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    mono_gmg

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    mono_gmg

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    「お疲れさま」
     馴染みのある声がして後ろを振り向けば、頭に思い描いた通りのマスターが立っていた。お疲れさまです、と同じように返せば今回も無事に勝てて良かったなぁなんて緩い笑みを浮かべている。先程まで懸命に策を練り真剣に指揮を執っていた青年と同一人物とは思えない、なんとも力の抜けた表情だった。
    「さすがに最終日はきつかったすね」
    「だね。まさか11人と戦うことになるとは……」
     ふざけてるように見えて容赦ない、と相手の指揮を執っていた魔術師へ溜息混じりに愚痴をこぼす。この模擬戦はマスターとサーヴァント達の連携や個々の戦術を洗い直す目的があるが、こちらが戦場に立てる数は立香の魔力の関係でどうしても限りがあった。相手のマスターに近付くかサーヴァント達を戦闘不能にして勝利が前提条件の中。今回の対戦相手である魔術師はその上で前述の采配を取っていたらしい。
    「まぁそれでも勝てたんだから、もっと自信持っていいんじゃないか?」
    「……そう、かな。それと、皆が踏ん張ってくれたおかげだよ。改めてありがとう」
     慢心し過ぎない姿勢と溢れる善性に頬が緩む。今回ライダークラスが起用可能な盤面はほぼマンドリカルドが選ばれていて、他のサーヴァントとの連携もうまく出来ていたと思うし、マスターへ貢献した筈だと珍しく自負していた。
    「今回、頼りすぎちゃってごめん。しばらくゆっくり休んで」
    「サーヴァントからしてみりゃ光栄なことっすよ。……また何かあったら呼んでください」
     マスターの力になってみせるんで。誰よりも己を卑下しがちなサーヴァントの言葉を噛み締め、立香の口元はすっかり緩み切っていた。なんすかその顔、と苦笑い混じりの軽口まで貰って、彼を召喚したマスターの胸の内には喜びが降り積もる。
    「ふふ、何でもないでーす。オレの騎士が力になってくれるならもう怖いものは無いな!」
    「慢心してんなぁ……もし次回の模擬戦で敵対したらどうするんすか」
     ぽろりとこぼれた何気ない言葉に、上機嫌だった立香の表情が一変し険しいものとなった。
    「えっ……敵対するの……?」
    「え。あーいや、向こうに付くサーヴァントってくじ引きらしいんで……無いとも言い切れねえなと……」
     今回はたまたまマスター側のサーヴァントとして模擬戦に参加出来たけれど、次回のくじ引きによっては敵対側に回るかもしれない。一部のサーヴァントは各々の思惑を抱えてわざと相手側に立候補する者もいるが、それを除けば割り振りはランダムで選ばれる。
    「ええぇ……そうなったら全力で相手のマスター狙いに行くから。最近新しい戦闘用の礼装作ってもらってるし……よし、素振りしておこう」
    「……マスターが直接マスター狙うって良いのか……? ……まぁ、戦術広がるなら良いか……」
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    mono_gmg

    DONE大学生ぐだ×バーの店員マンドリカルドな現代パロディ。まだ続く予定
    色々ふわふわしてますがご容赦ください


     一般的な夕食の時間は過ぎ去り、夜の都内が賑わいを見せ始めた頃。中心地から少し外れ、とある物静かな人気の無い通りを一人の若者が歩いていた。その足取りは酒に呑まれた者特有の不安定さは見られなかったが、どことなくふらふらとしていて覚束無い。俯きがちなその背中には彼だけが知っている寂しさが漂っている。
     青年は少し前までは大切な人と親密な時間を過ごしていたけれど、その大切な人と歩む道は今や違えてしまった。互い以上に想いを寄せる恋人が出来た訳ではなく、双方の間にある恋心が冷めた訳でもない。二人の関係に幕を下ろしたのは彼女が静かに呟いた別れよう、の五文字。相手を試すような冗談を告げるような人ではなかった。慌てて表情を窺えば眉を八の字にしながらもしっかりとこちらを見据えていて、長い時間を共にしてきた人の決意を覚ってしまった。切り出されてからたっぷり間を置いてゆっくりと頷く。未練は無い、と言えば嘘になるけれど。提案も憂いも拭い去って彼女を説得出来る自分の姿が思い描けなかったのだ。関係性が一つ消えても大事な友人であることは変わらないから、彼女にほんの少しの罪悪感も残したくなくてなるべく穏やかに笑 8950