リビングのソファから、この家の建っている丘から見下ろした街の風景がテラス越しに見える。ここで開いていたカフェの売りだったのだろうその風景を気に入ってこの物件を買ったくらいには、お気に入りの場所だ。
ただ、元々俺のお気に入りの場所は別にあった。先ほども言ったがこの家にはテラスがある。風景を見るならテラスのほうがよく見える――そのはずだったのだが。
いつの頃からかソファから見えるテラスの一角、元々俺が定位置にしていた場所に小さな頭が見えることに安心感を抱くようになった。
雨風に晒されても平気なラタンのチェアに寝そべり、隣のテーブルに積み上げた本を読んでいく。足を組み替えたり、寝返りを打ったり。
動かなくなったのを見たら窓を開けてブランケットをかけにいくのはお約束の風景で。その度に陽に照らされた彼女の頭をそっと撫でる時間が好きになっていった。
でも時には読んでいた本を目の前で取り上げたこともあった。その時の彼女はひどく無理をしていたから、いいからここで好きなだけ感情を手放していくといいと言って引き上げたら、次にリビングの窓を見たときその背中は微かに震えていた。よかったと息を吐く。
パートナーだから常にべったりとそばにいる、わけじゃない。
彼女は自立したおとなだ。
だから寄り添えればそれでいいと、思っていたのだけれど。
「あの、仁さん……きょうは仁さんの誕生日だと思っているんですけど」
どうして私がサプライズを受けているんですか、と驚く彼女に告げる。
その顔をずっと傍で見ていたいから、君の定位置を快適にする東屋をつけたんだよと。
仁さんはぴばなのです。
わたくし仁さん宅って設定を見た時からめちゃくちゃ夢をみがちで、今までもバーカウンターあってほしいとか猫足バスタブがいいとか言ってましたが今回はテラス部分になりました。
東屋って何よと言われそうなんですけどサンルームだとやりすぎでパラソルだと物足りなくて……結果、東屋……大がかりなDIYはいらないってさ、みたいな。
これからはふたりでのんびりできます。夏はほどほどにね。