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    おかゆ

    ビリグレと最近は时光代理人

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    おかゆ

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    パトロール終わりのビリグレ

     五月某日。最近のニューミリオンは、季節外れの好天が続いている。それに伴って今日もこの時期の平均気温よりも大幅な最高気温を記録している。
     
    「あっつ……」
    「本当にね……ビリーくん、お疲れさま……」
    「グレイもネ」
     そんな日でももちろんヒーローの仕事は待ってくれない。本日午後のパトロールは、グリーンイーストの海岸地区。日差しを遮るものは無い。潮風と自分の汗でベタつく。一方で、ビーチには楽しそうにはしゃぐ住民や観光客。パートナーがグレイだということ以外、コンディションは最悪だ。
     まあ、マジックを披露した時に、バケーション気分で財布の紐が緩くなった見物客から飲み物の差し入れをもらったのは悪くなかったけれど、パトロールを終えてエリオスタワーに帰還する頃には、摂った水分もすっかり汗になってしまった。
    「はぁ……早く部屋に戻ってシャワーを浴びたいヨ」
     汗でしっとりしてしまったシャツの襟をつまんで風を入れる。全館空調で適温に保たれているから身体が冷えすぎることはないだろうが、このままでいるのは耐えられるはずもない。
    「そうだね。あ、シャワー、ビリーくんが先でいいからね」
     タイミング良く降りてきた、居住フロア直通のエレベーターのボタンを押しながらグレイが言う。潔癖の気があると伝えてから、グレイはこうしてさりげない気遣いをしてくれることが増えた。もしかしたらちょっと敬遠されるかもと思っていたから、良い意味で期待を裏切られた形だ。
     ただし、ひとつ弊害もあったけれど。
    「ありがとネ、グレイ」
    「お、お礼を言われるようなことじゃ無いよ……」
     照れ隠しなのか、グレイは視線を落として少しだけうつむく。俺と同じくパトロールに励んだから、彼ももちろん汗をかいていて、色白のうなじに長めの襟足が張り付いている。
     
     それを見た瞬間。脳裏に浮かんだものは、仄暗い灯りの中に浮かび上がる白い背中。うっすらと汗ばんで吸い付くような肌。切れぎれになりながらも俺を求めて名前を呼ぶ甘い声。
    (……って、俺っち何考えてるの⁉︎)
     咄嗟に軽く頭を振って邪念を追い払おうとするけれど、一度浮かんだイメージはまぶたの裏にこびりついて離れない。グレイが何事かとこちらを見たから、猛スピードで上昇するエレベーターに狂った三半規管を整えるフリをする。
    (あー……どうしよ、コレ)
     気を逸らそうとしても、ここはふたっりきりの密室。隣のグレイを見れば、目線の高さにあるのはグレイの首筋。6㎝という身長差をこれほど恨めしく思ったのは初めてかもしれない。
    「……グレイ」
     思考がぐるぐるとまとまらないのは、暑さの中のパトロールのせいか、それとも内側の熱のせいか。考えるのも面倒になって、開き直ってちょっとした悪戯を仕掛けてみる。
    「ビリーくん、どうかし——」
     
     振り返るのを待たずに、グレイの首筋にすん、と顔を近づける。「ひあっ⁉︎」と可愛い声をあげて後ずさろうとする彼の腕を軽く掴んで引き戻す。
     鼻腔をつくのは、むせ返るようなグレイの香りと、ほんの少しの潮の香り。
    「び、ビリーくんっ⁉︎ ああああの、僕、今汗かいてて汚いよっ⁉︎」
     そう、これが『弊害』。グレイのことを汚いだなんて少しも思わないのに、彼は前より触れ合うことに過敏になってしまった。気遣いは嬉しいけれど、あんまり遠慮されるとそれはそれで気に食わない。こんなの、ただの我儘だとは分かっていても、そう思ってしまうものはしょうがない。
    「汚くなんかないってば。……ンッフッフ〜グレイの匂いがする〜」
     わざと意地悪くそう言えば、目の前の耳朶がみるみるうちに赤く染まる。こういう初心なところは、いつまで経っても変わらない。
    「ビリー、くん……エ、エレベーター、もう着いちゃうからっ……!」
     その声に、名残惜しさを感じたのは都合の良い思い込みだろうか。恥ずかしがり屋の恋人のために離れてあげる前に、もうひとつ小さな悪戯をする。
    「仕方ないなぁ……戻ってシャワー浴びたら、い〜っぱいイチャイチャしようね☆」
     うう、と唸って縮こまるグレイの頬に軽くキスをしたその時、チャイムと共にエレベーターはゆっくり動きを止めた。
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    おかゆ

