ラーハルト〜離岸ラーハルトは返り血で汚れた顔と手を湖で洗った。
服も乾いた血でゴワついて不快だが拠点に戻るまで我慢するしかない。
我が騎竜は水を飲み終えただろうかと、ラーハルトは顔を上げようとしてヒクリと頬が強張らせた。
水面に映る青肌で両頬に黒の紋様のある若い男は、幼いころ死別した父に驚くほど似ていたからだ。
ラーハルトの父の記憶は極僅かで、母子の住む家に食料や褒賞なのか略奪したのか貴金属などを持ってやってきては2〜3日過ごし、またふらりと去るというものだった。
父が家にいる間は、二人で近くの森に罠を仕掛けたり、父が愛用の槍で捉えた獲物の血抜きや毛皮の処理などをしてすごした。
特に父子の間に会話はなく、魔族の基準で普通の親子仲だったのかは未だにわからない。
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