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「えっと、おれと花火しない?」
はぁ?と嫌な顔を隠しもせずに眉を顰めた影浦に、まぁまぁ話を聞いてよとまとわりつく。
春と夏の間。うっとおしい梅雨時期の、数日間だけ続く雨の切れ間。さんさんと輝く太陽が日中これでもかと急に気温をあげて、一気に体温調節機能が根を上げてしまいそうな天気が連日続いていた。
トリオン体ならばなんら気にすることはないけれど、あいにくすでに生身に戻った体はじんわりと汗をかいている。
今日も今日とて、陽が落ちてしんと静まったこの時間帯でも残念ながらあまり気温は下がらなかったようだ。
「……花火」
「そう、花火」
合ってるよ、と頷きながら肯定をくり返す。
なんだかんだ優しくて面倒見の良いカゲは、おれ相手じゃなければよほど機嫌が最悪な時を除けばいくら突飛な内容だって話くらいは聞いてくれる。
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