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    3iiRo27

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    ritk版深夜の60分一発勝負
    第百三十八回 お題:「ナンパ」「愛と恋」
    司が、ナンパしてきた女性?に、愛と恋との違いを説くお話。
    類→司→類→司と視点がコロコロ変わります

    #ワンドロ
    #類司
    Ruikasa

    それは、向かい合わせの恋。「こんなに遅くなっちゃうなんて……。司くんに後でしっかりお詫びをしないと……」



    手早く改札を抜け、人の波を縫うように足早に進んでいく。

    今日は久々のデートの日だけれど、親戚が顔を出すからと少し足止めを食らってしまった。

    事前に司くんには連絡済で、元々デートがあるから抜けるとも話してはいたけれど、僕の恋人ということもあって親戚がいやに食いついてきて、ずっと話してくれなかったのだ。

    そのせいで、僕は事前に伝えていた到着時間よりも30分遅くついてしまった。
    普段のデートさえ遅刻しないように気を付けているから、こんなに遅くなるのは始めてだ。
    前もって遅れることを伝えているとは言え、大切な司くんとの時間が削れるのは本当に嫌だった。



    「ええと、犬の銅像前だから……、あれ?」


    事前に教えてもらっていた待機場所に移動しようとした時、遠目から見慣れた金色が見えた。

    司くんかと思ったけれど、傍に明るい茶色がいる。
    見慣れない髪型だし、知らない人だ。



    まさか、待たせている間にナンパされてたりとか……!

    そう思い、そっと彼らの死角に回る。
    声の聞こえるところまでやってきて、彼女らが発した言葉に、僕の思考は止まった。

    ナンパじゃ、ない。














    「ねえ?いい加減、あのイケメンのこと愛するの、止めてもらえません。滑稽なんですよ」





    僕の大切な人への、侮辱だ。




    ------------------------------------




    余裕満々でただ一人ペラペラと喋る女性に、聞き流しながら内心溜息をつく。

    待っている間に突然声をかけられたから、オレの溢れるスター性が……!と言おうとしたのもつかの間、初対面で女性はこう言ったのだ。



    「貴方の恋人、私にくれません?」

    と。



    言おうとしたことも忘れて、思わず聞き返すと、待ってましたとばかりに喋りだす女性。



    曰く。

    自分は類を見かけて、一目惚れしたと。

    でもその時はオレが傍にいて、電車まで一緒だったせいで、告白できなかったと。

    その後、なんとか見つけて告白したものの、あしらわれたと。



    そして、諦めきれずに追い続けていたら、オレと手を繋いで歩いていたのを見てしまった、と。



    オレ達は、普段外ではなるべくイチャつかない。
    手を繋いだのも、人の往来が多くて、はぐれそうだからといった理由だ。

    でも女性は、その時のオレ達の態度で、相手がオレだと、確信したようだ。



    だから、オレに対して、接触を図ったのだという。
    所詮男性だし、オレが諦めたら、コロッと自分の方にいくから、と。


    何処までも侮辱するのだなと、ふつふつと怒りが溜まっていく。

    女性は、オレだけじゃない。
    オレを選んで、その感情を一心にオレに向けてくれている、類のことも侮辱しているのだ。

    静かに怒っているオレに気づかずに、女性は更に口を開いた。








    「あのイケメンからの愛が、ずーっと続くとか本当に思っているんですかぁ?」


    その言葉に、オレは思わず思考を止めてしまった。





    ------------------------------------





    (……愛が、ずっと続くか……?)

