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    3iiRo27

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    ritk版深夜の60分一発勝負
    第二十三回 お題:「お隣さん」「嘘」
    司視点 片想い
    途中で視点が変わります

    #類司
    Ruikasa
    #ワンドロ

    カチャカチャと音を立てながら、手早く混ぜていく。

    カップに入れる生地の量は、綺麗に均等に。

    オーブンの余熱も忘れずに。


    オーブンから取り出した出来立てのそれに、思わず笑みが溢れた。






    「…今日の練習は終わり!お疲れ様でした!」
    「「「お疲れ様でしたー」」


    終わりの挨拶を済まし、帰るかと思った時、渡していないそれのことを思い出した。


    「…ああ、そうだ!今日もお隣さんからお裾分けを頂いたんだ!持ってくるな」

    「わーい!今日は何のお菓子だろー?」
    「段々と上達してきてるもんね。私も楽しみ」
    「そうだね」

    3人の声を尻目に鞄に急ぎ、綺麗にラッピングされたそれを取り出す。



    「今日は抹茶とホワイトチョコのマフィンだそうだ!この前の改善点をしっかり見直したと言っていたぞ」
    「ありがとー!お隣さんにもよろしくね!」
    「私からも、よろしく」
    「僕からもお願いするよ。…それにしても、今回のも美味しそうだねえ」

    ドキ、と高鳴る胸を3人に見えないように抑える。
    幸い、それに同調したえむによって見られはしなかったようだ。よかった。




    ……お隣さんからの貰い物と称して、自作のスイーツを持ってきて、早2ヶ月。

    切っ掛けは、本当にお隣さんから頂いたものを、皆に振舞った時。
    貰い物を食べながら、皆で食の好みの話になった。

    類は野菜が嫌いでラムネが好きなことは知ってはいるが、ラムネが好きな理由は作業効率のためだ。
    個人的な食の好みを初めて聞けて、もっと、もっともっと知りたいと思ってしまった。


    …俺は、類のことが好きだ。
    でも、同性同士。それも、一度は離れてしまった相手だ。
    そんな相手にもう一度告白をして、また離れてしまったら?
    それならば、伝えずに現状維持でもいいんじゃないか?
    そう思ってた。…思ってた、筈なんだ。


    初めはこんな嘘をついてしまって…と自己嫌悪に陥る時もあったが、今は割と作るのを楽しんでいる。
    ショーの練習や学業の方が優先のため週に1回が限界だが、
    それでもじわじわと上手くなってきているのがわかって、俺自身も嬉しくなった。

    何より。
    類の好みが知れるだけでなく、類の口から「美味しい」と聞ける、この瞬間が何よりも嬉しくて。

    諦めていた筈のこの気持ちが、膨らんでいっていることに、気付いた。


    そろそろ、止めないと。
    でもまた、類の口から、美味しいって聞きたい。
    類が、オレの手の上で踊らされているのを、見ていたい。


    そんな葛藤を抱えながら、今日も類の「美味しい」を聞いて、バレないようにひっそりとニヤついた。

















    バレないようにニヤついた。

    とても思っているのだろうか。


    いや、実際上手く誤魔化せてはいるが、口の端がプルプルしてる。まだまだ修行が足りないねえ。
    なんて、一人で思いながら、手にしたマフィンを口に運ぶ。

    甘すぎず、かといって抹茶が濃いわけではない。絶妙なバランスで混ざっていて、とても美味しい。
    伊達に僕の感想を聞いて改良してるだけある。



    司くんは、気づいていない。
    僕が、「あのお菓子は司くんお手製のもの」と、気づいていることに。
    僕が、「司くんは僕のことが好き」だと、気づいていることに。

    だって、僕も。司くんのことが、好きだから。
    だから司くんと同じように、僕も司くんのことを知りたくなった。

    だから、初めてお隣さんからのお裾分けをもらった時に、質問攻めにした。
    4人でいる間も。着替えている間も。
    司くんのことからお隣さんのことまで、選り取りみどり。


    だからこそ、僕は気付いた。司くんは、言っていたんだ。当の本人は言ったことを忘れてしまっただろうけれど。



    「お隣さんは和菓子以外は邪道だって言って作らない」と。


    だからこそ、洋菓子が持ってこられた時点で、お隣さんのものではないことは明白なのだ。
    でも何故、僕がこのことを言わないのか。



    気づいているからだ。
    お菓子のことや好意だけでなく、司くんが告白しない理由も。

    だからこそ、僕は彼の作戦にまんまと引っかかった振りをしている。
    いつか彼に自信がついて、告白してきてくれるように。


    きっと、彼は自分の手のひらで踊らせていると思っているだろうけれど。
    踊らされているのは司くん。………否、


    (僕が自ら、手のひらで踊ってあげてるって感じかな?)


    いつか、踊らずに済む日を、楽しみにしているよ。

    なんて思いながら、今日のお菓子の感想を伝えた。
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