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    藍沢🦕

    @aizw_indigo

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    藍沢🦕

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    月島誕生日&エイプリルフール

    Love Me, Fool Me・現パロ
    ・月島の誕生日お祝い&エイプリルフールネタ
    ・できてる月鯉、付き合って何年も経っている
    ・同棲中の設定



    「実はな……好きな人ができたんだ」
     それは、ほんの出来心からのいたずらだった。

     付き合ってからもう何年も月日が流れて、そうして一緒にも暮らすようになった。長い時間をかけて築いてきた信頼関係があるからこそ、月島はもういい加減、私の愚かないたずらには騙されてくれないだろうと思っていた。
     今日は月島の誕生日であり、そしてエイプリルフールでもある四月一日だ。もちろん、先の言葉に続くのは「好きなのはお前のことだ」なんていう甘い台詞のつもりだった。

     私はじっと月島を見据える。いったいどんなリアクションをするだろうか。でも今夜だって、ずっと前から予約していたとっておきの店での食事もあるし、豪華なプレゼントだって準備してある。月島もそれを知っていて、今日までなんの変哲もなく生活してきた。つまり私の愛を、彼は充分に知っているはずだった。
    「そうですか」
     だが月島の反応は、私の予想を裏切った。月島は口角ひとつ上げずに、淡々とした様子でそう告げたのだ。
    「え……それだけか?」
     もっと「冗談はよしてくださいよ」とか、なんかあるだろう。「戯言はいいから、今日の夕食までのプラン決めましょう」とか。
    「だって、他に何か言えることがありますか? あなたの気持ちが離れた以上、引き留める方法なんて俺は知りません。……それに、ずっと思ってたんですよ。鯉登さんみたいな人が俺とずっと一緒にいてくれるわけないって」
     ——息を呑む。そして私はひどく後悔した。
     どうしよう、完全にしくじった。月島にとって、その言葉は冗談なんかに聞こえていなかったのだ。
    「あのな、月島」
     私のせいで招いた最悪な空気を、早く晴らさなければならない。だって今日は月島の誕生日で、お前が誰よりも輝いていなければならない日なのに。
    「俺、ずっと思ってました。どうして鯉登さんは十三も年の離れた平凡な俺のことを、熱心に好きだ好きだというんだろうって」
    「月島!」
     私は思わず月島の肩を掴んだ。勝手に痛む鼻の奥を抑えるように、ぎゅっと顔を顰めながら。
    「……はあ。そんないまにも泣きそうな顔するんなら、タチの悪い嘘なんてつかないでくださいよ」
     どうやら月島のほうが、私より何枚も上手だったようだ。騙したつもりがすっかり月島に騙されていた私は、小さく鼻を啜りながら謝罪の言葉を紡ぐ。
    「ごめん……」
    「でもさっき言ったことは本当です。俺、毎年誕生日が来るたびに、いったいいくつになるまで鯉登さんがそばにいてくれるだろうって思います」
     私は月島の肩を掴んでいた腕を、自然と首の後ろに回した。そうして身体を密着させて、月島の心音さえ伝わってくる状態を味わう。
    「こんなにも好きなのに、信じてくれてなかったのか」
    「けれどまだ、あなたは若いでしょう? 心が移ろうことのひとつやふたつ、あってもおかしくないと思うんです」
    「……月島とずっと一緒にいたい。いさせてほしい」
    「それも冗談ですか?」
    「う〜……本当にすまなかったって」
     鯉登はぎゅうぎゅう月島を抱きしめることしかできなくて、それだけでしっかり、心までひとつにくっついてしまえるならいいのにと思っていた。
    「じゃあ俺のわがままを聞いてもらえますか?」
    「聞く、なんでもするぞ!」
    「夕食の前に、指輪を買いに行きませんか?」
    「……へ? まこち?」
    「ええ。だってなんでも言うこと聞いてくれるっていうから」
    「いや、そうじゃなくて! 月島は指輪、嫌なのかと思ってた」
    「嫌じゃないですよ。ただ、怖かったんです。自分から提案して、あなたに『そういうのはちょっと』って言われたらどうしようかって」
    「ゆ、ゆわけなかじゃろ!」
    「でもわからないじゃないですか。……これも、案外変な嘘のおかげですかね」
     ぽんぽんと背中を撫でる手つきが優しくて、鯉登は月島の肩口にすりすりと顔をすり寄せた。
    「月島……大好き、愛してる。生まれてきてくれてありがとう。百歳の誕生日まで一緒に祝わせてくれ」
    「さすがに生きてないんじゃないですか?」
    「いや、月島には絶対長生きしてもらう! 私を置いて先にはいかせないからな。指輪にもそう誓え」
    「……はい。誓いますよ」

     愚かな嘘が愛を深めることもある、そんな春の日のことだった。
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