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    @color_alto_rs3

    作者:アルト
    サークル名:アルト茶房
    トムサラ中心の小説置き場。
    主にTwitterに投下した長文のまとめを置いてます。

    その他の作品はpixivにて
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    ピドナに来て初めての年末。
    ベント家でパーティーをした後のお話です。

    ※ちょっとしたキスシーンあり。
    ※両片想い2人は付き合ってません。
    ※サラの話す「彼」は、実はトーマスのことだったりします。
    投稿日:2022.12.26

    ##トムサラ

    sweet dreams ピドナに来て初めての年末…トーマスカンパニーの仕事納めをして、居候しているベント家で、トーマスとサラはパーティーを楽しんだ。
     そんな忙しい一日を終えて、パーティーの後片付けをしている時のこと――
    「片付けまで手伝ってもらってありがとう、トーマス君」
    「いえ、ここに置かせてもらっている身として、当然のことをしたまでです」
     食器の片付けから大テーブルの拭き掃除までこなし一段落ついて、トーマスと彼のハトコはお互いを労う。
    「できれば彼女にも感謝の意を伝えたかったのだが、今は夢の中みたいだね」
     サラは途中まで彼らと一緒に片付けの手伝いをしていたが、少しソファーで休むと座ったきり、彼女は眠ってしまった。
     トーマスはサラを起こそうとソファーに近づき体を屈め、彼女の肩に触れる。
    「サラ、起きるんだ。片付けは終わったぞ?」
     何度か肩を揺らすも深く寝入っているのか、彼女が目を覚ます気配はなかった。
    「そのままにしてあげなさい。朝から動いて疲れているのだろう」
     わかりましたと頷いたトーマスは、肩から手を引いて姿勢を戻した。
    「しかしまぁ、彼女はよく頑張っているよ。初めて来た地で、故郷とは習慣が違う我が家に馴染むのは大変だったろう」
    「そうですね。俺の仕事にもよく手伝ってくれましたし、サラからしたらこの一年はとても忙しないものだったでしょうね」
     うんうんとハトコは深く頷いて、笑った。
     だがサラをこのままにしておけず、今度はソファーの前でトーマスは膝をつく。
    「俺、彼女を部屋へ連れていきますね。風邪を引いたら困りますし」
     そう言って彼は起こさないように、サラの体をそっと持ち上げる。
    「そのほうがいいだろうね。よろしく頼むよ」
     彼の代わりにハトコが広間のドアを開けると、トーマスは彼女を抱き上げたまま、彼に小さく頭を下げた。
    「では失礼いたします」
    「君もきちんと体を休めるんだよ」
     はいと頷いたトーマスはハトコに就寝の挨拶をした後、ゆっくりとした足取りでサラの部屋に向かった。

     サラを彼女が使っている部屋まで運んだトーマスは、ドアを開ける前に態勢をかえる。少しだけ背を後ろに反り、サラの頭を自分の左胸に預け、彼女の上半身を支えた。その状態で足を持ち上げてた右腕をゆっくりと下ろして、空いた手でドアノブを回す。ドアを開け、また彼女を支えようと腕を動かすと、サラがもぞもぞと動きだして目を覚ました。
    「あれぇ? トムぅ?」
     どうしてここに? とでも言うように腕の中から彼女はトロンとした目で、彼を見上げた。
    「あぁ、悪いな。起こしてしまったか」
     立てるか? とトーマスが聞くと、サラはコクリと頷いたので、彼は彼女を解放して立たせてあげる。しかし彼女は足元がふらつき、倒れる前に彼は後ろからサラの肩を掴んで支えた。
    「起きたばかりで、足に力が入らないだろう ベッドまで手伝うよ」
    「うん…ありがとう、トム…」
     サラは顔をトーマスに向けて、ヘラっと笑った。
     部屋の入口からベッドまでたいした距離はない。だけど二人はゆっくりと歩き、辿り着くと彼女はベッドに入った。素直にベッドに潜る彼女を見て、これでひと安心だと彼はホッと息をつく。
    「疲れているだろ? ゆっくり寝るといい」
     おやすみと優しく声をかけて離れようとすると、くいっと服の裾を掴まれた。
    「ん? どうした?」
     何か忘れたことでもあったか? と聞こうとしてトーマスは彼女に近づくと、サラはふにゃっとした柔らかい笑顔を見せた。
    「最後にお礼をしたくて……」
     そう言ったかと思うと、サラはトーマスに顔を近づけて……頬にちゅっとキスをした。
    「今日はありがとう。とても楽しかったわ」
     それから彼女はふわぁと一つ欠伸をし、おやすみなさいと言い残して布団を被り寝てしまった。
     だがしかしトーマスは目が点になり、そこから一歩も動けなくなった。
    「……え?」
     状況を把握する頃にはもう、彼の顔に熱が集まっていた。理由を聞こうにも、彼女はすでに夢の中。すやすやと眠る彼女を起こすのも忍びなく、さらに言えば彼女の部屋に長く留まることは、屋敷の人たちに変な誤解を与えかねない……
     そこまで考えたトーマスは、もんもんとした気持ちを抱えて部屋を出て、自室のベッドに入っても、なかなか寝付けなかったのでした。

