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    dc0858

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    大遅刻!
    バレンタインの両片想い梶貘SSです
    最終回後の時系列で賭郎やお屋形様の新体制とか色々捏造してます

    -2月15日-

     
     斑目貘が現在のお屋形様であることを知る者は少ない。本人が近しい者以外に公表することを拒んでいるからだ。
     人主からは相変わらず「嘘喰いちゃん」と気安く揶揄されているし、賭郎会員から勝負を挑まれることもある。立会人からはもっと頭領としての自覚を、などと諫められているが、嗜める彼らもこの賭博狂が立ち止まることがないことを知っていた。
     今も数日後に賭郎勝負を控えた斑目は、ただの賭郎会員として挑むことを所望していた。相手との待ち合わせ場所はとある別荘地。斑目は東京を離れ、信頼できる仲間と立会人、そして数人の黒服を連れ地方のホテルにしばらく滞在することになった。
     俺は他の階を見てくるから先に行っててよ、と告げられた梶はマルコと一緒に部屋の前に立って荷物を床に下ろした。広めのダブルルームで、ベッドをもうひとつ足して三人で泊まれるようにあつらえている。

    「みなさんは他の階に泊まるんですよね。弥鱈さんはこの後別行動でしたっけ?」

    「立会の予定があるので。夜には戻りますよ」

     梶が尻ポケットに入れたキーカードを取り出す。その拍子に薄いビニールのようなものが一緒にはらりとこぼれ出た。廊下に敷き詰められた絨毯の上に着地する前に、後ろにいたマルコが拾い上げる。

    「ねえカジ、これ何?ゴミ?」

    「え?わー待って待って!ゴミじゃないから!」

     梶が慌ててそれをマルコの手からひったくった。弥鱈がひょいと覗き込む。ジップロックの中には小さな紙片が入っていた。縦横の皺がいくつか刻まれたその紙は失敗して一度開き直した折り紙のようにも見えた。

    「ゴミじゃなかったら何ですか?」

    「チョコの包み紙です。貘さんが自分用に買ったチョコの詰め合わせを1個分けてもらったんで、記念に取っておこうと思って。昨日はちょうど14日でしたし、なんかバレンタインプレゼントみたいじゃないですか」

    「…………そうですか」

     愛おしそうに胸ポケットに納められる。弥鱈は「いやゴミでしょう」という言葉も一緒にしまい込んだ。

    「チョコ!?マルコ貰ってないよ!?」

    「お酒入りのチョコだったから。マルコにはまだ早いよ」

    「マルコはもう大人よ~!」

     種の殻がぎっしり詰まった小瓶を見つけ、「貘さんの種の殻、集めてるんです」とはにかんだ顔で告げられた時より衝撃は少なかったので、弥鱈はなんとか真顔を保つことができた。が、梶隆臣の“そういうところ”を初めて目の当たりにしたらしい黒服たちはサングラスの下で動揺を隠せないでいた。

     ある者は傅いた梶が両手を差し出して、斑目がその掌の上に胸ポケットから取り出したチョコを片手でぽとりと落とす様を思い浮かべたし、ある者は主人のスリッパをねぐらにしまい込む犬を連想した。

     弥鱈は彼らがどういう仲だろうとどうでもよかった。それより今日は他の会員から立ち会いの依頼が来ていたので、満足する物が見られるだろうかと想いを馳せた。


    -2月14日 午前-

    「あ、夜行さんちょっと待って!」

    「は」

     駅の中を連れ立って歩いていた時に斑目が急に大声を上げたので、夜行と門倉は一瞬身構えた。しかしその後ろ姿がスーパーで食玩コーナーをを見つけた子どものようにはしゃいでいるのが分かり、その必要がないことを察して警戒を解く。
     先刻、密入国してきた豪富を待ち構えて数十億の金を動かす勝負を終えた後と思えないような軽やかな足取りで売店の前で立ち止まる。客人の気配を察した女性店員が商品を整頓する手を止めて顔を上げた。上下真っ白のモデル風の男と執事風の老人、黒のロングコートに眼帯を併せたその異様な組み合わせに彼女は一瞬ぎょっとしつつ、すぐ仕事に戻っていった。
     店先には高級ブランドから駄菓子まで各メーカーのチョコレートが陳列されている。

