空閑汐♂デイリー【Memories】13「アマネ、別れよっか」
普段と変わらない柔らかな笑みを浮かべ、柔らかな声で紡がれた彼の言葉は、汐見を打ちのめすには充分すぎるものであった。
軌道ステーションで起こった過激派テロリストによる占拠未遂事件は、空閑と汐見の手によって破綻したが、その代償はあまりにも大きかった。
テロリストの手に握られた拳銃から放たれた銃弾は、空閑の身体を貫き左肩を破壊して。あの日、空閑の傷口を押さえていた手に感じた彼の血潮の熱さと、ぬらりとした感触、そしてむせ返るほどの鉄の匂いは汐見の記憶にこびり付いて離れない。
数日間眠り続けた空閑の隣でこのまま目覚めないのではという不安すら、今こうして言葉を交わす事ができるようになったというのに全く離れることはなくて。
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