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    rinya0204

    @rinya0204

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    rinya0204

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    アイドル松のAQUAちゃんの配信話。
    設定を捏造しまくっているし、途中で力尽きました。

    funny,funny,baby! 皆様、ソルトというアプリを知っているだろうか。

     それは新しい形の交流配信ツールだ。
     アプリをお手持ちのスマートフォンに入れてみよう。するとそのアプリを導入していて、自分が登録している有名人から電話がかかってくるという画期的な代物だ。
     自分のスマートフォンの着信履歴に、推しの名前が残されるという夢のようなアプリだ。
     僕は画面に映るそのアプリのアイコンをじっと睨んでいる。トイレも済ませ、飲み物を用意し、完璧な準備をしてベッドの上に正座をしていた。
     なぜならば本日十四時、僕の推しが、電話をかけてくるかもしれないからだ。


     僕は、ふたり組のアイドルユニット、AQUAのファンだ。
     AQUAは、世にも珍しい六つ子のアイドルが、ふたりずつに分かれて組んだユニットの内のひとつだ。二番目と四番目の兄弟で構成されている。イメージカラーは、二番目のカラ松くんが青、四番目の一松くんが紫だ。
     一番目と六番目が組んだ、可愛さが売りのFRUTY。三番目と五番目が組んだ、アクロバティックなパフォーマンスが売りのCITRUS。そしてAQUAは、楽曲の良さが売りだ。僕はAQUAの印象的なメロディ、鮮烈な歌詞に惹かれてファンになった。
     僕はハマると、すべてを追いかけたくなるタチだ。雑誌のインタビューは切り抜いてスクラップブックを作り、彼らが出る番組はすべてチェックし録画する。ラジオだってリアタイし、録音もする。とにかくすべてを把握しようとするのだ。
     その中でも僕は、一松くんのファンだ。
     一松くんは、歌詞とバックコーラス担当だ。彼の書く繊細でどこか優しい歌詞は、いつも僕を慰めてくれる。ただ彼は、カラ松くんと違ってあまりSNSが得意ではないらしく、公式SNSで言葉を発信することがあまりない。カラ松くんはそのことについて「一松は歌詞を書くからな。言葉を大事にしているんだ」と言っていた。そこにも僕は感激した。
     いつだって表に立つのはカラ松くんで、一松くんは彼の隣にひっそりと立っている。そんな状況が多かったのだが、ある時から変化が生じた。
     それは、三組のユニットがソルトで配信を始めるようになってからだ。
     僕はもちろんAQUAの配信を見るのだが、やはりと言おうか、配信はカラ松くんが行う。たまにファンが『一松くんは?』と尋ねるのだが、「あいつはこういうのは嫌いなんだ」とやんわり流されてしまう。
     それでも僕はAQUAのファンなので配信を見る。ごくたまに、一松くんの残像がカラ松くんの背後を通り過ぎるのも楽しみのひとつだからだ。カラ松くんの背後を左から右、右から左に紫色が一秒で通る瞬間を見逃さないよう、目を凝らして配信を見る日々だった。
     だが今夜は違う。
     今夜は、世界が変わる日だ。
     ことの発端は昨夜だった。

    『やあAQUAガールズ&ボーイズ、朗報だ! 明日の14時くらいは空いているか? 実はいま仕事で遠征をしているんだが、ソルトってアプリを入れておいてくれればその時間にホテルから一松と一緒に電話をかけるぞ!』