    「バレンタインフェア、ですか。差し上げる相手がいるんですか?」

    「え?……古っ!門倉さんって発想がおじさんだよね、今時は自分のために買うのが主流なんだよ!」

     斑目はそんなことも知らないの、と言いたげな顔で、“自分へのご褒美に”――丸っこいピンクの太字で書かれたポップを指さす。

    「おどれもオッサンの歳やろ」

    「何か言った?」

    「いえ別に」

    「わっ、こんなのあるんだ?へー!おねーさんこれ買います!」

    「は、はい。ラッピングはお付けしますか?」

    「そのままでお願いしま~す」

    「かしこまりました」

     少し目を泳がせながら、店員は素早くレジを打った。


    -2月14日 午後-

    「かーじーちゃん!見て見てこれ!」

    「はあ、何すか?」

    「珍しいチョコ見つけたんだよ、梅酒味だって!」

     斑目は頬を上気させながら、バリッと袋を開けて中身をテーブルの上に撒いた。3cmの四角い粒がばらばらと散らばる。包みを開く前から甘酸っぱい匂いが辺りに広がった。

    「へー、美味そうっすね。でも食べすぎないでくださいよ、すぐ鼻血出すんですから」

    「分かってるってば。……じゃあ梶ちゃんにも1個あげる」

    「え!?あ、ありがとうございます!」

     斑目は自分が食べるためのチョコレートを掴み、器用に左手だけで包装を開けようとする。右の手のひらにもひとつ転がし、梶に差し出した。少しうつむいた青い目は左手の方を注視していて、微動だにしない右手は「勝手に取ってよ」と催促しているようだった。
     梶は少し逡巡して、そっと両手で右の手のひらを包みながら一粒を受け取った。


    -2月16日-

    『マルコにはまだ早いよ』

    『マルコはもう大人よ~!』

     宿泊中のホテルには賭郎の息がかかっている。しかし初めて泊まるホテルであったので、念のためおかしな間取りがないか、妙な人物が紛れ込んでいないか、不審物は仕掛けられていないか、立会人と一緒に監視カメラをチェックしてた斑目は梶の言葉を聞いて床の上に突っ伏していた。

    「ナンデ……、俺そんなつもりじゃ、いやそういうつもりだったけど……」

    「結局そういう意図で買っとるんやないか」

    「だって今日バレンタインですねーなんて全然言わなかったのに!気づいてないんだと思って!」

    「いや流石に分かるでしょう、そこら中でバカみたいに宣伝してるんですから」

    「俺のささやかなバレンタイン作戦が~~!」

    「貘様……」

     門倉、弥鱈、夜行は現お屋形様を呆れ顔で眺めた。

     何気ない日に気まぐれでよこした一粒のチョコレート。「梶ちゃんにバレンタインチョコをあげちゃった♡でも気づいてるのは俺だけ♡」などと悦に入ろうとしたのだろう。しかし目論見は外れ、昨日がバレンタインデーであることを気づかれていたどころか「貘さんからチョコを貰った!バレンタインのプレゼントみたいで嬉しいけど貘さんは全然そんなつもりはないんだろうな」と致命的なすれ違いが生じていることを門倉は悟った。
     自身の吐き出した種の殻を後生大事に取っておくような男にチョコレートを差し出したらどうなるか、誰よりも先に彼を見出していたはずのあの嘘喰いが予想できないのが不思議だった。
     それだけではない。斑目貘が規格外の人外の博徒であるだけで、梶隆臣も今や立派な切れ者のはずであった。あの斑目が日付けを忘れるはずがないのだ。わざわざバレンタインを選んでチョコレートを渡すことがどういう意味を持つのか、そこに迫れないことがもどかしいような苛立たしいような気分だった。

    「10円のチョコで大喜びするよう調教されている――、あの場にいた黒服は全員そう思ったでしょうね~。ていうか私もそうだと思いました」

     弥鱈がぞんざいに思っていることを口に出すので、斑目がガバッと顔を上げた。

    「えっ俺そんな風に思われてるの!?」

    「……惚れた弱みという言葉もありますが、梶様は弱みを握られて困るような相手ではないでしょう。素直にプレゼントだと言ってもう少しまともな物を渡せばよかったのでは?」

    「あーでも誤解させておいた方が都合良いんじゃないですかぁ~?先入観を利用するのは得意技でしょう」

    「また2人ともそんな言い方して!顔が邪悪だよ、邪悪!俺にそんな口利いていいと思ってんの!?一応上司なんですケド!?」

    「この分ではお返しも期待できそうにありませんねぇ~~」

    「ちゃんみだ~~!!」

    「まあまあ、ここは一度休憩されてはいかがですかな?」

     いつの間にかボトルを手にしていた夜行が、紙コップに黒い液体を注ぐ。その瞬間、湯気も立っていないのに濃厚な香りが充満する。斑目と弥鱈が表情を無くし、門倉が顔をしかめた。

    「夜行さん、それって」

    「店のコーヒーです。できたてというわけにはいきませんから多少風味は変わっていますが問題ないでしょう。そしてこちらは喫茶店の常連様から頂いた者です、この老体には大量の甘味は少々酷でして」

     紙コップの隣には即席の菓子盆が作られ、チョコレート菓子が所狭しと並べられている。

    「あー……俺はいいやコーヒーは」

     斑目は少し悩んでからいちご味のチョコボールを手に取った。くちばしを開いてエンゼルがいないことを確認するとざらざらと手のひらに出して口に放り込む。


    ――夜行さん、コーヒーに合うおすすめのお菓子ってありますか?