     そして翌朝、普段と変わらない様子でトーマスは部屋を出て、食堂へと向かう。少し寝不足ではあるが、この程度ならそう問題ない――そんなことを考えて廊下を歩いていると、サラが部屋から出てきた。
    「おはよう、トム!」
     彼女はとても元気よくトーマスに声をかけた。
    「おはよう、サラ。今日はとても機嫌がいいみたいだな?」
    「えへへ…やっぱりわかっちゃう? 実は昨日ね、夢を見て……」
     サラが見た夢――それはおとぎ話のような世界で、彼女は王子様に出会った。
    「素敵な場所に行って、ダンスしたり…」
     トーマスは微笑ましく思いながら話を聞く。どうやら彼女は夢の中でも、楽しんでいたようだ。
    「それでね、彼に部屋まで送ってもらっちゃってね…とても幸せな気分だったのよ!」
     少し赤くなった頬に片手を添え、うふふと笑うサラの横で、トーマスは、あれ? と頭に疑問符を浮かべる。
    (もしやサラは昨夜の出来事に対して、全く覚えていないどころか、夢だと思っているのか)
     確かに今朝の彼女の様子に、トーマスは違和感を覚えていた。あんなことをしたのなら、いつもの彼女なら恥ずかしさで顔を合わそうとしないはずだ。なのに現実は、そんな素振りもなく、彼女は幸せそうに昨夜の夢を語った……つまり昨夜のサラの行動は、現実と夢が混じったゆえの寝ぼけた行動である――
    (理由がわかって良かったが、何かこう…釈然としないな……)
     ここまで一気に考えを巡らせたトーマスは愕然としていると、横にいるサラは不思議そうな顔をして彼を見ていた。
    「ねぇ、トム。難しい顔をして大丈夫? 食堂に入らないの?」
     どうやら彼は考えに没頭するあまり、食堂に入る手前で足を止めてしまったようだ。
    「あ、悪い…実は仕事のことで悩んでいて…」
     咄嗟についた嘘にサラは一瞬だけキョトンとし、眉を下げて苦笑した。
    「トムって本当に真面目ね〜。今年の仕事は、昨日でキリのいいところで締めたのだから、今日は考えなくてもいいのに」
    「そういえば、そうだったよな…つい、いつもの癖で…」
     やってしまったなと彼は少し大げさに言って、頭の後ろを掻く。
    「もう〜…トムったら、働きすぎよ! 仕事始めの日まで、ひとまず忘れましょ!」
    「そうだな…今日は好きなことでもして、リフレッシュした方がいいかもな」
     それがいいわね! とサラは腰に手を置き大きく頷く。しかし、まさか彼の悩みの原因が自分であると、彼女は全く思っていないだろう。
     トーマスは小さくため息をしてから、昨日キスされた方の頬を少し残念そうに指で掻いた。
    「なぁ、サラ。今日は俺に付き合ってくれるか?」
     彼からの誘いにサラは満面の笑みで答えた。
    「もちろん、いいわ」
     今日の予定を朝食の席で決めようと、二人は喋りながら食堂へ入ったのでした。
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