花は蕾 花火を見終わったあと、僕たちは野田のおすすめの店で寿司を堪能した。職人の手で握られた寿司は、どれも見た目が美しくて味も良かった。
「どうだった?」
野田が得意げに微笑む。
唐仁とジャック・ジャーは目を輝かせて、口々に「あれは初めて食べた」とか「サーモンが絶品だった」とか感想を言った。美味しいものは人の顔を明るくする。
「秦风は?」
野田は微笑みを浮かべたまま、僕を見上げていた。頷いて見せれば、「良かったぁ」と眉と目尻がくしゃりと一層下がる。その顔を見ると胸が妙な音をたてた気がして、誤魔化すように目を逸らした。
「どうかした?」
「何でもない。さっき少し飲んだ日本酒がまわったかも」
小さく首を振って歩き出す。野田は黙って隣に並んだ。後ろから、残りの二人が追ってくる。
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