春は好きだと思う。
寒い冬が過ぎて、気温も温かいし、何より気分がいい。
なんだか嬉しくなって、隣を歩くシュウさんの手を握る。僕が急にそんな行動を取ったから、シュウさんは驚いたように僕を見たけれど、すぐに優しい目になって手を握り返してくれた。
「どうされました?」
「ううん、なんでもないよ」
「そうですか」
握った手から伝わってくるシュウさんの手の温かさや大きさを僕が感じているように、シュウさんもひょっとしたら僕の手から伝わる温度とか感じているんだろうか。
そんなことを思っていたらなんだかそれがくすぐったくて幸せで。
「僕、春が好きです」
唐突にそんな言葉が口から出てきたけれど、僕の言葉にュウさんがくふっと噴き出した。
「この前は冬が好きだと言っていたのに」
「それは……」
寒い時にシュウさんと手を繋ぐと温かいからだ。でも、温かい春にこうしてシュウさんと手を繋いだら、もっと温かい気持ちになれる。
「どの季節でもシュウさんと一緒に居られれば、僕はいいんです!」
そう言って笑ったら、シュウさんはちょっと眩しそうに目を細めてから、「そうですね」と微笑んでくれた。
その笑顔は春の日差しみたいにとてもあったかくて優しくて。僕も思わずつられて微笑んだら、春の風が僕たちの頬を優しく撫でていった。