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    のくたの諸々倉庫

    推しカプはいいぞ。

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    POIPOI 57

    続かない。アレな話はしてますがすけべではないです。

    #若トマ
    youngThomas

    たのしい婚前交渉のすゝめ トーマという男には、稲妻とモンドの血が半分ずつ流れているという。
    「その割には、というか比率こそ同じなのに、という意味ですが……オレはモンド寄りの容姿である気がします。まあ酒にめちゃくちゃ弱いところは、間違いなく稲妻の血が影響してるんでしょうがね」
     いつかの酒の席で、綾人に酌をしながら言ったのは確かにトーマだった。ならばと酔ったふりをして、「ならお前は、タキシードと袴のどちらを着たい?」なんて訊いたことがあったな、と。
     ほんの短い仮眠から、意識を浮上させた瞬間ふと思う。その時トーマはなんと言っていたか。綾人に向けられた表情は確かに、笑みと分類されるようなものだったけれど。
    「……オレは若のそばにいますよ。結婚するつもりはありません」
     綾人からすれば正直、半分嬉しくて半分悲しい言葉だった。トーマのことはそれこそ、死ぬまでそばに置きたいと思っている。つまりは生涯を捧げ合うような仲でありたいと、そう思っているから探りを入れただけだった。もちろんそれが、叶うかどうかは別とするものの。
    「オレの隣には、白無垢もウェディングドレスもいりません」
     そう言って、目を細めた姿があまりにも悲しそうだった理由を。その時の綾人は、まだ何も知らなかったのだ。


    「さて。それじゃあトーマ、私との挙式の話だけど」
    「う、あいたたたた。すみません若、急に腹痛が……」
    「嘘はよくないよ、本当に腹が痛い者は姿勢良くなんか歩けないものだ」
     腹を押さえることもせず、逃げ出そうとするトーマを捕まえる。そうして隣に誘導し、綾人は彼の手を握った。
    「いつかお前は言っただろう、私のことが好きなんだって」
    「……言いました、けど。いつまで本気にしてるんですか、あなたは当主様なんですよ」
    「おや、トーマは私相手に嘘をつくようなことはしないだろう? その神の目が現れた瞬間に、立ち会ったのが誰かなんて言わせないでおくれ」
     あくまで穏やかに、問い詰めるような雰囲気は出さぬように。緑の瞳をじっと見つめて、言えば居心地悪そうに——けれど目を逸らすことはしないまま、トーマは重い口を開いた。
    「……後継のこともありますし」
    「それは養子を迎えればいいさ。血筋にこだわるのも重要かもしれないけどね、そればかりが家族の証ではないだろう?」
     それこそ私とお前のようにね、と笑みを深くする。ぐ、とトーマの喉が鳴った。
    「私はいいと思うけどね。凝り固まった考えに新しい風を取り入れることも、時にはとても重要なことだ」
    「とはいえ……周りは納得しないでしょう。若の負担が増えるだけです」
    「おや、見くびられたものだね。私がその程度のことを処理できない無能だと言いたいのかい?」
    「い、いえ! そういう、わけでは」
    「……ふふ、可愛い可愛い私のトーマ。分かってはいるさ、お前が私のことを考えてくれていることくらいは」
     元より誰かの困り顔は好きだ。それが愛しい相手なら尚更、それも自分のために悩んでくれているときた。たまらないなあと内心呟いて、トーマの頬を両手で包む。
    「……だめ、かい」
    「う、ううううう……」
     困ったように眉を下げ、小首をかしげる動作までセットだ。これがトーマによく効くことは、長い付き合いの中でとうに実証されていた。
    「……若は、オレのこと抱けるんですか」
     だから蚊の鳴くような声で、そう言われた時にほんの少しだけ。表情が崩れそうになるのを堪えるのが、なかなか大変なことだと知ることになる。
    「……君が望まないなら、手は出さないつもりでいたけどね。そういうものばかりが愛情ではないだろう?」
    「はいかいいえで答えてください!」
    「なら『はい』としか言えないね。正直今も大分興奮してるんだけど」
    「え、っ」
     だがまあ、予想外の答えだったのだろう。トーマは赤面と共に硬直した。けれどそこから数秒の後に、「なら、考えがあります」と。
    「お、オレも性欲は強い方、でして。これでもかと満足させてくれる相手でなければ、結婚は難しいかもしれませんね!」
     ……明らかに苦し紛れで、どう見ても悪あがきだった。据え膳、という言葉だけが綾人の脳裏によぎる。
    「ふむ……つまりお前は婚前交渉を望むんだね」
    「え、えまあ……そういう、ことですかね……?」
    「分かったよ、なら三日後だ。三日後の夜お前を抱きに、お前の部屋を訪ねることにする。
     その時全て決めようか、お前が言い出したことだからそれでいいね?」
    「は……はい……」
     言いながらも、微かに震えているトーマが可愛くて仕方ない。耳の先まで真っ赤だよ、と言いたいのをこらえる。
     ……さて、これで逃げ道は全て塞いだ。あとは三日後のお楽しみだ。
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