    DOODLEパトロール終わりのビリグレ 五月某日。最近のニューミリオンは、季節外れの好天が続いている。それに伴って今日もこの時期の平均気温よりも大幅な最高気温を記録している。
     
    「あっつ……」
    「本当にね……ビリーくん、お疲れさま……」
    「グレイもネ」
     そんな日でももちろんヒーローの仕事は待ってくれない。本日午後のパトロールは、グリーンイーストの海岸地区。日差しを遮るものは無い。潮風と自分の汗でベタつく。一方で、ビーチには楽しそうにはしゃぐ住民や観光客。パートナーがグレイだということ以外、コンディションは最悪だ。
     まあ、マジックを披露した時に、バケーション気分で財布の紐が緩くなった見物客から飲み物の差し入れをもらったのは悪くなかったけれど、パトロールを終えてエリオスタワーに帰還する頃には、摂った水分もすっかり汗になってしまった。
    「はぁ……早く部屋に戻ってシャワーを浴びたいヨ」
     汗でしっとりしてしまったシャツの襟をつまんで風を入れる。全館空調で適温に保たれているから身体が冷えすぎることはないだろうが、このままでいるのは耐えられるはずもない。
    「そうだね。あ、シャワー、ビリーくんが先でいいからね」
     タイミング良く降 1732

    おかゆ

    DOODLE夜中に目覚めるグレイのビリグレ 焦点の合わない視界に、ぼんやりとした灯りと横顔が映る。これが夢なのか現実なのか判断がつかないまま、そこにいるであろう彼の名を呼ぶ。
    「ビリーくん……」
     ほとんどささやきのような声なのに、周りの静寂のせいかいやに響いた。当然彼も聞き留めて、そっとこちらに顔を向ける。
    「……グレイ? 起きてるの?」
     寝言かどうか判断しかねているのだろう。その声は先ほどの自分の呼びかけに負けず劣らずさやかなもの。しかしどんなに小さくても、愛しい人に名を呼ばれれば心臓はとくんと脈打つらしい。
    「ビリーくんこそ……どうかしたの? お仕事?」
     眠りにつく時には隣にいたはずのビリーは今、ベッド横のデスクでノートPCを開いている。目覚めた時にもあると勝手に思っていた温もりが無いことが寂しいことなのだと、またひとつ彼に教わった。
    「ん、ちょっとネ。急ぎで確認しなきゃいけないことができて……。ごめん、起こしちゃったよね」
     暗闇に慣れてきた眼がビリーの表情を捉える。ゴーグル越しでない大きな瞳がこちらを見つめている。暗いから当然といえば当然だ。
     まだモニターの灯りは少し眩しくて、ブランケットを目元まで引き上げる。 1439

    おかゆ

    DONEルーキー研修をまもなく終えるビリグレ。
    たぶん付き合ってます。
    8章要素が多少ありますので未読の方ご注意ください。
    グレイ・リヴァースが憧れのヒーローになって三年。もうすぐ新しいルーキーが選抜され、第十三期研修チームは解散となる。
     長いようで短かった共同生活も、まもなく終わろうとしていた。

     
    「うーん、入り切るかなぁ……?」
     いくつもの段ボールと向き合いながら、僕は悩んでいた。数週間後に迫ったチームの解散と同時に、当然この部屋も引き払わなければならない。間際になって焦らないように少しずつ荷物をまとめているのだけれど、最後まで仕舞えない生活必需品や服を入れていないにも関わらず、すでに想定していた荷物の数を超えてしまいそうだ。ビリーくんと過ごす中で多少片付けはできるようになったとは言え、三年間という時間は、新たなお気に入りの本やフィギュア、ゲームが棚をいっぱいにするには十分な時間だったらしい。
     かといって実家の部屋だって決してスペースに余裕があるとは言えない。自分が物を溜め込みがちなのは分かっていたけれど、この状況には流石に呆れてしまう。
     ちらりとすぐ隣のビリーくんの方を見れば、相変わらずその居住空間はすっきりと整頓されている。三日後に引っ越せと言われたってできてしまいそうだ。
     思えば、彼 5355