最後の初恋 1 ——どうか私が、あなたの最後の恋人でありますように。
二〇二五年、一月。東京。
「今日は午後から、東京でも雪が降る可能性が高くなっております。帰宅時間の公共交通機関の乱れにご注意ください」
テレビから聞こえてきたその音声に、月島基は朝食のおにぎりを口に運ぶのをそっとやめ、画面へと視線を移した。
いつから交通機関が麻痺しそうかという予測表には、関東、午後の位置に赤いバツが付いている。だがここ数年、東京で電車が止まるほどの大雪が降ったことなど一度もなかった。せいぜいみぞれに毛の生えたようなもんである。
「……あんな程度の雪で、なぁ」
電車が止まるなんてあり得ないだろ、というのが月島の見立てであった。大体ニュースというのは、大袈裟に注意を呼びかけるものだ。台風も雪も、そりゃ確かに、事前に備えておくに越したことはないから。
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