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    のくたの諸々倉庫

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    「たとえ話だよ、そんな顔しないでってば」/ディルガイ(+ウェン)

    こういう不穏な神様いっぱい吸いたい

    #ディルガイ
    luckae

     グラスの中の氷がからん、と軽やかな音を立てた。
    「そういえば今日、お前のことを『神に愛されし存在だ』……なんて言ってるやつがいたなあ」
    「……なんだそれは。褒めているのか?」
     酒を片手にニヤニヤと、やけに機嫌のよさそうなガイアに目をやる。その肌の色のせいで分かりにくいが、上気した頬ととろけた声は酔っぱらっている証だった。
    「まあ前後の話からするに、神に愛されて色んなものをもらった人だ、とかいう感じだったな」
    「……そうか。その全てを否定するわけではないが……妙な気分だな」
    「お前は努力家だもんなあ。その実力は神なんかが与えてくれたもんじゃない、って言いたいんだろ?」
    「……『なんか』とは思わないがな。ある程度生まれ持ったものがある上に、研鑽を重ねた結果だよ」
    「ふうん……」
     不愉快、とまではいかないものの、さもつまらなさそうにまた、ちびちび酒を口にする。そうしてガイアはまた、「それじゃあきっと、俺はとんでもなく神に嫌われてるだろうなあ」と。
    「……理由を訊いても?」
    「いいぜ、とはいっても別に俺自身が不幸だとか思ってるわけじゃない。いつものことだろ、俺とお前は昔から何もかも反対だったから」
     言いながら目を細めて、ガイアは僕をじっとりと見つめる。値踏みや観察というより、懐かしむ思いの方が大きいのだろうか。嫌悪の類は見えないものの、僕よりも遠い場所を見ているかのような気さえした。
    「……なあ、旦那様。神にとっての特別ってのは、いったいなんなんだろうなあ」
    「僕に訊かれても正解は出せないよ。人間だろう僕たちは」
    「違いない。はは、今日はやけに酔っちまったようでなあ……すまないな」
     そうして残りの酒を飲み干し、モラを残して立ち上がる。いい夢を、と彼が店から出たときようやく、残りの客が彼だけだったことに気付く。
    「……僕からすれば、君の方がよほど……神に好かれていると思うけどね」
     特別という感情はプラスにとらえられることも多いが、結局のところ他と違う、という意味で考えれば、ガイアだって神の寵児である。そうしていつか、あの吟遊詩人が語っていたことを思い出した。


    「人間と神っていうのはね、大分感覚が違うからねえ。もしかしたら不幸な人間こそが神に愛されしものかもしれないだろ?
     ……えぇ、理由訊いちゃうの? そうだなあ、それじゃあもう一杯ほしいな!」
     ああそうだ、あの日の彼もさっきまでのガイアとよく似ていた。そうしてひどく機嫌よく、微笑んだ彼が口にしたのは。

    「だってその子を愛してるなら、手元に置きたいものだろう? それなら早く死ぬように、とびっきり不幸な人生を送らせちゃうかも、ね?」
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    PROGRESSいつか、その隣で笑えたなら/ディルガイ
    「猫の王国」パロ。すけべパートは分けたいので短いですがその3。真相が明かされるよ
    「嘘、だろ……? だってお前、俺よりも少し歳取ってるじゃないか」
    「……君が、即死じゃなかったからだよ」
    「え……?」
    「……僕が知る『一度目』の君は、急凍樹の力により氷漬けになってね。聞いたことはないか? 氷漬けになった動物が、長い年月を生きたまま過ごした話を」
     知っている。知っているがゆるく首を振った。それ以上は聞きたくないとばかりに、震えるガイアにしかし──ディルックはどこまでも、平坦に言葉を続けた。
    「僕は必死に、氷を溶かしたさ。だが君の負った傷は、あまりに深すぎたんだろう。君はそのまま5年ほど眠り続けて……ついぞ目覚めることなく、命を落とした」
    「じゃあなんで、お前は」
    「……生きる、つもりだったさ。それでもいつか、君が助けた……赤毛の猫をある日見かけて、無意識のうちに追いかけた。
     そうしたら、その猫はぐったりした青い猫のそばで必死に鳴いていた。だから僕は、その猫を獣医の元まで送り届けて……さて帰ろう、と思ってからの記憶がない」
    「それで、ここにいた……って?」
    「そうだ。聞けば過労だったらしい。猫を抱えて必死に走ったのが決め手だったからと、僕はここに招かれたけれど」
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