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    のくたの諸々倉庫

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    POIPOI 57

    「たとえ話だよ、そんな顔しないでってば」/ディルガイ(+ウェン)

    こういう不穏な神様いっぱい吸いたい

    #ディルガイ
    luckae

     グラスの中の氷がからん、と軽やかな音を立てた。
    「そういえば今日、お前のことを『神に愛されし存在だ』……なんて言ってるやつがいたなあ」
    「……なんだそれは。褒めているのか?」
     酒を片手にニヤニヤと、やけに機嫌のよさそうなガイアに目をやる。その肌の色のせいで分かりにくいが、上気した頬ととろけた声は酔っぱらっている証だった。
    「まあ前後の話からするに、神に愛されて色んなものをもらった人だ、とかいう感じだったな」
    「……そうか。その全てを否定するわけではないが……妙な気分だな」
    「お前は努力家だもんなあ。その実力は神なんかが与えてくれたもんじゃない、って言いたいんだろ?」
    「……『なんか』とは思わないがな。ある程度生まれ持ったものがある上に、研鑽を重ねた結果だよ」
    「ふうん……」
     不愉快、とまではいかないものの、さもつまらなさそうにまた、ちびちび酒を口にする。そうしてガイアはまた、「それじゃあきっと、俺はとんでもなく神に嫌われてるだろうなあ」と。
    「……理由を訊いても?」
    「いいぜ、とはいっても別に俺自身が不幸だとか思ってるわけじゃない。いつものことだろ、俺とお前は昔から何もかも反対だったから」
     言いながら目を細めて、ガイアは僕をじっとりと見つめる。値踏みや観察というより、懐かしむ思いの方が大きいのだろうか。嫌悪の類は見えないものの、僕よりも遠い場所を見ているかのような気さえした。
    「……なあ、旦那様。神にとっての特別ってのは、いったいなんなんだろうなあ」
    「僕に訊かれても正解は出せないよ。人間だろう僕たちは」
    「違いない。はは、今日はやけに酔っちまったようでなあ……すまないな」
     そうして残りの酒を飲み干し、モラを残して立ち上がる。いい夢を、と彼が店から出たときようやく、残りの客が彼だけだったことに気付く。
    「……僕からすれば、君の方がよほど……神に好かれていると思うけどね」
     特別という感情はプラスにとらえられることも多いが、結局のところ他と違う、という意味で考えれば、ガイアだって神の寵児である。そうしていつか、あの吟遊詩人が語っていたことを思い出した。


    「人間と神っていうのはね、大分感覚が違うからねえ。もしかしたら不幸な人間こそが神に愛されしものかもしれないだろ?
     ……えぇ、理由訊いちゃうの? そうだなあ、それじゃあもう一杯ほしいな!」
     ああそうだ、あの日の彼もさっきまでのガイアとよく似ていた。そうしてひどく機嫌よく、微笑んだ彼が口にしたのは。

    「だってその子を愛してるなら、手元に置きたいものだろう? それなら早く死ぬように、とびっきり不幸な人生を送らせちゃうかも、ね?」
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    のくたの諸々倉庫

    DONEそのまぼろしは既に遠く/鍾タル

    転生したけど先生だけ記憶ないよ! っての大好きなんですよね……Twitterのヘッダーにもしてます。
    一度閉じたはずの目をもう一度開いたとき、俺がいたのは神のいない世界だった。

    「はじめまして、だな」
     それでもきっと、俺はどこかで期待していたのだろう。あのひとはきっと生きていて、俺のことを憶えているものだと。
    「俺は鍾離という。名前を教えてくれないか」
    「……アヤックス、です」
     前世培ったものがなければきっと、声が震えていただろう。忘れもしない彼の姿を目にして、素直に喜ぶことができない理由は──既に分かりきっている。
     憶えていないのだ、彼は。
    「……すみません、ちょっと忘れ物したみたいで。取りに行ってきますね」
     これから通うことになる大学と、若くしてその教授であるという彼。たったそれだけのことのはずだった。けれど俺にとっては、ああ、ああ。
    「……なんにも憶えてない、かあ……」
     息が切れるまで走って、人気のない場所でしゃがみ込んだ。そうしてこぼれたのは決して涙ではないけれど、いっそ泣くことができたらもっとましだっただろうか。
    「……はは、なんだろなあ」
     どうしようもない。あの場所にいたのはただの鍾離先生であって、俺の知る元岩王帝君ではないのだ。
    「案外ショック、だな……」
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