恋心を忘れる魔法薬を飲んで7年分の記憶を失うジェイドの話【最終話】 ラウンジのシフトへ向かう前、放課後の魔法薬学室で、ジェイドは日課となったきのこの観察記録を付けていた。
記憶を失ったばかりの頃はなぜ自分がそんなものに興味を持っていたのか理解できなかったが、熱心に育てていたものを放置するのも忍びないと観察を続ける内にすっかりその虜になってしまった。
本日も発育状況は良好。
きのこを持ち帰るとフロイドは嫌がるが、そろそろ食べ頃だなとジェイドは満足げにうっとりと微笑む。
そして記録を終えた日誌を閉じると、その瞬間朝のことを思い出してジェイドは小さなため息を吐いた。
あんな事を言うつもりじゃなかった。
アズールの側に居られるならそれ以上何も望まないと言ったのは自分なのに、理解してくれなくてもいいと言いながら、許して欲しいだなんて。
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