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    mayu_og3

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    mayu_og3

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    文字書きワードパレット(甘々編)
    17、カエル
    「仲直り」「雨上がり」「ソファー」

    「お前意外とロマンチストなんだな」
    そう言われたのはいつのことだったろう。
    枯葉が舞い始めた頃、パトロールの帰り道に、昔見た麦畑の話をした時だったか。
    それとも、朝日に照らされた雪を、初めてタワーから二人で眺めた冬の日だったろうか。

    「そうだ、初めてウィルにプレゼント渡した時だ」

    ベッドに横たわり、ガストは瞼を閉じて思い出す。
    ウィルの20歳の誕生日、望みの薄い片想いと知りながら、好きな人の特別な日を祝いたいと、意を決して贈り物を選んだ。
    ウィルと同じ20年の時を重ねたワインを差し出したガストの顔を驚いた様に見つめて、ウィルはボトルを受け取った。そして贈られたワインのラベルを眺めて、少し呆れた様に笑ってそう言ったのだ。

    今思えば、初めてのプレゼントにしてはキザ過ぎたと恥ずかしくなる。それでも、ウィルが受け取ってくれたことが嬉しくて、その日からしばらくガストのプレゼント攻撃が続いた。
    初めは困った様に受け取っていたウィルだったが、次第に柔らかい微笑みを返してくれる様になり、遂には、プレゼントに添えたガストの想いを受け止めてくれた。そっと握った指が温かったことを今でも覚えている。

    そして、恋人になって一年経った今日。二人にとっては特別な日になるはずだった。
    しかし、ガストは一人、自室のベッドにだらしなく横たわっている。窓の外にはしとしとと雨が降り続き、雨粒が涙の様に窓ガラスを伝って流れていた。
    低く垂れ込めた灰色の雨雲を眺めて、重い身体を横たえる。無造作に放り出したスマートフォンを手に取り、スケジュールアプリを起動した。
    和スイーツが評判のカフェでランチ、その後はミリオンパークでのんびり散歩、夜はノースセクターのフレンチでディナー、高級ホテルのラウンジで一杯飲んで、もちろん部屋は予約してある。
    改めて確認しても完璧なプランだ。
    ウィルを驚かせたくて今日の予定は秘密。
    それでもデートのお誘いを口にする顔には、得意げな笑顔が浮かんでしまう。
    そんなガストに対するウィルの態度はそっけなかった。

    「明日は外泊の申請はしてないから」

    特別な日に大事な人と朝まで一緒に過ごせるとガストにとって予想外の答えに笑顔が張り付いたまま顔がこわばる。

    「えーと、ウィル。明日はさ…」
    「わかってる。でも、特別な事はしなくていい」

    静かにそう告げるウィルの顔を眺めながら、ガストの背筋を冷たい汗が流れる。
    俺なんかやらかしたか…。
    ウィルの機嫌をそこねるような事を言っただろうかと湧き上がる不安と共に、今日が特別だなんて、はしゃいでいたのは自分だけだったのかもしれない。

    「そっか。なんか俺だけ、はしゃいじまってゴメンな」
    「……俺もお前と一緒に過ごせるのは嬉しい。でも、プレゼントとかサプライズはいらない」
    「俺にとっては大事な日だから、二人で特別な事ができたら嬉しいなーって思ったんだけど、ウィルって思ってたより冷めてるんだな」

    ふわふわと浮き足立つ様な気持ちが、どんよりと沈んで行いく。一人で浮かれていた自分が子供じみて見えて、微かに悔しい思いを含んだガストの言葉に、ウィルの眉が悲しげに歪む。
    「ごめん…。」
    そう言い残して去っていくウィルの背中をガストはただ黙って見つめることしかできなかった。

    そうしてお付き合い1周年の今日。ウィルを誘う勇気も出ず、ガストは自室で鬱屈としていた。
    ベッドに横たわったまま、ウィルの悲しげな顔を思い浮かべる。
    一体、何がいけなかったんだ?
    記念日に大好きな人を驚かせたくて、サプライズを計画する。絶対にウィルは喜んでくれると思い込んでいた。
    「……こういうところか」
    ルームメイトのレンやメンターのマリオンに言わせると、自分は他人の気持ちに鈍感なところがあるらしい。
    ウィルはウィルなりに、今日の記念日について思うところがあったのかもしれない。浮かれすぎて彼の気持ちに気が付いていなかった…。
    やり場のない後悔がキリキリと胸を刺す。
    ──このまま今日の日を終わらせたくない。
    ウィルとちゃんと話したい。アドレス帳を開こうと指を伸ばすと、手のひらの中のスマートフォンが震えた。液晶に表示された名前に心臓がドキリと跳ねる。

    「もしもし、ウィル?」
    「今、大丈夫か?」
    「ああ…」

    受話器から聞こえる聴きたくてたまらなかった声はどこか遠慮がちだった。
    もしかしたら別れの言葉が続くんじゃないかと不安がよぎり、思わず口籠る。

    「昨日はごめん」
    「いや、俺もウィルの気持ち考えねぇで勝手に盛り上がっちまって…」
    「アドラーが俺のために色々考えてくれたのはわかってる。今日を楽しみにしてたのは俺も同じだから」
    ウィルの言葉にガストはホッと安堵の息をつく。
    「よかった。なんか気合い入れすぎて引かれたのかと思ってたから」
    「いつもお前から貰ってばかりだから、俺だってお前の為に色々考えてたんだ。なのにお前はまた勝手に予定決めて、ちょっと悔しかった」
    ちょっと拗ねた様にウィルは言った。
    俺の為に。
    そんな些細な一言で、さっきまで沈んでた気持ちでいっぱいだった胸は、宙に浮くような様な喜びで満たされていく。

    「はは、とりあえず仲直りって事で、これから出かけねぇ?」
    「うん。でも、サプライズは無しだぞ!それから、お前、高級なレストランとかホテルとか予約してただろ。そういうのも無しだからな」
    「せっかくの記念日なんだし、それくらいは許してくれねぇ?」
    「ダメだ。お前ちょっと無駄遣いしすぎだぞ。ルーキー研修が終わったら部屋を借りるお金が必要になるんだ。二人で暮らすなら、それなりの家賃がかかるし…」
    「えっ…」
    お説教モードに入ったウィルの声を黙って聴きながら、消えそうに小さな声で言ったウィルの最後の言葉に思わず間抜けな声が出る。
    「じゃあ、30分後にタワーの前で」
    それ以上ガストが問いただすのを許さない様に、ウィルは言葉を続ける。
    電話の向こうでどんな顔をしてるんだろう。
    はにかむようなウィルの顔を思い浮かべて、ガストの頬が自然と弛む。
    窓の外に目をやれば、降り続いていた雨はいつの間にか止み、雲のカーテンから顔を覗かせた雨上がりの空に虹色の橋がかかっていた。
    「なぁウィル。窓の外見てるか?神様も俺たちの事お祝いしてくれてるみたいだぜ」
    「お前って、本当にどうしようもないロマンチストだな」
    呆れた様な声を残して電話は切れた。

    ──今日は、緑でいっぱいのリビングに似合いそうな、2人掛けのソファーを見に行くのも良いかもな。

    ガストは嬉しそうに呟き、窓を開けると、春の優しい風が吹き込んだ。
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    DOODLEガスウィルポメガバース「キャンキャンッ!キャウンッ!!」
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    DOODLEガスウィル
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    DONEガスウィル
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     大喜びするアドラーに、これで正解だったのかも 4699