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    転生ネタディルガイ(ディは不在)

    #ディルガイ
    luckae

    「ガイアはさ、いつディルックに記憶があることを話すの?」
     言った途端に隣のガイアが、音もなく片眉を上げる。どうせ昼食時の教室で何を言ったところで、周りに全てかき消されてしまうだろうに──あくまで静かに、彼は俺へと向き直った。
    「……空、なんでそれを」
    「んー、蛍には止められてたんだけどさ。そろそろ俺も限界感じてきたから言っちゃうね。少なくとも俺たち、テイワットでの記憶あるよ」
     ペットボトルの蓋を開け、中身を喉へと流し込む。そうして一息ついた俺が、次に目にしたのはなぜか、やけに悲しそうなガイアの顔だった。
    「そう、か。それであいつにも記憶があるって、お前は踏んでるわけか」
    「うん、だって入学した時に声かけてきたのはディルックの方だったからね。ガイアが留年してるって教えてくれた時の顔、どう見ても全部覚えてる感じだったよ」
    「はー……まあそうだよなあ……せっかく年度離れたくて留年したってのに……」
    「聞こえてる聞こえてる。まあそれでガイアと一緒に学べるのは俺も嬉しいけどさ、色々はっきりさせとかないとダメなんじゃないの?」
    「……分かってる。だがなあ空、思わず初対面のフリしたくなるくらい……色々あったことも、お前なら知ってるだろ?」
     まあ分かる。ガイアがいつかテイワットでしたことは、生まれ変わっても消えない事実として残っている。だがもう俺たちは一度死んで、次の世界をこうやって生きているのだ。お互いにごめんを言うにはいいタイミングだと思うけど、と告げれば、ガイアは珍しくも頭を抱えていて。
    「……お前ディルックに告げ口は」
    「してないよ、これはガイアたちの問題だし。でもどっちかと言えば俺はディルックの味方かな」
     シャケとわかめのおにぎりを手に取る。表面に塩がまぶしてあって、冷めても割と塩気があるのが嬉しいところだ。
    「……ディルック、すごく悲しそうだったよ。ガイアには全て、忘れられていたからな、って」
    「とはいってもなあ……」
    「なら俺たちが協力──」
    「しなくていいしなくていい」
    「えー。でもさガイア、ちょっと聞かせてよ。ディルックに後ろめたいって理由だけで、ガイアがそんなに渋るとも思えないし……なんかあったの?」
     言えば「俺のことなんだと思ってるんだ」と怪訝な顔で水を飲む。既に元素の力を失った俺たちは、神のいないこの世界で──人間になった元神こそいるが──今を元気に生きているというのに。
    「……なかった、ってわけじゃあないけどな。さすがに時効だろ、あいつはもう自由になっていい」
     言いながら、生まれつきのものだという左手薬指のあざに触れるガイア。まるで指輪をしていた痕跡のように、ぐるりと薬指を一周するそれは、確かディルックにもあったはずなのだ。
    「今度こそ、ガイアの義兄としてじゃなくてさ。ディルックとして、生きてほしいんだよ」
     そうして笑うガイアは、ひどくやつれているようにも見えて。ガイアに記憶がないことを語っていたディルックとよく、似ていた。
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    DONEパティシエのタルタリヤと大学の先生をしてる鍾離先生の現パロ。鍾タルです。捏造しかないので要注意。(Twitterに上げていたものと一緒です)
    パティシエのタルタリヤと大学の先生な鍾離のお話①ふわり、と。
    鼻先を掠めた匂いに思わず顔を上げる。会話も、物音も少なく、かすかに聞こえるのは紙の擦れる僅かな音ばかりの図書館にはあまりにそぐわない、甘い匂い。それは書物へと没頭して、つい、食事を忘れがちな己の胃を起動させるには十分なものだった。壁にかかるシンプルな丸時計を見るともう昼はとうに過ぎ、どちらかと言えば八つ時に近い。なるほど、甘いものを食べるにはちょうどいいな、と。昼食すら食べてないことからは目を背け、手にしていた本を棚へと戻した。
    さて何が食べたいか…足音を飲み込むカーペット素材の床を踏み締めつつ、書籍で埋まる棚の間を進む。平日の昼間なせいか自分以外の人影を見かけなかったのだが、知らぬうちにもう一人、利用者が増えていたらしい。珍しい、と。なんとなしに興味が引かれ、知らず足が向く。こちらの事など気がついても居ないのだろうその人物は、立ったまま手にした本を熱心に読んでいた。赤みの強い茶色の髪の下、スッと通った鼻筋と伏せられた目を縁取る長い睫毛。恐らく自分よりは歳若いその青年は、特に目立つ格好をしている訳でもないのに、何故か無視できない存在感があった。ここまで気になるという事は、もしかしたらどこかで会った事のある同業者か…生徒の一人かもしれない、と。記憶の中で赤毛を探すが残念ながら思い当たる人物はみつからず。知り合いでは無いのならばあまり見ていては失礼にあたる、と無理やり視線を剥いで、青年の後ろを通り過ぎた。
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