七夕いつもより星が輝く夜空に琵琶の音が響く。それに合わせてトントトンする楽しげな足音。
「犬王!犬王よ!聞こえているか!今年も唄いに来たぞ!!」
「聞こえているぞ(そうではなくてもほぼ毎日来てないか?まあいい。楽しいから断る理由もないしな)」
「今年も曇りだが関係ないッ!この唄と琵琶の音が届けるなら!」
「ああ、ハッキリと聞こえているぞ。また新しいのを作ったな。それもいいぞ!」
「当然!尽きることないこの世の中の音が変わり廃れていく。それを拾い俺たちが輝くのさ!」
「俺もだ。この世も色んなのが溢れて留まることが無い。また新しい舞い出来たぞ!」
「見えるぞ!盲関係なく雲だろうと雨だろうと見えるッ!」
一層に琵琶の音が激しくなり、足音も大きくなる。
「犬王の新しい語りだ!変わりゆく世でも犬王の新しいのは追いつくことが出来るのかっ!追いつけるのか!この世が犬王の新しいのを!!」
「はははっ!(相変わらず犬王ガチだな)」
「さあさあ、今年も犬王の新しいのを見届けよ!!雨でも曇りでも肉眼で見えなくても望遠鏡で見えなくても宇宙から見えなくても見えるさ!俺らの物語を聞け!見えよ!これからにも!!俺らの物語を」
「もっとだ、もっと弾いてくれ。まだまだ舞い足りんぞ!」
「ああ、もっともっと行くぞ!!」
「今のいいぞ!」
グルグルと回り一つなるかのように弾けていく。
「犬王!」
「友有!」
「犬王!」
「友有!」
どんな夜空だろうが輝く2人だけの舞台。
琵琶の音が響く。それを合わせる足音。今宵も疾り昇る。