白刃が閃いた。
月並みだが、そう表現するほかない。
東方の国、ドマの剣士、だったか。キモノを着た男は東方風の名をわざわざ名乗りあげ、帝国兵とそれを率いる第XIV軍団幕僚長のネロ・トル・スカエウァに刀を向けた。
ドマが属州になってから、こういった手合いは先の戦いでかなり減ったと思っていたが、石をひっくり返せば虫が飛び出してくるように、まだまだ帝国へ奉仕することを良しとせず、隊列に加わるように、と手を出せばこうやって歯向かってくる人民も多い。
いや、そもそも服従を良しとしたことなどないか。
家を燃やされ、村を追い立てられようとしている人々が、心から服従などするはずもない。
ネロは分厚いフルフェイスアーマーの内側で、口角を上げた。
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