     特に意味はないんですけど、夜行さんってコーヒー通だから色々知ってるのかなと思って。
     夜行は昨晩、いつもと変わらない朗らかな顔で梶にそう尋ねられたことを思い返した。
     この場合コーヒーに合うかどうか、は重要ではなく、斑目貘のためホワイトデーにお返しをしたいから夜行のセンスを参考にしたい、もしくは彼の好みをリサーチして欲しい、ということだろう。夜行はとっさに「しばらく考えさせてください」と返し、答えは保留にしている。
     賭郎の有り方に関係するならともかく、プライベートでの行動をお膳立てする義理は夜行にはなかった。真意を無視して純粋にコーヒーに合う菓子を勧めてもいいし、いっそ反故にしてもよかった。
     斑目はいちごチョコボールの箱を盆に戻し、ポッキーに手を伸ばしかけてオレンジピール入りのチョコレートを手に取る。頭の中ではその順番をしっかり記憶して彼に伝えるための言葉を組み立てようとしている。貘様は酸味の入った物がお気に入りのようですよ。


     自分をそうさせる彼らのことがやはり嫌いだ、と夜行は思った。
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    dc0858

    TRAINING梶貘
    梶ちゃんの台詞のみ 謎シチュです 病み気味梶ちゃん
    貘さんが死んだらどうするか、ですか?うーん……そうっすね……。そもそも僕らの遺体ってちゃんと焼いて墓に入れてもらえるんすか?悪用されそうで嫌だなあ、もういっそ散骨って手もあるのかもしれないですよね。ほらあるじゃないすか、遺灰を撒くやつ。一般的には海に撒くんでしょうか?僕、海は苦手なのでなるべく海はやめてほしいっすね。その辺のドブに捨ててもらった方がいいです。ああそうだ、貘さんと出会った街なんかいいかもしれないっすね。もちろんなるべく、なんで海に捨てる必要があればそれでもいいですけど。え?僕の遺骨の話ですけど?僕の死体をどう処理するか―― え?いや貘さんが死ねば僕も死にますけど?貘さんが死んだらどうするかって話ですよね?――ああ、貘さんをどうするかって話だったんですか!?すみませんそういう発想がなかったので……。えーっと……。とりあえず僕が貘さんの葬式までは参加する、そして僕に埋葬方法諸々を取り仕切る権限があると仮定しての話でいいんですよね?そうだなあ……。……棺桶って二人入れるんですかね?…………ははっ、なーんて。そうですよあるわけないですよ、なんてったってお屋形様の葬式なわけですし僕 880

    dc0858

    TRAINING大遅刻!
    バレンタインの両片想い梶貘SSです
    最終回後の時系列で賭郎やお屋形様の新体制とか色々捏造してます
    -2月15日-

     
     斑目貘が現在のお屋形様であることを知る者は少ない。本人が近しい者以外に公表することを拒んでいるからだ。
     人主からは相変わらず「嘘喰いちゃん」と気安く揶揄されているし、賭郎会員から勝負を挑まれることもある。立会人からはもっと頭領としての自覚を、などと諫められているが、嗜める彼らもこの賭博狂が立ち止まることがないことを知っていた。
     今も数日後に賭郎勝負を控えた斑目は、ただの賭郎会員として挑むことを所望していた。相手との待ち合わせ場所はとある別荘地。斑目は東京を離れ、信頼できる仲間と立会人、そして数人の黒服を連れ地方のホテルにしばらく滞在することになった。
     俺は他の階を見てくるから先に行っててよ、と告げられた梶はマルコと一緒に部屋の前に立って荷物を床に下ろした。広めのダブルルームで、ベッドをもうひとつ足して三人で泊まれるようにあつらえている。

    「みなさんは他の階に泊まるんですよね。弥鱈さんはこの後別行動でしたっけ?」

    「立会の予定があるので。夜には戻りますよ」

     梶が尻ポケットに入れたキーカードを取り出す。その拍子に薄いビニールのようなものが一緒にはらりと 4280

    recommended works