    突然の予想外の質問に、僕は眉を寄せた。


    ずっと、なんてものは存在しないとは言われているけれど。

    それでも、僕はこの感情が続く限り、愛していくつもりだ。
    それはきっと、司くんだって。


    でも、その解答を出す前に、あの女性は、語り始めた。





    「愛なんて、所詮まやかしなんですよ。儚くなくなっていくものなんですよ。」

    「結婚式での「誓います~」なんて、何人がちゃーんと誓っていると思います?愛があっても誓っていても、結局別れるものなんですよ?」

    「それに比べたら、恋っていいものなんですよね~。ずっと新鮮な気持ちでいられる!散ることに怖がる必要もない!」

    「それに、恋は女を綺麗にする、なんて言葉もあるくらいですからね!私はずーっと、綺麗でいたいんです!」




    「だから、私は恋をし続けるんです。愛と恋なら、儚く散ることに怯えるものより、
    怖いものなしでずっと綺麗でい続けられる恋の方が断然いいので!」




    ドヤ顔で語る女性に、司くんは無言で考えている。

    何を考えているのだろう?
    彼女の話に同調するのだろうか?それでも、司くんが僕を諦める未来なんて見えないんだけれど。









    「あんたの言いたいことは、とりあえずわかった」



    司くんのその声に、ヒュッと息を飲んだ。
    どこまでも真剣に考えて答えを出す、いつもの司くんの声だ。

    でも、その声で、わかったという回答に、僕は内心驚いてしまった。



    「……!!でしょう!?だから、」

    「だがな」




    でも、そんな驚きは。






    「あんたは、愛される幸せを何も知らないんだな」



    司くんの言葉で、あっという間に書き換えされた。




    ------------------------------------




    「……愛される……?」



    呆然とする女性を尻目に、オレの脳裏には沢山の思い出が蘇る。

    初めて付き合った日、愛し合った日、喧嘩した日、仲直りした日、エトセトラ。



    「確かに、恋はいいものだ。その過程もドラマがあるし、綺麗になるのもわかる。」

    「でも、恋は、ずっと一方通行だ。」



    言葉を言えずに固まる女性を見ながら、オレは続けた。



    「愛は、恋と恋が繋がって生まれるものだ。互いに恋をしあって、愛になるんだ。」

    「愛は、一人では生まれない。お互いが恋の相手で、それで初めて成就するんだ。」

    「恋しあう、という言葉がなく、愛し合う、という言葉があるように、愛の矢印は常に互いを向いているんだ。」





    『司くん』


    脳裏に蘇る、愛しい声。

    オレが甘やかした時のとろけたような顔も好きだし、慣れないけれどオレが甘えると、途端に嬉しさが全身から溢れて、それでいて全力で甘やかしてくるときの嬉しそうな顔も、何もかもが好きなのだ。




    「悪いが、彼は渡せない。互いに愛し合っている、大切な人なんでな」




    そう断ると、色々言われて言葉が見つからなかったのか、「でも」とか、「そんなことない」などと聞こえる。


    所詮は、わからなかった。
    いや、でも、構わないか。

    オレが、類のことを好きでいるから、それで、







    「お待たせ、司くん」



    聞こえてきた声に、びっくりしながらそちらに顔を向ける。

    そこには、いつものすまし顔を申し訳なさそうにひそめる、類の姿があった。




    「る、
    「わあ!やっぱり、来てくれたんですね~!?」


    オレの声を遮り、女性は類の腕を取り、自慢なのか大きな胸部に押し付ける。

    はしたないし、人の恋人に何をするのかと声をかけようとした瞬間、類はすぐさまべりっと剥がしてきて、口を開いた。




    「悪いけど、そんな気分悪いもの、押し付けないでくれない?」

    「き、きぶ?いやでも、あんな男よりずっと、」






    「勝手に比較しないでくれるかい?僕は生涯愛するのは、彼だけなんだ。誰にも邪魔はさせないから」



    そう言いながら、オレの肩をぎゅっと抱き寄せ、その距離を取ったまま、歩き出してくれた。















    後ろから、まだ何かをいう声が聞こえた気がしたが、気にしないことにした。




    「類、ありがとう。愛しているぞ」

    「いえいえ。大切な司くんを守れてよかった。僕も、愛しているよ」



    普段は、こんなこと、外では言えないけれど。

    類からの愛が嬉しくて。
    何より、その声に答えてくれる声が、優しくて。


    思わず泣きそうになりながらも、類と2人、手を繋いで、デートを始めた。
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