるであろう彼の名を呼ぶ。
    「ビリーくん……」
     ほとんどささやきのような声なのに、周りの静寂のせいかいやに響いた。当然彼も聞き留めて、そっとこちらに顔を向ける。
    「……グレイ? 起きてるの?」
     寝言かどうか判断しかねているのだろう。その声は先ほどの自分の呼びかけに負けず劣らずさやかなもの。しかしどんなに小さくても、愛しい人に名を呼ばれれば心臓はとくんと脈打つらしい。
    「ビリーくんこそ……どうかしたの? お仕事?」
     眠りにつく時には隣にいたはずのビリーは今、ベッド横のデスクでノートPCを開いている。目覚めた時にもあると勝手に思っていた温もりが無いことが寂しいことなのだと、またひとつ彼に教わった。
    「ん、ちょっとネ。急ぎで確認しなきゃいけないことができて……。ごめん、起こしちゃったよね」
     暗闇に慣れてきた眼がビリーの表情を捉える。ゴーグル越しでない大きな瞳がこちらを見つめている。暗いから当然といえば当然だ。
     まだモニターの灯りは少し眩しくて、ブランケットを目元まで引き上げる。 1439

    おかゆ

    DONEルーキー研修をまもなく終えるビリグレ。
    たぶん付き合ってます。
    8章要素が多少ありますので未読の方ご注意ください。
    グレイ・リヴァースが憧れのヒーローになって三年。もうすぐ新しいルーキーが選抜され、第十三期研修チームは解散となる。
     長いようで短かった共同生活も、まもなく終わろうとしていた。

     
    「うーん、入り切るかなぁ……?」
     いくつもの段ボールと向き合いながら、僕は悩んでいた。数週間後に迫ったチームの解散と同時に、当然この部屋も引き払わなければならない。間際になって焦らないように少しずつ荷物をまとめているのだけれど、最後まで仕舞えない生活必需品や服を入れていないにも関わらず、すでに想定していた荷物の数を超えてしまいそうだ。ビリーくんと過ごす中で多少片付けはできるようになったとは言え、三年間という時間は、新たなお気に入りの本やフィギュア、ゲームが棚をいっぱいにするには十分な時間だったらしい。
     かといって実家の部屋だって決してスペースに余裕があるとは言えない。自分が物を溜め込みがちなのは分かっていたけれど、この状況には流石に呆れてしまう。
     ちらりとすぐ隣のビリーくんの方を見れば、相変わらずその居住空間はすっきりと整頓されている。三日後に引っ越せと言われたってできてしまいそうだ。
     思えば、彼 5355

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    かも🦆

    TRAINING月夜の杞憂(ビリグレ ?)

    夜中に不安になっちゃう🍬。🧁はほぼ寝てます。
    付き合ってない世界線なのでカプ要素は薄いですが、ビリグレの人間が書いております。
    短い、そして8章ネタバレ注意!
    かちかち、という時計の針の音とグレイの静かな寝息が部屋を満たす。
    ビリーは目を瞑りながらそれを聞いていた。
    そして時折、ちらりと時計を見ては小さくため息をついた。
    その時刻は現在3時を指しており、普段ならとっくに夢の中であるため、なかなか眠れない事実にビリーは焦っていた。
    何より、その眠れない原因が分からないのだ。

    (早く寝ないとネ…)

    そう思うも、ただただ時間が過ぎていく一方。
    今日はヒーローとしての仕事は無いものの、グレイとリトルトーキョーへ行こうと約束していた。
    早く寝なければ寝不足で楽しめない。
    ビリーはそれを、友だちとの大切な時間を無駄にしてしまうことを懸念していたのだ。
    ふと、グレイの方へ目を遣ると少し大きめの体を丸めるようにして眠っている。
    その姿が何とも愛おしく、顔を見たくなったビリーはそっと立ち上がり、2人で買ったソファ越しのグレイのスペースへ入って行った。
    自分のために、と綺麗にされたそこにしゃがみこみ、グレイの顔をじっと眺める。
    その表情は普段よりも幾分穏やかで、見ているビリーの心もスっと穏やかになっていくのがわかった。
    そのままグレイを起こさないようにそっと 1394

    mamedaihuku228

    DONEビリグレ小説②
    遠距離恋愛みたいなことしてるビリグレ。
     まだ肌寒さが残る早朝。珍しく薄い霧がエリオスタワーを包み込み、ロビーにいたビリーは少しでも寒さがマシになるよう、黒の手袋越しに両手を摩っては温めるように息を吐いた。ヒーローである事を示す黒を基調とした制服は、もうそろそろ上着を脱いでもいいぐらいの季節だが、今朝の気温で半袖は身体を冷やしてしまうし、かといって昼になれば長袖ではうっすらと汗を掻いてしまう。なんとも複雑な季節である。
    誰もが憧れるヒーローの居住地でもあるのだから、タワーの中ぐらい常に適切な温度を保ってくれればいいのだが、エコだとかなんとか環境とやらで、ある一定の時間はロビーなどの一部の室内機は切られているようだ。前にジャックとジャクリーンが言っていた。
     そんな事をぼんやりと考えながら、受付もいない無機質な空間のロビーで、ビリーは静寂に包まれながらジッと待っていた。
     前に届いたのは二日前。その前は四日前。そのもっと前はいつだったか。指折り数えるのも嫌になってしまった。
    受付の椅子に適当に座って、スマホのアプリ画面をタッチして、ログインボーナスを受け取る。そして日課のミッションをこなし、イベント限定のガチャを引く。もうそれ 8219

    かも🦆

    DONE「青空」(ビリグレ)

    お題【はじめて】【幸福】で参加させて頂きました〜!未来捏造含みます。
    🧁がはじめて🍭の目を見た日のお話。
    同室の彼はいつもゴーグルを着けている。
    普段は鮮やかな髪の色と同じオレンジ色、ヒーロースーツに着替えると黄緑色のゴーグルに変わっていたりする。
    さらに、寝る時にはアイマスクを着ける徹底ぶりで、僕はその瞳にコンプレックスがあるのかなと思っていた。
    だから、案外あっさり彼の瞳を見ることが出来たあの時はとても驚いたんだ。






    「あ……」
    「キャー!グレイのえっち♡」
    「はわ…ご、ごめんね?」

    浴室にスマホを忘れたことに気づいて、取りに行くとお風呂上がりのビリーくんがそこに居た。
    白い肌がまだ少し赤く火照っていて、目のやり場に困っちゃったのは内緒。
    それよりも、僕はビリーくんの瞳に目がいってしまった。
    そこでハッとする。
    あんなに徹底して隠していたビリーくんの瞳を悪気は無いけど見てしまった。
    僕はビリーくんとは対照的に真っ青になった。

    「あぅ……」
    「グレイ?どうしたノ〜?」
    「その……ほんとに、ごめん…ゴーグル着けてないとこ、見ちゃって…」

    そんな僕の様子にすぐ気づいたビリーくんはいつものように気にかけてくれて、少し冷静になれた僕は改めて謝ることが出来た。
    恐る恐るビリーくんを 1320