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    ak0cc0_dct

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    ストレッチと癒しの話
    3部くらいのふたり

    ##蒼まど

    数日空けて稽古場に入る際、必ず受ける儀式がある。
    「おはよう、蒼星。きちんと三十分前に来たね」
    貴方がちゃっかり早く来ることを知ってますからね。仁さん。と言える立場ではない。
    「お願いできますか」
    「うん、じゃあいつも通り俺の前へ脚を揃えて座って」
    「はい」
    行くよ、という声と共に背中を押される。途中までしか曲がらない。脚を開いてももう少しと言ったところ。胡座をかいて、膝が床へつくかも見る。
    今のは股関節の例だが、こんな風にして彼から隅から隅まで身体の具合を確認されるというのが、出張などで稽古に穴が空いた後の通例だった。
    「今回は右上腕と、左の股関節かな。デスクワークが多かったから仕方がないのかもしれないけど」
    ストレッチは忘れないでね、と首の後ろを揉まれる。
    「ありがとうございます……」
    マッサージの要領なので素直に気持ちいい。凝り固まったままの筋肉があるのは宜しくない、と言われている以上は素直に頷くほかなかった。


    「それで、ストレッチ?」
    「うん」
    彼女の部屋の床はうちと違ってフローリングではないので直接座ることができる。先にお風呂を使わせてもらっていたから、彼女があがってくるまでの間に済ませてしまおうと思っていたけれども意外と時間がかかったらしい。
    「早くのびのび動けるようにならないと、仁さんの振り付けについていけなくなるからね」
    ダウンストレッチもあと少しのところだったので、身体を動かしながら言えばそれは困るねと苦笑された。
    たぶん彼女も仁さんが毎回ハイレベルな振り付け――やってやれないことはないが、容易には出来ない程度のものを持ってきていることには気がついている。成長は大事だが、安定したパフォーマンスも求められる以上立ち止まっていられる時間はそんなにない。
    よし、と立ち上がって部屋にあるベッドへ腰かける。
    「終わった?」
    「うん」
    来て、と声をかければおずおずと俺の前へ腰をおろす。両腕をおなかへまわし、首筋へと唇を寄せた。あたたかくて、やわらかい。その感覚が運んでくる癒し効果はストレッチでは得られないものだ。
    「んー……やっぱり、こうするのは好きだな」
    「私はちょっと落ち着かないんだけど」
    「そう?」
    ちゅう、と吸い付く。痕は残さない。それでも唇に温もりがうつって、それが嬉しくて肩に額をつけたままくつくつと笑ってしまう。
    「変な蒼星くん」
    「変でもいいよ。本当のことだし」
    君のことが好きだからこうなるんだ、という言葉は口に出さないことにして代わりに「逆の立場になればわかるよ」とだけ言ってみせる。ね、と見上げれば赤くなった頬に出会った。
    「……今度、抱きついてみせるから」
    「うん、楽しみにしてるね」
    言って唇で触れてみると、やっぱり少し熱い。
    (かわいいなあ……)
    そのことにまた癒し効果があがったことは、言わないでおこうと思う。
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