ブラックドクターと大型種ヘビのはなし1.
目の前で、旅館が爆発した。
「大型ヘビ、何やってるの!」
「早く逃げようよ!こっちにまで火の粉が着ちゃうよ!」
旅館の従業員さんや、ゴーグルの男の子が数歩前を走りながら僕を振り返った。僕は大型種で動きも遅いから、一層心配してくれてるんだろう。でも。
「うん。僕は遅いから、ゆっくり行くよ。みんな先に行ってて」
のろのろと進みながらそう言うと、二人とも困った顔をして。…それでも、旅館のおかみさんや一緒にいる小さなヘビを抱えながら、『気を付けてね!』と駆けて行く。さて、僕も急がないと。そう思いながらも、歩む尾が止まった。
ちょっと考えて、振り返って、旅館へと戻る。ごうごうと燃え盛っている旅館は、柱すら崩れ落ちているのが赤い炎の中見て取れた。それから。
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