     この公式ツイートに、界隈は震撼した。
     イチマツト、イッショニ、デンワヲカケルゾ!
     こんなパワーワード他にある?
     ツイッティーでは阿鼻叫喚の大騒ぎ、ファンたちが一斉に待機し始めた。僕だって家族が昼食に誘うのを断って、首を傾げられながらもデリバリーサービスを頼み、腹を満たして万全の態勢で自室で十四時に備えている。
     僕たち一松くんファンは、一松くんとはなかなか接触がない。彼はあまり、積極的に前に出るほうではないからだ。ライブでだって、あまりファンサービスに長けていない一松くんはぺこりと軽く頭を下げるだけで捌けてしまうこともある。僕たちはそこが好きなので微笑ましく思うが、一部で良く思われていないのは事実だ。
     そう、生の一松くんというものは、貴重なのだ。
     その『生』を提供してくれるのがカラ松くん、いや、カラ松神だ。彼は、一松くんの動向を逐一知らせてくれる。
     ―――― そうは言っても実は、どちらかというと、他の兄弟がくれる一松くん情報のほうが安心できる。カラ松くん以外の兄弟が提供してくれる一松くんの姿は、まるで友達といる時のような少し気の抜けたそれで微笑ましい。
     雑誌やテレビでは決して拾うことができない一松くんの魅力をあますことなく披露してくれるカラ松神は、もちろん僕たちの一松くんライフには欠かせないのだが、いかんせん彼の出す一松くんは、彼の私物感が拭い去れないので僕たちファンとしてはいたたまれなくなる。それくらい、彼らの距離は近い。相方だからだろうか?
     いやとにかくカラ松神は、ホテルで、一松くんと、最新アプリで、ファンに向けて電話をかけてくれると言う!
     もちろん、一松くんが自分からやるわけない。誰だと思ってるの? 一松くんだよ? どういう心境の変化? もしかして無理矢理やらされてる?
     室内の時計を見ると、十三時五十八分だった。も、もうすぐだ。
     僕がそわそわと床に置いたスマートフォンを見つめていると、十四時を一分も過ぎた頃、パパーン!と元気よく着信音が鳴り出した。
    「うわあああああ……!」
     僕は悲鳴を上げながら通話ボタンを押した。
     ぱっと画面が切り替わり、こちらを覗き込むような顔をしたカラ松神と一松くんが映った。本当にホテルの一室らしく、後ろには無機質な白い壁が映っている。
     近い、生で、近い。ひたすら近い。ほとんど顔のドアップだからとにかく近い。
    『…… ん? これもう繋がってんの?』
    『繋がってるぞ!』
     たぶん無意識だろう、一松くんは目を細めてぐいっと画面に近づいてきた。僕は思わず首を後ろに下げてしまう。
     わああー、一松くんだ、本物の一松くんがしゃべってる、まだ使い方もよくわからないって顔で、カラ松神とああだこうだとしゃべっている。
     さて、ここでソルトのシステムについてもう一度詳しく解説すると、いわゆる、動画配信のもっと限定的なものになる。
     このアプリを入れて、アカウントを新規登録、自分の名前とアイコンを作成すればそれで終わり。SNSツールと連携するもよし、アカウントを新規作成するもよしだ。
     ソルトを導入している有名人をフォローすると、その人たちが配信をしたいタイミングでアプリを介して電話をかけてくる。そう、つまり自分の通話履歴に好きな有名人の名前が残るのだ!
     アイコンは既存の画像を登録するか、セルフカメラをビデオモードにしておくかのどちらかだ。その登録したアイコンが、配信を見ている人の中からランダムに選ばれ、画面の下の方にずらずらと並び、回転する。
     ここで言えば一松くんとカラ松神が、そのアイコンをタップすると、その人と一松くんたちとの通話がつながるというわけだ。
     つまり、ランダムに選ばれた中でもさらに選ばれた人間だけが一松くんたちと会話ができるということになるんだよね。
     この中に僕のアイコンはない。僕は『見ているだけモード』という、配信を視聴するだけという恥ずかしがり屋さんのためのモードを選んでいるからだ。
    『お、すごいぞ一松。みんなが見てくれているぞ。この下に並んでいるアイコンがそうだ』
    『へえー。みんな物好きだね。こんな真っ昼間に』
    『いちまぁつ! そういうことを言うもんじゃない!』
     ああー、すごい。一松くんがしゃべっている。普段のライブともラジオとも違う、プライベートって感じだ。
    『あの』
     一松くんが、おずおずといった感じで画面に向かって口を開いた。
    『おれ、こいつが一度くらい出ろって言うから今日来たんだけど、知ってると思うけどあんまり、こういうのうまくないから、期待はしないでもらえると嬉しい』
     わかってる! 大丈夫だよ! 一松くんが出てくれるだけで嬉しいのだ、という気持ちをこめて、僕は右下のハートのスタンプを連打した。みんな同じ気持ちらしく、画面の右がたちまち怒涛のハートで埋まる。
     滝のようなハートが上に向かって流れていく様を見て、一松くんが少し困ったように微笑んだ。
     あ、もう、死んでもいい。
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